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健康長寿の秘けつは血管にあり ~コレステロール値・中性脂肪値を見直そう【別冊NHKきょうの健康】

NHK出版デジタルマガジン

健康長寿の秘けつは血管にあり ~コレステロール値・中性脂肪値を見直そう【別冊NHKきょうの健康】

日本で現在行われているような健診制度は世界的にも珍しく、その点において日本人はとても恵まれているといえます。健診でがんなどの病気が発見されることは心配しても、血液中のコレステロールや中性脂肪の数値については「基準値を外れても症状がないし、これならまだ大丈夫だろう」と高をくくる人が少なくありません。しかし、基準値を外れた状態、即ち脂質異常症を放っておくと、心筋梗塞や脳梗塞など深刻な病気を引き起こすおそれがあります。

『別冊NHKきょうの健康 コレステロール・中性脂肪 放っておくと「突然死⁉」脂質異常症を改善するために』(監修:山下静也・りんくう総合医療センター理事長、長井直子・大阪大学医学部附属病院栄養マネジメント部栄養管理室長、佐藤真治・帝京大学教授)から、「脂質異常症のウソ・ホント」を抜粋してご紹介します。

脂質異常症のウソ・ホント

根拠のない謝った情報に惑わされないように気をつけましょう!

ウソ? ホント?

疑いのある人も含めると、50歳以上の2人に1人が「脂質異常症」である

答え:ホント

食生活の欧米化が大きく影響している

 一昔前の日本では、脂質異常症と診断される人はそれほど多くありませんでした。しかし、1960年代あたりから総コレステロールの平均値が上昇を続け、現在ではアメリカに並ぶどころか、上回るほどの値を示しています。この背景には、日常の食卓に肉料理が増えるなど、食生活の欧米化があると考えられています。
 その結果、はっきりと脂質異常症と診断を受けていなくても、検査数値が基準値を超えているような「疑いのある人(境界域の人)」を含めると、今や50歳以上の日本人の2人に1人が脂質異常症であるといわれています。生活習慣の乱れを主な原因とする脂質異常症が疑われる人の割合は、若い世代では少ないのですが、中高年に向けて増える傾向にあります。
 男性の場合は、30歳代で急激に増え始め、40歳代で約半数の人が「疑いのある人」に該当します。一方、女性の場合は、閉経を迎える50歳代ごろを境に増える傾向がみられます。これには、女性ホルモンの分泌の変化が関係しています(注:本誌参照)。

グラフを見ると男性は30歳代から、女性は50歳代から増えているのがわかります。

ウソ? ホント?

LDLコレステロール値は、少し高いくらいのほうが健康的だ

答え:ウソ

誤った情報には注意が必要

 誤った情報が、あたかも真実であるかのように広まってしまうことがあります。「LDLコレステロール値が低いと、がんや脳卒中になりやすい」「LDLコレステロール値は少し高いくらいがよい」などがその例です。これらは限定された調査対象や独断によって導き出された誤った情報です。
「LDLコレステロール値が高くても大丈夫」と、自分に都合のよい情報だけを信じていると、動脈硬化が進行し、思わぬ結果を招くことになるかもしれません。
 LDLコレステロール値と心筋梗塞の発症リスクを調べた研究では、LDLコレステロール値が高いほど、心筋梗塞を発症しやすくなることがわかっています(注:本誌参照)。誤った情報に惑わされず、正しい情報としっかり向き合うことが大切です。

LDLコレステロール値を下げるとリスクも下がる
 アメリカと日本における研究でも、LDLコレステロール値と動脈硬化によって起こる病気との相関関係ははっきりしています。LDLコレステロール値を18%下げると冠動脈疾患が33%も減少するなど、多くのことが明らかになっています(注:脂質異常症患者7832人を対象に行われた日本発の大規模臨床試験<MEGA Study>より)。
 LDLコレステロール値が高い場合、そのままにするのはよくありません。リスクを下げるためにも、基準値を目標にして早めに生活改善に取り組むことが大切です。

ウソ? ホント?

女性は生涯にわたって脂質異常症になりにくい

答え:ウソ

女性ホルモンの分泌量が減る更年期以降は要注意

 女性ホルモン(エストロゲン)には、LDLコレステロール値や中性脂肪値を下げる作用があります。女性はこのエストロゲンによって動脈硬化から守られています。しかし、更年期以降はエストロゲンの分泌量が減少するため、脂質異常症を発症する人が急激に増えます。一方、男性は30歳代からLDLコレステロール値や中性脂肪値が高くなり、動脈硬化性疾患も増え始めます。暴飲暴食、働き過ぎなど、要因となる生活習慣に注意する必要があります。

ウソ? ホント?

食事・運動・生活習慣で数値は改善できる

答え:ホント

実現可能な目標を立てて取り組もう

 食事や運動をはじめとする生活習慣の改善は、LDLコレステロール値や中性脂肪値を下げる効果が期待できます。開始してから、早ければ1か月ほどで、通常は3か月くらいで数値が改善し始めます。なかには、生活改善によって服用していた治療薬が不要になる人もいます。
 改善すべき生活習慣がたくさんある人は、一度に行うのは難しいかもしれません。挫折しないためにも、実現可能な目標を立てて、できるところから始めていきましょう。

食事……エネルギーを過剰摂取しないように食事量に注意し、甘い物や動物性脂肪を控える。
節酒……飲酒量は適量を守る。脂っこいおつまみにも注意する。
運動……ウォーキングなどの有酸素運動と筋トレを習慣づけ、生活のなかで活動量を増やす。
禁煙……喫煙の回数や本数を徐々に減らし、最終的にやめる。
体重管理……肥満がある人は、3か月で現在の体重の3~5%を目標に体重を落とす。

本誌では、食事についての具体的な方法やアドバイスのほか、中性脂肪値・LDLコレステロール値を下げるための効果的な運動、生活改善で効果がみられない場合や動脈硬化症疾患のリスクが高い場合に始める薬物療法について、各分野の専門家が詳しく紹介しています。

本記事の監修:山下静也(やました・しずや)

1979年大阪大学医学部卒業。大阪大学大学院総合地域医療学寄附講座教授を経て現職。専門は脂質異常症、動脈硬化症、肥満症。

◆『別冊NHKきょうの健康 コレステロール・中性脂肪 放っておくと「突然死⁉」 脂質異常症を改善するために』
◆本記事の監修 山下静也
◆イラスト 秋田綾子

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