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adieu(上白石萌歌)が表現する、自分の“好き”を信じることの美しさ――TVアニメ『本好きの下剋上 領主の養女』第2クールEDテーマ「Wanna me」インタビュー

アニメイトタイムズ

写真:アニメイトタイムズ編集部

「本がなければ作ればいい!」――書物が希少な世界で、無類の本好きの少女・ローゼマインの奮闘を描くTVアニメ『本好きの下剋上 領主の養女』。その第2クールのエンディングテーマ「Wanna me」を担当するのが、俳優・上白石萌歌のアーティスト名義となるクリエイティブコンソーシアム、adieuだ。役者ならではの表現力を備えた繊細なクリアボイスと、シンガーソングライターの柴田聡子が書き下ろしたアンニュイな中にも強い意志を感じさせる楽曲、浮遊感あるエレクトロニックなサウンドは、『本好きの下剋上』にどんな形で寄り添っているのか。自身との共通項を感じるというローゼマインや作品への思いと共に、今回のアニメタイアップについて語ってもらった。

 

 

【写真】adieu(上白石萌歌)が表現する、自分の“好き”を信じることの美しさ【インタビュー】

ローゼマインを見て考えた、自分にとって本当に大切なもの

──『本好きの下剋上』シリーズという作品に触れた印象・感想についてお聞かせください。作品のどんなところに魅力を感じましたか?

adieu:個人的に異世界転生モノは冒険や戦うイメージを持っていたのですが、この作品は本を好きな主人公が、本のない世界で本を作るために頑張るという設定がとても新鮮だと思いました。ローゼマインというひとりの少女が世界を変えていくお話ですけど、その出発点にあるのは、大きな野望とかではなく、純粋に自分が愛するものを求める気持ちであることに、自分の好きを貫くことの美しさを感じました。

特に第2クールは社会や文化といった領域も巻き込んで、物語の規模感がどんどん大きくなっていくなかで、それでもローゼマインの心の中に一貫してあるのは、混じりけのない本への愛。そのひたむきな姿に、自分が好きなものを信じるのは、自分自身を信じることにも繋がることを改めて気づかせてもらいましたし、ローゼマインにとっての本と同じように、自分にとっての大切なものは何だろう?と考えさせてくれるきっかけにもなりました。

──ご自身にとっての大切なものとは?

adieu:やっぱり音楽ですね。adieuとしてもいろんな音楽に挑戦してきましたし、自分が物心ついて最初に好きになったのも音楽だったので。母親が音楽の教師をしていて、生活の中にピアノの音や音楽があることが当たり前だったんです。今こうして歌を届ける立場になっても、幼い頃と変わらず、純粋に音楽が好きな気持ちを大事にしながら歌を歌いたいと思っていますし、それはローゼマインの姿勢と通じるところがあるのかなと思います。

──ローゼマインに共感を抱く部分も多い?

adieu:そうですね。私も本が好きですし……彼女ほどのオタクではないですけど(笑)。でも、オタクって最強だと思うんです。自分の好きなものを貫いたり、熱量を持てることがひとつでもあると、人生がすごく豊かになると思いますし、私もそういう風に熱を注ぎたいものがたくさんあるので。ローゼマインは自分の夢を叶えていくなかでいろんなものを失っていきますけど、それでも貫きたい想いが物語を通してどんどん強まっていくのを見ていると、改めて「好き」という気持ちのポジティブさをすごく感じます。私もadieuらしくこの世界に寄り添えたらいいなと思いました。

──adieuとして歌う第2クールのエンディングテーマ「Wanna me」は、作品のどんな部分に寄り添う楽曲になりましたか。

adieu:「Wanna me」というタイトルには、「私はこうありたい」とか「自分の信じているものを叶えたい」といった信念が込められていて。『本好きの下剋上』は、最初はたったひとりの少女の夢から始まったものが、ローゼマインの自分の気持ちを貫く強さが周りの人をどんどん巻き込んでいって、第2クールではすごく大きなものになっていく。そういった部分でローゼマインに寄り添えていたらいいなと思います。

それとadieuでいつも表現している音楽が主観だとしたら、この曲は少し遠くから現象を見つめているような、ちょっと神様みたいな視点を感じるんです。その意味では「わたし」が「わたし」を見つめているような視点もありますし、『本好き』の世界観を意識しながらも、どこか余白のある歌い方にすることで、アニメを観終えた人がその回で感じた気持ちに寄り添えるよう意識しました。エンディングテーマというのは、その回の読後感みたいなものに寄り添う役割があると思うので。

──ローゼマインだけでなく、いろんな登場人物にも寄り添える楽曲を目指したと。

adieu:はい。普段、adieuで歌っている音楽は、演技の時よりも自分自身を見つめて、自分の中にいるいろんな人格を呼び覚ますようなイメージがあるのですが、今回のように作品に寄り添わせていただく楽曲の場合は、作品の主人公も同居させながら歌えるところがいいなと思っていて。もちろんそれも自分ではありますけど、でも作品の登場人物の誰かの気持ちでもある。今もアニメを毎週楽しみに観ているのですが、「Wanna me」がアニメと一緒に流れているのを観るのが本当に待ち遠しいですし、きっとそれを観た時に、私自身、新しく気付くこともあるんじゃないかなと思っています。

 

 

「Wanna me」に込めた"私はこうありたい"という信念

──では、作品から離れてご自身の心情や気持ちに重なる部分はありますか?

adieu:歌詞の中に“誰かがわたしを知る前に わたしは わたしを知っている”というフレーズがあるのですが、このワードは自分のなかでもしっくりくる言葉です。adieuも誰かに知られる前に自分でこうありたいなという気持ちがあって。adieuの活動は来年で10周年を迎えるなかで、どんどん新しい環境に置かれたりすると、「一体自分って何なんだろう?」と思うこともあったり、人と比べてしまうこともあったのですが、改めてこれまでの道を振り返った時に「やっぱり自分が自分のことを一番知っているんだな」と感じたんです。自分が今まで歩いてきた道が自分を作っているわけですし、「自分は自分のままでいいんだ」と自信をくれるところが、この曲にはあります。

 

──それはもしかしたら、この曲を作詞・作曲したのがシンガーソングライターの柴田聡子さんというのも大きいかもしれないですね。柴田さんがadieuの楽曲を手がけるのは今回が4曲目なので、adieuの活動に対する理解度も深いでしょうし。

adieu:そうだと思います。ただ、この曲は柴田さんが普段ご自身の音楽で紡がれているものとは、また違うテイストの世界がある気がしていて。個人的に柴田さんが書かれる楽曲は、自分の生活の半径に近いもの、人の仕草とか心の機微みたいなものを表しているイメージが強いのですが、「Wanna me」はそれとはまた違った視点から歌詞を書かれていて。冒頭の“どこか遠くの知らない星の 見慣れない空の下だとしても”という部分は異世界に転生したローゼマインそのものだと思いますし、そういうアプローチが個人的にすごく新鮮だったので、この曲にある大きな世界観を自分なりに体現できたらいいなと思います。

──先ほど本が好きとおっしゃっていましたが、せっかくなので『本好きの下剋上』にかけて、思い出の一冊があれば教えていただけますか?

adieu:宝物のように愛している本がたくさんあるのですが、そのなかでも本を好きになるきっかけになった一冊があって。それが小学4年生の頃、両親に買ってもらった谷川俊太郎さんの『ゆう/夕』という詩集です。それまでは言葉に対してあまり興味を持っていなかったんですけど、その本は詩集としても絵本としても楽しめる内容だったので、触れているうちに谷川さんの書く言葉、平仮名の使い方やリズミカルな詩の響きに惹き込まれていって。言葉のリズムがつい音読したくなるようなもので、難しくて意味がわからない部分があっても、「自分が大人になった時にこの難しい詩をどういう風に読むんだろう?」と好奇心が生まれたりもしました。谷川さんの紡ぐ言葉が私に言葉の素敵さを気づかせてくれたので、これからも小説やエッセイを含め谷川さんの作品を読み続けると思います。

──余談ですが、谷川さんは日本で最初のアニメソング「鉄腕アトム」を作詞した方でもありますからね。最後に『本好きの下剋上 領主の養女』のファンに向けてメッセージをお願いします。

adieu:何よりも私自身がアニメの続きをすごく楽しみにしていますし、「Wanna me」は、この作品で描かれている「信じる」ことや純粋な「好き」という気持ちの美しさに寄り添えればと思って作った曲なので、アニメを観終わった後にこの曲を聴きながら「今日はこんな気持ちになったな」というのを大切に振り返っていただけると嬉しいです。

[文・北野創 / 撮影・小川遼]

 

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