バーデン(スイス)を訪ねて~作家・秋山秀一「旅の記憶(24)」
訪れた国や地域90以上、海外への旅は221回。
旅行作家の秋山秀一さんが、自身で撮影した写真とともに、世界の街を歩いた思い出をつづります。
秋山秀一さん 旅行作家、元東京成徳大学教授、NHK文化センター講師。日本エッセイスト・クラブ常務理事、日本旅行作家協会会員、日本外国特派員協会会員。『鎌ケ谷 まち歩きの楽しみ』『世界観光事情 まち歩きの楽しみ』『ウクライナとモルドバ』など著書多数。鎌ケ谷市在住。鎌ケ谷市国際交流協会(KIFA)会長、鎌ケ谷市都市計画審議会会長。
文豪ヘッセも宿泊した歴史あるホテルへ
ドイツ語で入浴を意味する「バーデン」が、そのまま街の名前になった温泉地がある。
スイス東部、チューリヒからリマト川に沿って西へ約16km下った所に位置する、その名が示す通り、温泉の街だ。
バーデンを代表する歴史あるホテル、ホテル・ベーレナホフに泊まった。
ここにはヘルマン・ヘッセも泊まったことがあり、泊まった部屋はヘルマン・ヘッセルームと名付けられている。
宿泊者の多くは年配者2、3週間滞在する。
室内の温泉プールと隣り合って、屋外にも温泉プールがある。
手を温め、飲用にも。街に溶け込む温泉
温泉街を歩くと、川のそばにガラスの太い筒があった。
その中を勢いよく温泉が上がっていくのが見える。
水飲み場のように見えた場所から出ていたのは、実は水ではなく温泉。
コップも置いてあり、誰でも自由に温泉を飲むことができる。
で、一杯、飲んだ。
隣にあるのは、温泉に手を漬けて温めるためのもの。
女性がやって来て、椅子に腰掛け、腕まくりをして温泉の中に両手を入れた。
バーデンに来て3週間、毎日ここで腕を温めている、とのこと。
ホテル・ベーレナホフの本館に泊まる客は3食付きが基本。
食堂はシャンデリアのあるゆったりとした大ホール。
席は決められており、テーブルの上には当日のメニューが置いてある。
夕食時には、きちんとした身なりをして席に着く。(文・写真/秋山秀一)