「ウミヘビ」は爬虫類にも魚類にも存在する 毒を持つのはどちら?
皆さんは「ウミヘビ」と聞いてどんな生き物を想像しますか?「海に住んでいて、細長い……あれ?魚類と爬虫類、どっちだっけ!?」そう混乱してしまう人も多いのではないでしょうか。それもそのはず、「ウミヘビ」は両方の分類に存在する名前なのです。この記事では、そんなウミヘビについて、魚類と爬虫類に分けて解説していきます。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
鱗を持たない魚類のウミヘビ
魚類のウミヘビはウナギ目ウミヘビ科に属する生き物の総称。その細長い体系の通り、ウナギやアナゴ、ウツボなどと同じグループに属しています。
ウミヘビ科は英語で”Ophichthidae”と呼ばれており、この名前は日本語の「ウミヘビ」と同じように、ギリシャ語のophis(蛇)とichthys(魚)に由来します。
熱帯から温帯の広い地域に生息しており、海岸の浅瀬や800m未満の深海、淡水域にまで広く生息しています。ヒレを全く持たない種から、丸く大きな胸ビレ、目立たない背ビレを持つ種など、さまざまな体型をしています。
例えば、ホタテウミヘビは背びれが帆を立てる様子が名前の由来にもなっています。鱗は退化しており目立たず、体表はつるっとしています。爬虫類のウミヘビには、「ヘビ」らしい鱗が目立つため、両者の大きな違いはこの部分でしょう。
爬虫類のウミヘビと違い毒を持ちませんが、鋭い歯を持っている種もいるため注意が必要です。
爬虫類のウミヘビは海に適応した「ヘビ」
爬虫類であるヘビやトカゲの仲間、有隣目に属するウミヘビ科の生き物たちは爬虫類。名前の通り海に住むことに適応したヘビです。熱帯、亜熱帯域に分布しており、日本近海でも数種類の爬虫類のウミヘビを見ることができます。
ウミヘビは今からおよそ500~1000万年前に、陸から海へ生息地を変えたコブラの仲間(ヘビ、海へ行く ~ウミヘビに探る生物進化~-ふじのくに地球環境史ミュージアム)だといわれています。このことから「海のコブラ」とも呼ばれています。
もちろん肺呼吸なので、水中に潜り続けることはできません。そのため、定期的に海水面にあがって呼吸をする必要があります。
全身がヘビと同じような硬い鱗に覆われており、ヒレはありません。尾が平たく、丸いオール型になっている種が多く見られます。魚類のウミヘビでは、ウツボなどのように尾の先端は尖っています。
ヘビが地上を進むのに利用する、普通の鱗よりも硬い「腹板」という部分が残っている種も。一方、完全に水中で生活するならばこの部分は必要なく、退化しており陸を這うことができない種もいます。
私たちが爬虫類のヘビに持つイメージとして「毒」があります。このウミヘビたちも、陸生のヘビ同様牙に毒を持っている種が大半です。毒牙に強い毒を持っており、不自由な海中で咬まれると身動きが取れずに危険です。
海中だけでなく海岸にいる場合もありますから、いずれの場所でもウミヘビには絶対に近付かないようにしましょう。
沖縄ではエラブウミヘビをイラブーと呼び、食用として親しまれています。
イラブーは琉球王国の時代から親しまれてきました。燻製や干物に加工したイラブーを時間をかけて煮込んだイラブー汁は、琉球王国の宮廷料理だった歴史があります。
「ウミヘビ」の見分け方について
名前だけではわかりづらい「ウミヘビ」の違いを説明してきました。科という大きなグループの総称であるため、細かい部分は種によって違いが現れてしまいますが、鱗やヒレ、毒についてなど、お互いの違いは理解できたのではないでしょうか。
どちらも鋭い歯や毒がある危険な生き物なので、特徴を良く知って上手く関わることが大切です。
(サカナト編集部)