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勝地涼と仲野太賀が、岩松了が書き下ろす男5人芝居『いのち知らず』で念願の舞台共演

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(左から)岩松了、勝地涼、仲野太賀

勝地涼仲野太賀が、10月から本多劇場他で上演される岩松了の新作舞台『いのち知らず』に出演。5年ぶりの舞台出演となる光石研らも加わり、男性のみのキャスト5人で、「いのち」と「友情」を巡る緊張感溢れる人間ドラマを展開する。物語の舞台は、山奥にある研究所。夢の実現に向けた資金作りのために、その研究所の門番の仕事についた中学時代からの親友ロクとシドは、年嵩の門番から、この施設では死んだ人間を生き返らせる研究をしていると聞き……。ロク役の勝地、シド役の仲野、そして作・演出を手がけ、出演もする岩松に話を聞いた。

ーー魅力的な顔合わせの本作品。企画の発端から教えてください。

岩松:『空ばかり見ていた』(2019年)の公演中だったかな。雑談している時に、勝地に「今度は仲野と一緒に(岩松さんの舞台を)やりたいです」と言われて。そこから始まったと思います。

仲野:そんなラフな感じでスタートした企画だったんですね(笑)。

勝地:そうそう。でも実はあれ、雑談を装った、僕の交渉作戦だったんです。『空ばかり見ていた』が、稽古も本番もすごく楽しくて、「またやりましょう」という雰囲気がそのまま流れていくのが嫌だったんです。自分からそういうことを言うのは生意気かなとも思ったんですが、舞台って、すぐにやりたいと思っても、結局、何年か先になるじゃないですか。ちゃんと気持ちを伝えたいと思って。

勝地涼

岩松:大したもんだよね、そこに一緒にやりたい役者もぶち込むっていうのが(笑)。

勝地:岩松さんの舞台に出ている仲野が本当に素敵で、そんな仲野と一緒に岩松さんの舞台に立ちたいとずっと思っていたので、言わせてもらいました。

仲野:ありがたいです、本当に。勝地さんには、NHKのドラマで兄弟役をやらせてもらった時にすごく可愛がってもらって、また違う場所でも一緒にやれたらという思いが僕にもずっとありました。それが岩松さんの元で結実するなんて、これ以上嬉しいことはないです。

ーー勝地さんの「やりたいです」に、岩松さんはどう反応されたのですか?

岩松:「いいね」と。僕の実感として、2人とも“受信できる人達”という印象があるんです。舞台って、往々にして発信することを良しとするところがあるんですが、僕がいい役者だなあと感じるのは、受ける力が大きい人で、2人には若いのにそれがある。極端にいうと、黙ってても大丈夫、みたいな。そういう意味で2人は、僕が実感として知っている、この世代では最高の役者なんです。

勝地:どうしよう。嬉しいです。

仲野:嬉しすぎる。

岩松:たまたまですけど、僕は、2人とも17歳くらいの時から知っているんです。仲野は『国民傘-避けえぬ戦争をめぐる3つの物語-』(2011年)のオーディションに来ていて、勝地は僕が書いて蜷川さんが演出した『シブヤから遠く離れて』(2004年)に出ていたから。勝地のことは、それから客観的に見ていたんだけれども、『空ばかり見ていた』で初めて演出して、薄々は感じていたけど、いい役者じゃんと思って。

勝地:ありがとうございます。

岩松:仲野には最初から優れたものを感じましたね。これまで4回出てもらっているんだけれども、回を重ねる度に風格が出ているというかね。立っている姿が、任せられる感じで、最初は脇の方で使っていたのに、だんだん中心くらいで使わないと悪いんじゃないのっていう気持ちになってくる。そんな風格みたいなものが。まあ、時々セリフは間違えるけど(笑)。

(左から)岩松了、勝地涼、仲野太賀 

仲野:すみません(苦笑)。

岩松:それで、勝地の話を聞いて2人を想像した時に、『ゴドーを待ちながら』みたいな二人芝居で、ただどこかに行くだけっていうシンプルな話はどうだろうと思って、僕から提案したんだよね。死んだのに生き返った人がいるというニュースを聞いた男二人が、そいつに会いに行くロードムービーみたいなのはどうかな? って。

勝地:はい、雑談した次の日でした。よし、来たーっ! って、めちゃめちゃ嬉しかったです(笑)。ただ、その時、岩松さんに「どう? 簡単でしょ」って言われて、驚きました。

岩松:まあ実際には、当初のアイディアとはだいぶ違う設定になったけどね。ただ待っているならまだしも、どこかへ行くのを舞台で描くのは難しいから、キャストを増やしたり、シチュエーションを作り込んだり、色々と策を弄して。ただ、死んだのに生き返る人間に会いに行くっていうのが最初の想いだから、そういう話にはしたいなと思って。

仲野:僕はもう、『いのち知らず』というタイトルを聞いて、一体どういうものになるんだろう? と思ってワクワクして。前回出演させてもらったのが『二度目の夏』(2019年)で、その前が『結びの庭』(2015年)だったから、何かこう強い言葉のタイトルだな、インパクトあるなとも感じました。岩松さんからあらすじを聞いてはいますけど、いざ蓋を開けてみると、あまりにも広がりがあって違う印象を受けたりするので、今はとにかく最初の台本が来るのが楽しみです。

ーー勝地さんと仲野さんにとっての岩松作品の魅力を教えてください。

仲野:僕が最初に観た岩松さんの作品は『シダの群れ』(2010年)なんですけど、それが自分にとっては他の追随を許さないくらいの衝撃だったんです。自分が今まで漠然と抱いていた演劇というものの概念が崩れたというか、演劇って、こんな深くて広いものなんだ、こんなにも想像力を掻き立てられて、心の中でどんどん広がっていくものなんだと感じて。そういう岩松演劇が、僕にとっての演劇の基準価値観みたいなものなので、やる度に初心に返った気持ちになりますし、新しい自分も発見できます。成長した自分をいちばん見せたい人が岩松さんなので、こうやって岩松さんと一緒に舞台がやれる時間は、僕の中ではとても大切な時間なんです。

勝地:僕も『シブヤから遠く離れて』で岩松さんの戯曲に出会った時、これはどういうことなんだろう? と思うことがたくさんあって、衝撃を受けました。でも稽古で、セリフの一言目を話し出したら、そのシーンの終わりまで1回も止まらずに一気に言えたんです。何かこう、セリフが心地よくて。その時に味わったのが、戯曲の意味とか感情が、言葉にするわけじゃないのに役者同士の共通認識としてできていって、その空間が稽古場にだんだん構築されていくという感覚。本番になると、それが劇場と一体化する、みたいな。それを『空ばかり見ていた』の時にもすごく感じたんです。これはどういう意味なんだろう? とか、こうなんじゃないか? とか、最初は誰もまったく触れないんだけど、稽古が進むと、役者同士で作品のことを話し合うようになってくる。うまく言葉にできないんですが、それが楽しくて。

仲野:そうなんですよ。岩松さんの作品って、観終わった時に、劇場に演劇の香りというか、作品の香りが充満するんですよね。それはすごく感覚的なもので、言葉にするのも野暮な感じがするんですけど、その詩的な香りに気持ちが満たされまま、劇場を出るというか。そういう劇作家の方って、岩松さんしかいないと思っていて。

仲野太賀

ーーその感覚、非常によくわかります。稽古場での岩松さんの印象はどうですか?

仲野:うーん……岩松さんも出演されている時と演出だけの時では、またちょっと違ったりしますね、稽古場の空気感が。

勝地:稽古場のピリピリ具合も?

仲野:変わりますね。今回はご自身も出演されるので、そんなにピリピリしないんじゃないかと(笑)。出演者が全員男だから、ちょっと想像はつかないですけど。

勝地:『空ばかり見ていた』の時は、良い意味での緊張感はありました(笑)。でも、稽古を見ていると、岩松さんが淡々と「もう1回」を繰り返す理由も見えてくるというか。今のは、役者のセリフが変に噛み合いすぎているからかなとか、しっくりくる立ち位置とか距離感を何回も試しているんだな、とか。自分がやっている時は、どうしても必死になりますけど。

仲野:僕は“千本ノック”と言われている、その岩松さんの「もう1回」もすごく心地いいんですよね。もっとください! もう1回やらせてください! みたいな気持ちでやるタイプなので(笑)、それは今回もすごく楽しみです。

勝地:岩松さんの稽古場では、芝居以外の話も色々聞けるので、それも楽しいんです。新名(基弘)さんだったかな。『空ばかり見ていた』の時に「岩松さんの言葉」っていうノートを作って、稽古以外の言葉も書き留めてた。授業を受けに来ているみたいに。

仲野:僕も『国民傘』と『シダの群れ-純情巡礼編-』の時は、「岩松ノート」を作ってました。演出している時に出てくる言葉がすごく美しくて、それを聞いてるだけでハッとさせられるんです。その言葉に役者が導かれ、色々な角度から何回も試しながら、岩松さんが書いた本が演劇として立ち上がった時に、こういう風になるんだっていう感動は毎回ありますね。

ーーそんな2人に、岩松さんが今回期待していることを教えてください。

岩松:語弊があるかもしれないけど、難しい芝居を書いても大丈夫っていう感じがするんです。わかりやすいものは卒業してる2人だろうって、何となく思っていて。聞いてる時は、なんでそういう話をするんだろうと思うような、簡単ではない会話を与えたほうが面白いだろうな、読んでわかりやすいものはあんまり与えたくないなっていう気持ちになってますね。

仲野:痺れるなあ。武者震いがします。

勝地:僕はちょっと虚ろな目をしてしまった(笑)。

岩松:セットも2人が同居している番屋で、ひとつの場所から変わらないと思うし、同居している2人が話すことって、そんなにドラマチックじゃないでしょ?  だから一見小さな会話なんだけれど、そこに実は大きな話をしてるんじゃないかというものを託して、作品自体もそういう印象にしたいなと思っていて。まだ書き上がっていないから、いくらでも言えるんだけど(笑)。

岩松了

ーーそういえば、演出をされている、さいたまネクスト・シアターの『雨花のけもの』の本番が迫っていたかと(取材時)。

岩松:そうなんですよ。それで今、浦和に泊まり込んでいて。午前中にこっちの脚本を書いて、午後から稽古をしているような状況です。そうそう、僕もとうとうノートパソコンを買ったんだよ。

仲野:えっ! もう手書きの台本じゃないんですか?

岩松:この間の『そして春になった』(2020年)の時にタブレットを使ったら、意外と打てるじゃんと思って。それで今回はパソコンを使うことにしたんだよ。使い始めたら、字を書くのが面倒になっちゃって。

勝地:慣れるまで、逆に時間がかかりませんか?

岩松:早くはないけど、タブレットである程度慣れてはいたからね。だから『いのち知らず』は、パソコンを使った最初の戯曲になると思う。途中から手書きにしちゃうかもしれないけど(笑)。演劇を作る時、僕はとにかく現在でありたいわけ。で、リアリティのある話は何だろう? と考えると、簡単に言葉で言えないことが今リアリティのあることなんだろうなと感じる。色がついているものは全部過去で、色がついていないものが現在、というのかな。言葉でこれこれこうだと言った瞬間に過去になって、現在はいつもわからない状態で放り出されている気がする。それを今、2人に託して、現在を描きたいなと。

仲野:もうノートが欲しいです!

岩松:それで、なかなか書き進められないんですよ。今を描くということは、わからないことを描くということ。そんなことを思って、ちょっと偉そうなことを書き始めた瞬間に、奈落に落ちているというか。わからないことに留まりたい、わからないことにずっと執着しているような感じ。まあ、何でも言えますよ、まだ書いている途中だから(笑)。

勝地:早く稽古したいなあ。岩松さんの話を聞いているだけでもワクワクします。地方公演もあるし、僕がやりたいと言って夢が叶った作品なので、とにかく楽しみです。

岩松:ある意味、勝地がプロデューサーだからね。

勝地:いやいや、やめてくださいよ(笑)。

(左から)岩松了、勝地涼、仲野太賀

■勝地涼
ヘアメイク:井草真理子(APREA)
スタイリスト:上井大輔(demdem inc.)

■仲野太賀
ヘアメイク:井草真理子(APREA)
スタイリスト:石井大

取材・文=岡﨑 香  撮影=荒川 潤

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