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MTもエンジンも、すべてが古きよき感じ! 「アバルト595」で山道を走ってみた

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MTもエンジンも、すべてが古きよき感じ! 「アバルト595」で山道を走ってみた

MT (マニュアルトランスミッション) 好きの自動車ライター、マリオ高野です。

パワートレーンの電動化や自動運転技術が進む時代にあって、MT車は消えゆく旧時代のクルマになりつつあります。10年後には、新車で買えるMT車は完全に消滅しているかもしれません。

クルマ好きとしては寂しい現実ですが、2021年7月現在、まだ新車で買えるMT車はいくつか存在しているので、今のうちにこれらを楽しんでおこうではありませんか。

年々減りゆくMT車の中でも、今回紹介する「アバルト595」は、MTの操作をはじめとするクルマの運転行為から得られる楽しさや気持ちよさを、とてもわかりやすく味わい尽くせる1台です。

ベースとなる「フィアット500」同様、年月がたっても古くさく感じさせないデザイン

イタリアの小型車「フィアット500」をベースに、レースカーやチューニングカーづくりで絶大な人気を誇るスポーツブランドの「アバルト」が内外装を加飾。エンジンやサスペンションに独自のチューニングを施したモデルとして、世界中のクルマ好きから高く評価されてきました。

ベースとなる現行のフィアット500は2007年デビューと、設計年次が古いにもかかわらず、内外装の印象に古臭さを感じさせないのはイタリア車の面目躍如と言えるでしょう。

また、設計年次の古さは、エンジンやミッションに昔ながらのイタリアのスポーツモデルらしさが残されているなど、MTの楽しさを味わい尽くすにはむしろ好都合と言える点もあるのです。

全長は3660mm、全幅は1625mm、全高は1505mmと、今の時代にあってはマイクロカーと呼べるほどコンパクトなボディサイズです
最小回転半径は5.4m。コンパクトなボディの割には、小回りはあまり効きません。今回紹介した「アバルト595」のほか、上位グレードとしてさらにホットな走りが味わえる「595 Turismo」も設定されます

内外装の見た目とともにハンドリングもすばらしいのですが、まずはホットなパワートレーンに注目。1.4リッターのターボエンジンということで、いわゆるダウンサイジング系に分類される小排気量エンジンながら、最新の欧州車のコンパクトカーの主流である3気筒ではなく4気筒を採用しています。

最新の3気筒エンジンはいずれも出来がよく、まったく不満を感じさせないとはいえ、やはり高回転まで回し切った際の振動の少なさや滑らかさは、今もなお4気筒にアドバンテージがある。アバルト595に乗ると、その事実を思い出させてくれます。

高回転域までバランスよく軽快に、楽器のようないい音の高まりをともないながら吹け上がっていく、痛快なユニット

最高出力は145馬力。1100kg台と軽めの車重もあってか、実際に走らせるとスペックの数値以上の速さを感じさせます。それでもパワーを持て余すようなことはないので、スポーツドライビング時にはエンジンが高回転域にくぎ付け状態となり、これが痛快の極み。MTを駆使してエンジンの性能を使い尽くすと、振動や騒音面での4気筒の優位性を実感するのでした。

ひたすら痛快なエンジンサウンドは、金属的なトーンの中にも生命的な鼓動や息吹のようなものが感じられます。最新のスポーツモデルでよく見られる、電子的にサウンドを追加する演出も悪くはありませんが、やはりアナログで音作りをしているクルマのサウンドのほうがより好ましい。ガソリンを豪快に爆発させる気持ちよさは貴重な快楽。アバルト595はそんな事実も再確認させてくれます。

高速巡航も得意科目のひとつ。全長もホイールベースも短めながら、高めの速度域でもすばらしい直進性の高さを発揮し、長時間ドライブの疲労を軽減してくれます

低速トルク感はやや頼りないと感じるいっぽう、高回転域ではドラマチックに盛り上がるタイプのメリハリの効いたエンジンなので、ごく日常的な運転から楽しさが炸裂します。 

「アバルト(Abarth)」は50年以上前からフィアットなどのイタリア車のチューニングやレースカー作りをしてきた伝統と歴史のあるブランド。創業者のカルロ・アバルトさんがサソリ座だったので、サソリのマークが採用されました

アバルト595は、MTならハンドル位置は左右の両方が選べますが、オススメは本国仕様に近い左ハンドル。右ハンドルでも、昔のイタリア車のようにペダルレイアウトに違和感を覚えることはありませんが、それでも本来の仕様といえる左ハンドルのほうが、より自然な運転姿勢がとれるからです。

外装同様、内装も時間的耐久性の高いデザインセンス。この先何十年たっても飽きることはなさそうです。昔のイタリア車と異なり、質感もしっかりしています
大人しく巡航すれば燃費も悪くありませんが、燃料タンクは35Lとやや小さめ。ちなみに右ハンドルの2ペダル車はオートクラッチタイプの5速セミATになります

今や、正規輸入車で本国仕様に近い左ハンドルのMTが選べるのは本当に希少なので、この機に「右手でシフト操作をする感覚」を味わってみてはいかがでしょうか?

シフトフィールは、日本やドイツのスポーツモデルのような硬質感はなく、ストローク量はそれなりにあって、意外と実用車的なフィーリングだったりしますが、不思議なほど自然、かつ正確に操作しやすい絶妙な手応えであることに気がつきます。昔ながらのイタリア車の感覚が味わえる貴重な部分と言えるのです。

シフトの位置はとても適切なので、左ハンドル車に不慣れな人も、しばらく乗ればすぐに順応できるでしょう。右手シフトの感覚をお楽しみください。右ハンドル車もありますが
ブレーキのコントール性とエンジンの反応がいいので「ヒール・アンド・トゥ」がやりやすいペダル

右折時に対向車線が確認しにくいなど、日本で左ハンドル車に乗る際のネガもありますが、ボディサイズがコンパクト(全幅は1625mm)なので、そのネガは最小限にとどまります。

ハンドリングにもやや古典的な味わいがあって、それがまた好ましいかぎり。サスペンションは、最新世代の欧州スポーツ車と比較するとかなり硬めながら、ハーシュネスがきつく感じられることはなく、素直な微舵応答性によりどんな状況でも狙ったラインをトレースしやすい設定です。

ボディ剛性も、最新世代の欧州コンパクトカーのような堅ろう感は得られませんが、かといってユルイわけではありません。車体全体でしなやかに路面からの入力と横Gを受け止めるような感じで、路面の凹凸を上手にいなして、常にフラットな姿勢をキープ。やや硬いながらも、大きな周期でしなやかにストロークする感覚をともないます。

スポーツモードを選択すると最大トルクは210Nm以上を発揮するので、予想以上に豪快な追い越し加速性能を備えています。排気サウンドも豪快かつ痛快!

まとめると、エンジンやミッション、車体やサスペンションなど、クルマのすべての味わいに「昔ながらの欧州ホットハッチ」らしさが色濃く残されているところが、ほかに得がたい魅力となっているのです。しかも、輸入車のスポーツモデルとしては格安と言える300万円ジャストという値付けですから、なお魅力的!

アバルト595は、日本で買える最後の古きよき欧州ホットハッチMTになるかもしれません。運転の楽しさの原点が濃縮されたようなクルマなので、改めて注目する価値が高いと言えます。

国産のチューニングブランドからサスペンションやブレーキなどの強化パーツが発売されており、カスタマイズも楽しみやすい環境が整っています

この試乗の模様は動画でもご覧いただけます。

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