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『MUCA展』バンクシー、カウズらアーバン・アートの「アベンジャーズ」が京都に大集合、本場ドイツの館長が作家10名を紹介

SPICE

『MUCA展 ICONS of Urban Art 〜バンクシーからカウズまで〜』 撮影=久保田瑛理

『MUCA(ムカ)展 ICONS of Urban Art 〜バンクシーからカウズまで〜』
2023.10.20(Fri)〜2024.1.8(Mon) 京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ

2023年10月20日(金)から2024年1月8日(月・祝)まで、京都市京セラ美術館 新館 東山キューブにて『MUCA展 ICONS of Urban Art 〜バンクシーからカウズまで〜』が開催中だ。ヨーロッパ最大級のアーバン・アート作品を所蔵する美術館「MUCA(ムカ)」のコレクション60点以上が来日。内覧会に参加していたFM802 DJの大抜卓人が「ストリート・アートの「アベンジャーズ」が大集合したようだ」と表現した、バンクシーやカウズら10名の作家の作品が展示されている。日本でも人気の高いバンクシーの初上陸作品も観られるとあって、注目度は高い。現代を生きる私たちに突き刺さるアーバン・アートに触れることができる、非常に貴重な機会。ぜひ見逃さないようにしてほしい。

見て楽しく、考えて楽しい。それがアーバン・アート

MUCAことMuseum of Urban and Contemporary Artは、2016年にクリスチャン・ウッツとステファニー・ウッツが開館した、ドイツで初めてのアーバン・アートと現代アートに特化した美術館。コレクションは1200点以上(2023年11月現在)に及ぶ。

そしてアーバン・アートとは、壁や建物、道路や橋など公共の場所に描かれるアートのこと。グラフィティ・アート、ストリート・アート、ポスター・アート、ステンシル・アート、モザイク・アートなどが挙げられる。これらは都市の景観を変え、時に政治的、社会的なメッセージを伝え、そこで生活する人々の心に訴えかける。

MUCAのクリスチャン・ウッツ館長

90周年を迎えた京都市京セラ美術館の歴史でも、アーバン・アートの展示は初めてのことだ。プレス内覧会に出席していたMUCAのクリスチャン・ウッツ館長は「3年前にリニューアルした新館で現代アートが展示されるということは、非常に意義がある」と述べ、東山キューブから望める中庭についても「素晴らしい環境」だと絶賛。「現在のアートを紹介する場所に非常に適していると思っています。アーバン・アートが素晴らしいこと、コンテンポラリー・アートであることを示す良い機会になるよう願います」と語った。

ナビゲーターは木村昴

今回はウッツ館長によるギャラリーツアーの内容とともに作家を紹介するが、音声ガイドもオススメする。担当した声優の木村昴は大のストリート・アート好き。愛と情熱が込められたナレーションを、スマホアプリで楽しむことができる(480円)。

バンクシー(Banksy)

バンクシー「弾痕の胸像」 2006

展示はバンクシーからスタートする。1974年生まれ、イギリス・ブリストル出身のバンクシーは、世界で最も有名と言っても過言ではないストリート・アーティスト。今もなお現役で、世界各地の街の壁などにステンシルアートを発表しているが、その正体は不明。戦争や資本主義、支配層による権力の乱用に反対するメッセージが多く、人々に痛烈な印象を残している。同展では初来日の大型彫刻作品「アリエル」をはじめ、「少女と風船」などのオリジナル作品17点が出展された。

バンクシー「少女と風船」 2004、「間違った戦争」 2004

会場に足を踏み入れると、一番最初に目に飛び込んでくるのが彫刻作品「弾痕の胸像」。ダビデ像のような胸像の額に銃弾が撃ち込まれている。ややショッキングで、のっけから大インパクトを与える作品だ。ウッツ館長は「ストリート・アートがコンテンポラリー・アートに昇華された代表作」と述べる。この作品が最初に展示されているウッツ館長の想いと、バンクシーのメッセージが交わっているように思われた。

なお、この胸像の右手に見られる囲いに並べられた木箱にも秘密の仕掛けがあるので、ぜひ注目してほしい。

バンクシー「その椅子使ってますか?」 2005

アメリカの画家であるエドワード・ホッパーの作品「ナイトホークス」をオマージュした「その椅子使ってますか?」は「シカゴで描かれた、バンクシー最大の油彩画。右端にはバンクシーの署名が入っている。普段はステンシルだが、今作は私が知る限り唯一の手書きの署名。この作品はいかにストリート・アートがコンテンポラリー・アートと繋ぐものであるかを示している」(ウッツ館長、以下同)と語った。

バンクシー「アリエル」 2017

部屋の中央には『リトル・マーメイド』のプリンセスに似た、大きな立体作品が鎮座する。この「アリエル」はイギリスにある荒廃した海辺のリゾート地を活かして、バンクシーがプロデュースしたアミューズメントパーク「ディズマランド」に展示されたもの。子どもにはふさわしくないというこのテーマパークだったが、某夢の国を皮肉ったバンクシーの思惑がこの作品からもひしひしと伝わってくるようだ。

バリー・マッギー(Barry McGee)

バリー・マッギー 全て「無題」

1966年生まれのバリー・マッギーは、ストリート・アーティストの第一人者。独自のフォントとパターンを定義したプリントアーティストとして知られる人物だ。彼が問うのは、都市で生活する人々が現代において日々目にする広告で、感覚過多になっていること。

バリー・マッギー 全て「無題」

木や金属などのリサイクル素材と、キャンバス、紙、絵具を組み合わせて作られた作品からはデザイン性も感じられる。「巧妙に照明を当ててくださっていることで作品を盛り上げている。おかげでバリー・マッギーのプロフェッショナルがよくわかる」と京都市京セラ美術館に感謝していた。

スウーン(Swoon)

スウーン「アイス・クイーン」2011

同展で唯一の女性であるスウーンは、1977年アメリカ・コネチカット州生まれの作家。学生時代に学んだ古典美術史やおとぎ話、民話からヒントを得て作られた作品は、貼り絵や切り絵などで表現されている。彼女は、人間は自分の経験を体に記憶していると信じており、肖像画はこの経験の可視化を目的としている。繊細さが感じられる作品なので、じっくりと観てほしい。

ヴィルズ(VHILS)

ヴィルズ「消失シリーズ#14」2019、「マッタ」 2018

ポルトガル・リスボンを拠点に活動するヴィルズは、廃墟の壁や扉を使って作品を作る。初期に約20〜40mの建物に爆発物を仕掛け、表面のレンガや壁が剥がれ落ちた部分から顔のイメージを創り出して作品を完成させた。「ストリート・アートがいかにアートとして確立するかを語るうえで、リソースもバジェットも必要であるということを物語る人物でもある」と述べた。なお、スマホのカメラを通して作品を観ると、陰影がはっきりしてより立体的に見える、とのこと(実際にそうだった)。ぜひ試してみてほしい。

シェパード・フェアリー(Shepard Fairey)

シェパード・フェアリー

オバマ元大統領の選挙活動の際、有名になったシェパード・フェアリー。彼はニール・ヤングやインディーズロックバンドなど、様々なミュージシャンのアルバムのアートワークも数多く手掛けている。自分の作品を公共の場で公開することで、政治的な批評を身近な方法で実現した。ウッツ館長は「個人的に好き」と述べて「LPのジャケットを重ねたものにアートを施していく手法。彼は新聞や航空券などの身近な材料を使い、アートとして作品を完成させていった。つまり彼は、古いものから新しいものを創造した。ストリート・アートはアイデアなどを含めて、落書きのようで子供じみていると思われるかもしれませんが、彼は実際にコンテンポラリー・アートに昇華して作品を完成させた」と評価した。

インベーダー(Invader)

インベーダー「スペース・ワン」2013

材料をコンセプトにした作家としては、インベーダーもそうだ。1969年にフランス・パリで生まれたインベーダーは、1970〜80年代のビデオゲームに影響を受け、 世界中の都市の壁にピクセルアートを制作している。バンクシーと同様に匿名で活動をしており「スペース・インベーダー」の名で親しまれている。正体を家族にも明かしていなかったため、家の裏庭に大量のタイルが積み重ねてあることから、彼の母は「息子の仕事はタイル工ではないか」と感じていたそうだ。

インベーダー「ルービックに捕まったシド・ヴィシャス」 2007

代表作「ルービックに捕まったシド・ヴィシャス」については、作品を制作するにあたり、足らなかった分は資金集めをしてキューブを仕入れたという逸話を紹介。「お金がかかるものではなく、いかに有効的にアートを創造するかという観点で材料探しをする。マテリアルからアイデアを、またはアイデアからマテリアルを得る。そういう形で表現を駆使するストリート・アーティストだ」と述べた。

オス・ジェメオス(Os Gemeos)

オス・ジェメオス「リーナ」 2010

ブラジルの双子のアーティストあるオス・ジェメオスは、作家名もポルトガル語で「双子」という意味。スプレーで大きなビルの壁に作品を描いたり、観客が自由に作品を行き来して作品が完成するインスタレーションなどを手掛けている。彼らの制作方法は特殊で「2人は同時に制作を始めるが、お互い全然喋らない。それは双方の心が繋がっているのだと思いますが、それを見ると面白い。最終的にはこのようなひとつの作品が、突然マジックのように出来上がる。そのスピードに驚かされる」と、目を輝かせた。

ジェイアール(JR)

ジェイアール「都市の皺「ミスター・マ」上海 中国 2010」 2010、「28ミリメートルある世代の肖像強盗JRから見たラジ・リ レボスケ モンフェルメイユ 2004」 2011

フランスの作家・ジェイアールはドキュメンタリーで有名な写真家で、映画監督としても活動している。17歳の時にカメラを拾ったことがキッカケで写真を使った制作を開始した。代表作のひとつである「28ミリメートル、ある世代の肖像、強盗、JRから見たラジ・リ、レボスケ モンフェルメイユ 2004」は、一見こちらに銃を向けられているようでハッとする。しかしこの男性が持っているものは、実はカメラ。「時にカメラは武器と同じぐらいの力を持つ」ことを表している。また「都市の皺「ミスター・マ」上海 中国 2010」に見られるポートレートシリーズは世界中で行われているプロジェクトで、365日のうち364日は旅をしながら作品を作っているという。

リチャード・ハンブルトン(Richard Hambleton)

リチャード・ハンブルトン

ニューヨークのストリート・アートの名付け親で「ゴッド・ファーザー」と呼ばれている、リチャード・ハンブルトン。80年代はアンディ・ウォーホルやバスキア、キース・ヘリングらと共に活動し、一時はバスキアよりも高額で作品が販売された。しかしもてはやされた人生ではなく、その後脚光をあびることなく地方に住み、2017年に65歳でその生涯を終えた。それはウッツ館長が彼にインタビューをしようとした直前のことだったという。

リチャード・ハンブルトン「シャドウマン」 2014

死後しばらくは忘れられた存在だったが、5年前にドイツでMUCAが所蔵する60点のコレクションの作品を展示した。ニューヨークの路地や庭に、人々を驚かせるために描いた黒い人物の影を描いた作品は「シャドウマン」と呼ばれ、彼のキャリアのスタートだったという。作品からほとばしるエネルギーを感じてみてほしい。

カウズ(KAWS)

カウズ

同展覧会の最後を飾るのは、一時東京に住んでいたこともあり日本の若者にも人気のアーティストのカウズ。既存のキャラクターを再解釈してリデザインするなど、アートと商業の境界を曖昧にするような作品で知られている。特にバツ印の目が特徴的なコンパニオンシリーズは人気が高い。

世界中の広告やポスターに絵を描くが、長きにわたり認識されていなかったそうで、見かけたらラッキーだとウッツ館長は語る。立体作品の「4フィートのコンパニオン(解剖されたブラウン版)」はインパクト大。半分は体の中の臓器が見えている。大きなサイズの作品はニューヨークや香港で観ることができる。

カウズ「カウズ・ブロンズ・エディション#1-12」2023

小さなコンパニオンで言うと、2023年のはじめに作った最新作「カウズ・ブロンズ・エディション #1 -12」。ウッツ館長は「彼が表現しようとしたのは、人が持つ様々な感情。例えば顔に手を当てているものは、絶望しているのか、疲れているのか、または集中しているのか、どのようにも取れます。必ず人生のどこかの時点でこれらコンパニオンのような状態になった経験が、皆さんにもあると思います」と、自身の経験をふまえて作品を自由に解釈してほしいと述べた。

展示されている10名の作家の作品は、どれも直感的に楽しめるものばかり。そこから一歩踏み込んで、私たちと同じ時を生きる、新世代アーティストからのメッセージを受け取ってほしい。展覧会自体は所要時間1時間ほどで観ることができるので、リピーターの方も2度、3度と足を運んでほしいと思う。しかも会場内では写真、動画撮影OK(フラッシュはNG)。自分のスマホに思い出と衝撃を残すことができる。

『MUCA展 ICONS of Urban Art 〜バンクシーからカウズまで〜』は来年1月8日(月・祝)まで、京都市京セラ美術館 新館東山キューブにて開催。来年3月からは東京・森アーツセンターギャラリーにも巡回する。

取材・文・撮影=久保田瑛理

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