インクルーシブ教育、幼保小連携、教員の専門性…支援の最前線を学ぶ!「日本LD学会」レポート【アーカイブ配信中】
【LD学会大会レポート】支援の視点をアップデート!明日からの実践に活かす専門家の知見
2025年10月18日・19日と、2日間にわたって国立オリンピック記念青少年総合センターで開催された日本LD学会の第34回大会。今回の記事では、2025年11月下旬より配信が予定されているアーカイブの中から、特別支援教育に携わる先生方や支援者の皆さんに、ぜひご覧いただきたい3つのシンポジウムをピックアップしてご紹介いたします。
小・中学校の通常の学級における社会モデルプログラムの開発と導入幼保小の連携による支援「就学前の発達障害のある子どもに対する支援」すぐそこの未来へ―発達障害教育に関わる免許の実現に向けて―
アーカイブ配信の視聴前に、ぜひご一読ください。
※アーカイブ視聴の申し込み詳細は日本LD学会第34回大会Webサイトをご確認ください。
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「ふつう」を問い直す社会モデルに注目!通常学級から目指すインクルーシブ教育
一般社団法人UNIVAの理事・野口晃菜さんらが企画、話題提供を務めたシンポジウム「小・中学校の通常の学級における社会モデルプログラムの開発と導入」では、埼玉県戸田市、大阪府箕面市、東京都狛江市立狛江第三小学校と協働開発した「通常の学級における社会モデルプログラム」が紹介されました。このプログラムは、合理的配慮の義務化や次期学習指導要領の改訂を背景に持ち、インクルーシブ教育の構築に関する知見を全国に共有、政策にも反映させることを目的としています。
シンポジウムでは「本を座って読むのはふつう?」などの問いかけが行われ、プログラムで実際に使用されているアクティビティを実施。「ふつう」が人によって異なることが可視化されたことで、困難の要因は個人でなく、マジョリティ中心の社会環境にあるという視点が参加者間でも共有されました。
また、実際の授業例として、子どもたちが身の回りの「ふつう」をどうアップデートするのか、自分自身の困りごとを「社会モデルの視点」で捉えることから考えるプロセスを紹介しています。ほかにも、学校が子どもに合わせるインクルーシブ教育の具体的かつ重要な実践報告に触れることができます。
シンポジウムの内容は、アーカイブでも視聴ができます。
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・シンポジウム概要
小・中学校の通常の学級における社会モデルプログラムの開発と導入
企画者,司会者,話題提供者: 野口 晃菜1
企画者,話題提供者: 野田 航2
話題提供者: 藤本 恵美3 、岡田 悦子4 、藤田 政貴4 指定討論者: 近藤 武夫5
(1. 一般社団法人UNIVA、2. 大阪教育大学、3. 戸田市教育委員会、4. 公立小学校、5. 東京大学先端科学技術研究センター)
幼保小の連携強化:なめらかな移行支援の実現に向けて
LD・SLD(限局性学習症)を含む発達障害のお子さんへの支援には、「早期からのサポート」と「途切れない連携」が不可欠です。しかし、幼稚園・保育園から小学校への移行において、異なる機関・専門職間での情報共有や支援の継続には、依然として課題が残ります。星槎大学大学院の西永先生らによって行われたシンポジウム、幼保小の連携による支援「就学前の発達障害のある子どもに対する支援」では、支援者が直面する「連携の難しさ」に焦点を当て、教育・医療・福祉の専門家の見地から、お子さんにとって最適な支援を提供するための具体的な解決策を模索しました。
個別の指導・支援計画を形骸化させず、お子さんの成長に真に役立つツールとするための専門的視点や、「児童発達支援ガイドライン」の理念、特別支援学校における自立活動の考え方といった、支援の基盤となる知識を深く整理できます。
現場での実践につながる「多職種連携(IPC)」のアイデアを見つけ、小学校などの新しい環境へ移行する際のつまずきを最小限に抑えるための工夫について、ヒントが得られる内容となっています。
シンポジウムの内容は、アーカイブでも視聴ができます。
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・シンポジウム概要
幼保小の連携による支援「就学前の発達障害のある子どもに対する支援」
司会者・企画者: 西永 堅1
話題提供者: 田中 里実2、堂山 亞希3、葛西 一馬4, 5
指定討論者: 大伴 潔6
(1. 星槎大学大学院、2. 青山学院大学、3. 目白大学、4. 三重県特別支援学校玉城わかば学園、5. 星槎大学、6. 東京学芸大学)
教員の専門性向上と制度改革:子どもたちの未来を支えるために
現在、通常の学級にも支援が必要なお子さんが多く在籍しています。すべての子どもに適切なサポートを届けるためには、教員一人ひとりの「専門性」をいかに育み、支えるかが重要です。日本LD学会理事長を務める海津先生らが参加されたシンポジウム、すぐそこの未来へ―発達障害教育に関わる免許の実現に向けて―では、支援職のキャリアと未来に深く関わる教員免許制度改革の動向を詳しく解説していただきました。
諸外国における特別支援教育の現状や、日本の大学における「教職課程コアカリキュラム」の課題、教育・医療・福祉の連携における欧米との比較など、教員免許制度改革の意義や課題、展望について重要な示唆がありました。
子どもたちの未来を支える力へと変えるために、今私たちになにができるのか。第一線の研究者による具体的な提言から、「すぐそこの未来」へつながるヒントを、ぜひ見つけてみてください。
シンポジウムの内容は、アーカイブでも視聴ができます。
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・シンポジウム概要
すぐそこの未来へ―発達障害教育に関わる免許の実現に向けて―
司会者・企画者: 涌井 恵1
司会者: 佐藤 克敏2
話題提供者: 是永 かな子3 、田中 裕一4 、齋藤 卓弥5 、大塚 晃6, 7
指定討論者: 吉利 宗久8 、海津 亜希子9
(1. 白百合女子大学、2. 京都教育大学、3. 高知大学、4. 神戸女子大学、5. 北海道大学病院 子どものこころと発達センター、6. JDDネット副理事長、7. 上智大学総合人間科学部社会福祉学科 名誉教授、 8. 岡山大学、9. 明治学院大学)
ご紹介する講演やシンポジウムでは、発達に特性のある子どもたちの支援について理解を深めるための重要な視点と、実践に役立つヒントが得られることと思います。専門家による最新の研究や実践事例をぜひご覧いただき、明日からの支援にお役立てください。
これまでのレポートもぜひご覧ください!
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。