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トヨタ「アルファード」は爆売れなのに「ヴェルファイア」はまもなく消滅!? その理由とは

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トヨタ「アルファード」は爆売れなのに「ヴェルファイア」はまもなく消滅!? その理由とは

2021年5月10日、トヨタ「アルファード」と「ヴェルファイア」に一部改良が施された。

2021年5月10日の一部改良によって設定された、トヨタ「ヴェルファイア」の特別仕様車「GOLDEN EYES II」

改良内容については、両側スライドドアにワンタッチスイッチ付き電動開閉機能が全車標準装備されるなど、変更そのものは小規模なものだ。だが、新たなグレード構成に驚かされた。ヴェルファイアのグレードラインアップが、大幅に縮小されたからだ。既存グレードはすべて廃止され、今後販売されるのは特別仕様車の「GOLDEN EYES II」のみになる。そのため、従来のヴェルファイアには存在していた、3.5L V型6気筒エンジン搭載車や最上級のエグゼクティブラウンジなどは、もはや選ぶことができなくなった。ちなみに、アルファードは従来どおりのグレードラインアップだ。

トヨタ「アルファード」も、一部改良によって「S」グレードをベースとした特別仕様車「S “TYPE GOLD II」が設定された

それにしても、なぜヴェルファイアは特別仕様車の1グレードのみになったのか。その理由は、ヴェルファイアの売れ行きが大幅に下がったからだ。アルファードの2021年1月~3月までの登録台数は、1か月平均で11368台にも達している。コンパクトカーの「ヤリス」が10820台、コンパクトSUVの「ヤリスクロス」は10577台なので(日本自動車販売協会連合会の公表数値はヤリスシリーズ合計のため、前述の数値とは異なる)、高級ミニバンのアルファードが、ヤリスやヤリスクロスなどと同様の登録台数であることを考えると、相当な人気車になっていると言えるだろう。いっぽう、ヴェルファイアの1か月平均の登録台数は、わずか1061台にとどまっている。

ちなみに、2015年にアルファード、ヴェルファイアが現行型へとフルモデルチェンジされた時には、ヴェルファイアの登録台数のほうが多かったのだ。アルファードを販売するトヨペット店は、全国に約1000か所(2015年当時)あったが、ヴェルファイアのネッツ店は約1500か所あり、販売店の規模に差があったことも影響していた。

2018年1月のマイナーチェンジ前のトヨタ「アルファード」
2018年1月のマイナーチェンジ後のトヨタ「アルファード」

ところが、2018年1月のマイナーチェンジによって、両車の販売順位が逆転する。アルファードは、メッキを散りばめた仮面のようなフロントフェイスの迫力が強められ、さらに存在感が増した。前述のとおり、アルファードの販売店舗数はヴェルファイアよりも少なかったにもかかわらず、2018年には1か月平均で4901台を登録し、ヴェルファイアの3054台を上回った。その後、2019年もアルファードは好調に売れ続けた。

そして、決定的な差を生み出したのが、2020年5月に実施されたトヨタの販売体制の変更だ。国内すべての販売店において、トヨタの全車種(レクサスブランドを除く)が購入可能となったのだ。アルファードは、従来の取り扱い系列だったトヨペット店に加えて、アルファードやヴェルファイアを販売していなかったトヨタ店やカローラ店でも購入できるようになり、売れ行きをさらに伸ばすことになる。また、ヴェルファイアを専門に販売してきたネッツ店からも「ヴェルファイアのお客様が、アルファードに乗り替えるパターンが増えている」という話も聞かれるようになった。

その結果、アルファードの2020年下半期(2020年7月~12月)における1か月平均の登録台数は、コロナ禍の影響を受けながらも、9025台に達する。対するヴェルファイアは1218台なので、両車は基本的に同じクルマながら、7倍以上もの販売格差が生じた。

そして、2021年に入るとアルファードは1か月平均で11368台が登録されたが、ヴェルファイアは1061台と10倍以上の販売格差が生じた。結果、ヴェルファイアは既存グレードが廃止され、特別仕様車のGOLDEN EYES IIのみとなったのだ。

トヨタの販売店では、「ヴェルファイアは販売不振で、GOLDEN EYES IIのみになったから、今後のモデルチェンジでは廃止される可能性もある」と話す。以前のヴェルファイアなどは、ネッツ店の専売車種だったことから大切に販売されてきた。それが、全店扱いになったことによって、人気車は徹底的に売れ行きを伸ばし、不人気車は逆に大幅に落ち込んだ。そのため、アルファードとヴェルファイアも、内外装の一部が違うだけで基本的には同じクルマなのに、10倍の販売格差が生じた。全店で全車を売る体制は、ある意味で残酷な結果をもたらすのかもしれない。

トヨタ「クラウン」RSグレード

なお、トヨタが今の販売体制に移行したことで、高級セダンの「クラウン」の売れ行きも下がっている。2019年1月~3月の、1か月平均の登録台数は4737台だったが、2021年1月~3月は2483台と、2年間で半減している。以前は、トヨタ店の顧客がクラウンからトヨペット店のアルファードに乗り替えようとすれば、トヨタ店では好条件を提示してクラウンにとどまるよう説得していた。しかし、全店が全車を扱う今なら、販売店を変えずにクラウンからアルファードへと乗り替えられる。もはや、クラウンにとどまるよう説得する必要はないこともあって、売れ行きを下げた。

最近、トヨタ以外のメーカーは軽自動車を積極的に販売している。いまや、国内で販売されるホンダ車の50%以上、日産車の40%以上が軽自動車だ。そのため、小型車、普通車市場においては、トヨタのシェアが50%にも達している。そうなると、トヨタ車の競争相手はトヨタ車になる。そして、全店で全車を売る販売体制は、トヨタ車同士の力関係に影響を与え、アルファードが好調に売れて、ヴェルファイアやクラウンは需要が奪われるといったことが起きている。

ちなみに、この販売動向はトヨタの狙いどおりだ。トヨタは2017年に、経営資源を集中させるために国内販売車種を半減する方針を掲げ、全店が全車を扱う体制を打ち出した。その後、販売格差の拡大もあって「エスティマ」「ポルテ」「スペイド」「マークX」「プレミオ」「アリオン」「プリウスα」、そして「ルーミー」の姉妹車である「タンク」などが廃止されている。全店が全車を扱う販売体制には、不人気車を浮き彫りにしてリストラを進める効果もあるわけだ。

日産やホンダも、2000年から2010年ごろにかけて、全店で全車を扱う体制へと移行した。この時から、売れ筋車種は偏り始め、今では車種数も減っている。こういったリストラの背景には、今後の電動化を含めた環境技術、自動運転や安全装備に対する投資も関わってくる。車種を減らして、開発費用を抑える必要があるからだ。

ただし、ユーザーとしては選択肢が減ることになるので、デメリットと受け取られるだろう。メーカーには、従来以上に的確な商品開発が求められるようになってきている。特に、クラウンのようなLサイズセダンは、アルファードなどのミニバンや、「ハリアー」を始めとするSUVに顧客を奪われやすい。メーカーが愛情を注いで販売を促進させないと、消滅する心配もある。そこで、今はクラウンをSUVに発展させる話まで浮上してきている。

最後に、改良を受けたアルファード、ヴェルファイアの選び方だが、前述のとおり、選択できるグレードはアルファードのほうが圧倒的に多い。また人気の格差によって、数年後に売却する時の金額もアルファードのほうが高いだろう。

筆者がおすすめするのは、トヨタ「アルファード」のベストグレードである「S」だ

販売店では、数年後の価値を以下のように説明する。「アルファードに、2.5L NAエンジンを搭載するS・Cパッケージ(4681600円/7人乗り)のホワイトパール仕様は、中古車市場でも特に人気が高い。そのために、購入から約3年後に4000000円を超える金額で売却できる。ヴェルファイアに似合う外装色はブラックだが、アルファードはホワイトだ。アルファードにホワイトが似合うことも、人気と売れ行きの格差に結び付いている」。高値で売却したいなら、アルファード S・Cパッケージを推奨するが、豪華指向のグレードとあって価格も高い。機能と価格のバランスを考えると、割安にエアロパーツを装着しているS(3985000円/7人乗り)がベストグレードになるだろう。

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