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鬼龍院翔、カバー曲で「絶対にしてはいけない」と肝に銘じている掟

anan総研

鬼龍院翔、カバー曲で「絶対にしてはいけない」と肝に銘じている掟

【音楽通信】第46回目に登場するのは、インパクトのある歌詞と耳に残る楽曲、コミカルな要素を感じさせるパフォーマンスも人気のゴールデンボンバーのボーカル、鬼龍院翔さん!

取材、文・かわむらあみり

【音楽通信】vol.46

バンドに憧れて、インディーズで活動する道を選択

ananweb 編集部

“ヴィジュアル系エアーバンド”ゴールデンボンバーの鬼龍院翔さんは、バンドの全楽曲の作詞作曲やライブの演出なども手掛けるうえ、ソロ活動や他アーティストへの楽曲提供なども行う多彩なボーカリストです。

2004年に鬼龍院さんとギターの喜矢武豊さんを中心にバンドを結成されてから、インパクトのある歌詞や耳に残る楽曲、鬼龍院さん以外は楽器を弾かずに披露するパフォーマンスなどで注目を集め、さらにシングル「女々しくて」で大ブレイク。

以降も数々の楽曲を世に送り出し、近年では時代の変化を絶妙にブレンドしたシングル「令和」や、アルバム『もう紅白に出してくれない』なども、話題を呼びました。

そんな鬼龍院さんが、2020年8月30日に、ファンクラブの方からのリクエスト上位曲のみで制作されたカバーCD『うたってきりりんぱ』をソロでリリースされるということで、お話をうかがいました。

ーー過去の音楽活動から少し振り返ります。19歳のとき、喜矢武さんと前身バンドを結成され、2007年にはベースの歌広場淳さん、2009年にはドラムの樽美酒研二さんが加入されて以来、ゴールデンボンバーは大活躍されている印象です。バンド活動の手応えを感じたのは、いつ頃でしたか。

手応えを感じたのは、ギターの喜矢武しかいなかった2007年頃ですね。それまではわかりづらかったライブでのネタの振り方を芸人の知り合いから「わかりやすくやったほうがいいよ」と助言されて、やってみたらお客さんが受けて、「自分たちのやり方を見つけた」と思ったんです。

そこから自分のやりたいことがはっきりわかって進んでいくんですが、歌広場が入ったり、ドラムの人がサポートメンバーだったのがいまの樽美酒に変わったりして。でも、メンバーが変わったからといって、モチベーションに差はありませんでしたね。

ーー楽曲もライブも手掛ける鬼龍院さんなので、ソロで活動していくお考えはなかったのですか。

考えなかったです。いまは時代が変わってきたかもしれないですが、当時は“ソロシンガー”より“バンド”に憧れを抱きやすい時代だったんですよね。同じ実力のあるアーティストがいたとして、それが“ソロシンガー”と“バンド”だったら「バンドに憧れるはずだ、世の中そういうもんだろう」と決めつけていました。僕はバンドが良かったので、誰かしらメンバーがいてほしいと思っていたんですよね。

ーーゴールデンボンバーは、メジャーレーベルの数あるオファーを断り、現在もインディーズで活動されている理由は。

駆け出しの頃はメジャーデビューしてもいいかなと思っていたんですが、いまの事務所さんにお世話になるようになって、そこはインディーズでCDも出せるんですよね。ちょうど時代がメジャーデビューにうまみがあまりないのではと思われ始めた頃に、メジャーレーベル7社から一気にオファーがきたんですが、社長にも「どうしたらいいですかね」と話をしました。

社長は、「メジャーレーベルに行くと関わるスタッフが増えるから、稼ぎは減る。でもうちとは違うルートの宣伝がある気がする。でもインターネットでも宣伝はよかったりもするし、いまの給料に並ぶには、君たちがEXILEぐらい人気者にならないとダメ。だから結局、給料が1/10ぐらいになると思ったほうがいい」と言われて。「じゃあ、しなくていいですよね」と(笑)。

でも一番いやだったのは、メジャーに行くとやれることも減るかもしれないから。過激なパフォーマンスができる機会が減ってしまうと、僕もそうですがメンバーはもっと困る。飛び道具、いろいろな変なこと、過激なことをやって、やっと居場所があるのに。それができないとなると、彼らの居場所がなくなるわけです。メンバーにも「メジャーデビューの話、断ったよ」と事後報告したら、「ふーん、そうなんだ」と言っていました。

ーー2009年に発売された「女々しくて」が年月をかけて2012年に大ヒットし、同年からNHK紅白歌合戦に4年連続出場されましたが、当時の心境は。

曲が流行っているのは素直にうれしかったんですが、それと同時に、生活がものすごく不便になったんです。ブレイクするとそのぶん注目されるので、プライバシーの侵害や中傷も一気に増えて、いやなことだらけでした。振り返ると、敏感すぎたかなといまは思いますが、当時はちょっと参っていましたね。

あと、ヒットすることで「一発屋って言われるんじゃないか」「もっといいヒット曲を作らなきゃ」と考えながら作曲をしていましたが、「女々しくてを超えない⋯⋯」とずっと思っていて。全然、安心できませんでした。

新作は「かしこまって聴いてほしくない」

ananweb 編集部

ーー2020年8月30日に、ファンの方からのリクエストによって選曲された、鬼龍院さんのソロカバーCD『うたってきりりんぱ』をリリースされます。このタイトルの意味から教えてください。

タイトルは、聴く人の姿勢を決めるじゃないですか。今回、リクエストされた曲をカバーして歌うので、かしこまって聴いてほしくなかったんです。ここでたとえば、鬼龍院翔のカバーCDが英語の大文字でカッコよく、『VOICE』とかだったら、なんか肩に力が入りそうで(笑)。

検索していたら、子ども向け番組の『うたってオドロンパ』(1995年から2006年まで放送されていたNHKの子ども向け音楽番組)という文字を見つけて、それをもじりました。『うたってきりりんぱ』という、このひらがなの感じがちょうどいいかなと。

ーー選曲については、いかがでしたか。

リクエストされた選曲については、ファンの方に募る前から「僕の感情で選びません」と、「ランキング上位のものから、許可が出たものからカバーしていきます」と説明していたんです。結果として、決定された選曲を見て、失礼かもしれませんが「ベタだなー」と思いましたね(笑)。

たとえば、僕もファンである、中島みゆきさんの名曲「糸」が今回選ばれました。中島さんのファンからしたら、「糸」はもうメディアでいっぱい使われているからもういいよ、というテンションになってしまうぐらいのメガヒット曲なんですよね。この曲ももちろんいい曲ですが、もっとほかにもいい曲あるよって。ゴールデンボンバーのファンがよく「女々しくて」以外もいい曲あるよって言う感覚に似ているんですが(笑)。だから、ファンの方からしたら「糸」を選ばれると、ベタだな〜と(笑)。

ーーほかにも、鬼龍院さんが中学生の頃からお好きだったヴィジュアル系バンド・MALICE MIZERの元ボーカルでもあり、現在は親交が深いGACKTさんの曲「Vanilla」も選曲されています。カバーするのは、緊張したのでは。

確かに「Vanilla」だけは、「この機会に歌っていいんだろうか?」と思いました。でも、リクエストで上位に入ったのに歌わないのはファンへの嘘になるので、上位に入って許可がおりたからには、やらないという選択肢はありませんでした。

今回のアルバムは制作期間が短いんですが、この曲については「もっと時間をかけてじっくりやりたかった」という気持ちが強いですね。僕はもともと物心ついたときから、GACKTさんのボーカルをまねて生きてきたんですよ。

でも、近年はGACKTさんの歌声をまねできなくなってきていて。それはたぶん、GACKTさんのまねをして歌を歌ってきた期間よりも、自分の歌を歌って活動してきた期間が長くなってきたことが、原因だと思うんです。

以前のGACKTさんの歌声のモノマネが得意だと自負していたときなら「うまく似せなきゃ」と思ったはずですが、つい先日レコーディングしたときも「自分らしくカバーさせてもらおう」という気持ちで歌えたので、いい意味で、いまは気負わずカバーできるタイミングだったと思います。

ーーPRINCESS PRINCESSさんの「M」や西城秀樹さんの「傷だらけのローラ」があるかと思えば、King Gnuさんの「白日」、Official髭男dismさんの「Pretender」など、新旧の楽曲が揃いましたね。

これは単純に、ファンクラブ会員の方の年齢の振り幅が広いということですね。選曲するには、ひとり一票しか入れられないようになっていました。でもたぶん、King Gnuさんの「白日」に投票した人は、PRINCESS PRINCESSさんの「M」に投票しようか迷わなかったと思うんですよね。

僕らがライブハウスだけで活動していたときよりも、テレビなどに出させていただくようになってからは、幅広い年齢層の方に知ってもらえるようになりました。

ーーバンドの曲はいつも全作詞作曲を手掛けていらっしゃいますが、カバーとなると、また心持ちは違いますか。

そうですね。僕も作詞作曲している身からして、作詞した方や作曲した方も聴くかもしれないと思って、変なアレンジはせずに歌います。とくにメロディのアレンジはしないんです、していいのは作曲した人だけだと思うから、忠実に歌わなきゃなと。敬意も込めて、なるべくだいそれたことはしないようにしています。ただ、歌声の暑苦しさはどうにもなりません(笑)。

「健康に気をつけて、定期的にライブ活動したい」

ananweb 編集部

ーーお話は変わりますが、鬼龍院さんは中学時代から音楽とお笑いが好きで、吉本興業の養成所であるNSC東京に在籍していた時期があったそうですね。

高校を卒業してから、NSCに行きました。10歳ぐらいのときに、母さんがテレビに出ている芸人さんを観ながら「この人たち、しゃべっているだけでお金がもらえていいわね」と言っていて、「じゃあ、お笑いっていい職業だな」と思い始めたのがきっかけです。根本的に、人を笑わせたり、ふざけたりするのも好きで、「お笑い芸人になりたい」と思ったんですね。

お笑いブームで『ボキャブラ天国』(1992年から99年にフジテレビ系列で放送されていたお笑い番組)が流行っていて、お笑い芸人が輝かしいスターのように描かれていて。そして、思春期は音楽を好きになるわけなんですが、「自分はキャーキャー言われるような人間ではない、だからミュージシャンなんてバカ言っちゃいけないよ」という自己評価だったので、音楽も好きだったんですが、その道はないと思っていました。

ーーお笑い芸人の、しずるの池田一真さんとコンビを組まれていたとか。

組んでいましたね。ただ、僕が芸人をしていた期間が、NSCにいた1年間だけの活動なんです。やることといえば、ネタ作りをして、ネタ見せの授業のときにネタ見せをして。だから、在学中の人が出るステージに出たぐらいで、お客さんの前でネタをしたことは1度もないんですよ。

ーーネタはどちらが書かれていたんですか。

どっちもなんですよ、それがよくなかったんじゃないかと思うんです(笑)。いまもメアドぐらいは知っていますが、連絡しないですね。池田くんはかなり変わった人なので、コンビを組んでいたと聞いたほかの芸人の方に「よくあの人と組んでいたね」と驚かれます(笑)。

ーーところで、今年予定されていた全国ツアーが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、2021年に変更されましたね。先の予定が立てづらい状況ですが、鬼龍院さん個人として、バンドとして、今後の抱負があればお聞かせください。

僕自身の抱負は、「メンバーよりも明るい人間になる」ということですね(笑)。ゴールデンボンバーとしては、「普通にライブをすること」それだけで、十分です。いま、億万長者になりてー! とか言っていたら、いやじゃないですか(笑)。ステージに立つみんなが「普通にライブさせてください」って思っていると思うんです。もう世界の望みですね。

それを成し遂げるためには、健康であることも大事。全然運動もしていませんが、心身ともに健康を保っていれば、いつか必ずライブはできますので。いまの目標は「健康に気をつけること」、長期的な目標としては「定期的にライブ活動をすること」につきますね。

取材後記

ゴールデンボンバーのフロントマンとして、ソロアーティストとして、音楽活動はもとより、バラエティ番組など多岐にわたり活躍されている鬼龍院翔さん。お話しさせていただいていると、ジャンルレスにさまざまなシーンに対応できるのも、頭の回転がはやい方だからだと実感。そんな鬼龍院さんのカバーアルバムは、聴けば聴くほど歌唱力の高さに驚かされましたし、とても楽しくなりました。みなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。

鬼龍院翔 PROFILE

ananweb 編集部

1984年6月20日、東京都浅草生まれ。鬼龍院翔(Vo)、喜矢武(きゃん)豊(G)、歌広場淳(B)、樽美酒研二(Dr)の4人からなるヴィジュアル系エアーバンド・ゴールデンボンバーの全楽曲の作詞作曲を手掛ける。ギター、ベース、ドラム、ピアノ、バイオリンなど一通りの楽器は演奏でき、ライブの演出なども担当。ソロ活動や他アーティストへの楽曲提供なども行っている。愛称は「キリショー」「キリちゃん」など。

ゴールデンボンバーは、2004年、鬼龍院と喜矢武豊を中心に結成。略称は「金爆(きんばく)」。インパクトのある歌詞や耳に残る楽曲、鬼龍院以外は楽器を弾かずに披露するパフォーマンスなどで注目を集める。2009年に発売されたシングル「女々しくて」が年月をかけて2012年に大ヒット。同年からNHK紅白歌合戦に4年連続出場。2013年にはカラオケランキング51週連続1位獲得。2014年、第56回日本レコード大賞作曲賞受賞。

2019年4月1日発表の新元号に合わせ、「新元号ソング」をどこよりも早く制作、発表、発売すべく、制作の模様を生配信。同年4月よりゴールデンボンバー全国ツアーを開催し、11月には、沖ノ島という無人島で無観客ライブを行い、その様子を全国へ生配信した。12月、アルバム『もう紅白に出してくれない』をリリース。

2020年、3月から7月まで予定していた全国ツアー2020「楽器を弾いたらサヨウナラ」 を2021年に延期し、開催予定。8月30日、鬼龍院翔のリクエストカバーCD『うたってきりりんぱ』をリリース。

Information

New Release
『うたってきりりんぱ』

ananweb 編集部

(収録曲)
01. サウダージ(ポルノグラフィティ)
02. Vanilla(GACKT)
03. 楓(スピッツ)
04. 糸(中島みゆき)
05. 白日(King Gnu)
06. Pretender(Official髭男dism)
07. 妄想日記(シド)
08. 最後の雨(中西保志)
09. M(PRINCESS PRINCESS)
10. 傷だらけのローラ(西城秀樹)

2020年8月30日発売
(CDのみ)
¥1818(税別)
EAZZ-5025
*通販限定発売。なくなり次第終了。

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