【鎌倉 イベントレポ】「パレスチナと猫」写真展 - 猫たちのまなざしの先に見えてくる、パレスチナの日常
猫たちのまなざしの先に、見えてきますか――?
パレスチナの人々のいとなみ、そして占領下を生きる不条理が。
写真家の高橋美香さん、フォトジャーナリストの安田菜津紀さん、佐藤慧さんによる写真展「パレスチナと猫」が、長谷駅から徒歩2分のオルタナティブスペース「古民家ゆりいか」にて、2026年1月5日(月)から1月25日(日)まで開催されています。
2024年に開催された写真展「パレスチナの猫」から1年
本展は、2024年8月から全国を巡回し、同年12月に「古民家ゆりいか」でも開催された写真展『パレスチナの猫』に続く第2弾です。前回は高橋さんと安田さんによる写真展で、今回はそこに佐藤慧さんの写真も加わりました。
前回の展示から約1年が経ちましたが、パレスチナをめぐる過酷な状況は、今も変わっていません。現地での人々の暮らしは、今、どうなっているのか。猫たちを通じて、何が見えてくるのか。そんな問いかけを胸に、会場を訪ねました。
会場に入ると、朝の光が差し込むあたたかな空間に、パレスチナで撮影された写真が20枚展示されています。2023年から25年にかけて撮影されたもので、撮影地は、主に東エルサレムとヨルダン川西岸地区。イスラエルによる占領と入植活動が続いている地域です。
猫たちが生きるパレスチナ
写真には、さまざまな表情を浮かべる猫たちが、街を歩きまわり、眠り、日々を過ごす姿が写し出されています。
その背景にあるのは、決して安全とは言えないイスラエル占領下で、多くの不条理を抱えながら生きるパレスチナの人々の暮らしです。
「旧市街に設けられた監視所に立ち、パレスチナ人には容赦なく暴力を振るうイスラエル警察も、猫には優しい」―そんな言葉が添えられた写真もあります。
けれど、添えられたキャプションは、どれも多くを説明するものではありません。
写真が映し出すのは、猫の姿と、そばにいる人々や街の風景。そこから何を感じ取るのか、何を想像するのかは、あえて見る人自身に委ねられているように感じられます。
イスラエル占領下で、日々を営む人々がいる
「古民家ゆりいか」のオーナーであり、ドキュメンタリー映画監督の平野隆章さんは、大阪の書店「MoMoBooks」で前回の写真展「パレスチナの猫」に出会いました。静かな環境の中で、来場者がゆっくり時間をかけて写真に向き合っている姿を見て、「ぜひ鎌倉でも、たくさんの人に見てほしい」と開催を決めたそうです。
平野さんはこう話します。
「パレスチナのニュースは過酷なものが多く、観ていると辛くなることもある。だからこそ、猫たちの姿を通して、現地で起きていることを落ち着いて考えてもらえたら。パレスチナの人々も、私たちと同じ人間で、同じように生活がある。そのことを写真を通して見る人に手渡せたら嬉しいです。」
終わりの見えない現実の中で
2023年10月以降、イスラエルとパレスチナの紛争は激しい戦争状態へと突入し、7万人を超える命が奪われました。2024年に停戦をめぐる動きがあったものの、移動や生活の制限の中で生きるパレスチナの人々の厳しい日常は、変わっていません。
この写真展が見せてくれるのは、ニュースとは異なる角度からのパレスチナの姿です。
猫たちの姿に目を向けることで、そこに生きる人々もまた、日々を営んでいるという当たり前の事実に、あらためて気づかされます。
メインの展示室の隣には小さな部屋があり、そこにも猫たちの写真が展示されています。正面に置かれた机には、アンケートの案内が置かれていました。
前回の展示では、「パレスチナを身近に感じた」「猫が語りかけてくるようだった」「猫を通してパレスチナの不条理を知った」など、来場者からさまざまな声が寄せられました。期間の前半は地域の方の来訪が多かったものの、後半になるにつれて東京からの来場者も増え、少しずつ写真展の波が広がっていったそうです。
各部屋には椅子や座布団が用意され、ドリンク類もオーダーできるため、落ち着いた時間の中でゆっくり写真を見ることができます。
写真の前で、少しだけ立ち止まってみませんか
今度は「パレスチナ“の”猫」ではなく、「パレスチナ“と”猫」にしたのは、これまでの展示で頂いた感想を踏まえ、猫たちの姿だけではなく、そのまなざしから、よりその地での息遣いが伝わればという願いがあるからだ。
-メディアNPO Dialogue for People HPから引用
受付では、関連書籍や主催のメディアNPO「Dialogue for People」が手がけるカレンダーも販売されています。展示とあわせて手に取ることで、写真の背景にある出来事や、そこに生きる人々の声に、もう一歩近づくことができるのではないでしょうか。
ニュースの見出しでは伝えきれないパレスチナの人々の声、祈りを、猫のまなざしを通して感じ、想像してみませんか。
「パレスチナと猫」写真展
開催期間
2026年1月5日(月)〜1月25日(日) 10:00〜19:00(水曜定休)
開催場所
古民家ゆりいか
住所:〒248-0016 神奈川県鎌倉市長谷2丁目15−14
駐車場:なし
参加費
無料
企画
メディアNPO Dialogue for People
撮影者プロフィール
高橋美香
写真家。パレスチナ問題を主に扱う。何度もパレスチナを訪れ、現地の家庭と生活を共にし、そこで生活している人々の等身大の姿を伝え続けている。著書に『パレスチナに生きるふたり ママとマハ』(かもがわ出版・第29回平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞受賞)など。
安田菜津紀
フォトジャーナリスト。メディアNPO Dialogue for People副代表。東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の現場を取材。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に「遺骨と祈り」(産業編集センター)など。TBSテレビ「サンデーモーニング」コメンテーター。
佐藤慧
フォトジャーナリスト。メディアNPO Dialogue for People代表。言葉と写真を駆使し、国籍−人種−宗教を超えて、人と人との心の繋がりを探求する。アフリカや中東、東ティモールなどを取材。 東日本大震災以降、継続的に被災地の取材も行っている。著書に『しあわせの牛乳』(ポプラ社・第2回児童文芸ノンフィクション文学賞)など。
共催
古民家ゆりいか