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【私、この店、大好きなんです】白と黒、2つの出汁のおでんを楽しめる大人の酒場(福岡市・警固)

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にいの おでん

※福岡市在住の食べることが大好きな50人が、自分が愛してやまない店について書いている書籍「私、この店、大好きなんです。 3」(聞平堂発行)からとっておきの1軒を転載しています。掲載している料理や店舗内容は、書籍掲載時のものです。

 身近な食べ物ながら至福のおでんが警固本通りを温める。タネは竹輪を除き全て自家製。ごくごく飲めるのが信条と言いきる出汁は、食材に合わせて日々配合を変え、ギリギリの塩で素材を活かす。おでん以外の料理も塩梅よく「何気ない竹輪の磯辺揚げなのに」と箸が止まらぬ私に「四万十川の川海苔なんですよ。形成する時に出る端っこ。風味が全然違うでしょ」とうまさに抜かりないのも納得な大将は、西麻布の名店「分とく山」で研鑽を積んだ方。高校在学中から休みには修業に通い「よくそんなご縁が持てたね」と驚くと「ラブレターを書きまくったんです」と本気印で、会ったこともないにいの少年が目に浮かぶ。だって料理の話をする時の大将、和犬みたいに真っ直ぐな目をしてるんだもの。きっとこの真摯さに野崎総料理長もやられたのだろう。

 黒板には極み出汁の白と少し甘い黒、2種類の出汁のタネ名がびっしり。竹輪だけ自家製じゃないのは焼くのに棒と設備がいるから。「僕が作るのが最高にうまい。でも竹輪だけはそれ以上にうまいのがあって」と言いきる潔さが気持ちよし。定番から変わり種まで何十と並ぶお品書きに、お腹具合も忘れて「あれもこれも」と欲張るまでがひとセット。しゃきっと出汁を含む春菊、噛むとじゅんわり風味ふんわりなおくらはんぺん、味染み黒豆腐の優しい甘さ。口福ってこういうことだよなぁとグビグビ飲めるお出汁と酒を片手に、カウンターで健康話、四方山話に花を咲かせて上気する幸せ。
 落ち込んで何も喉を通らなかった或る日、「食べんと元気出らんですよ」なんて湯気の向こうから真っ直ぐな目でお出汁を差し出すものだから、目から汗がぽろぽろ。「料理はお客様をみて各々に塩梅変えてます」って言ってたのに、大将の然り気ないぬくもりにうっかり追い塩しちゃったじゃない。しょっぱいと思ったのは後にも先にもあの日だけ。
 そんな話もいつか思い出に変えてしまう湯気の向こう側へと今宵もふらり。白かな黒かな、両方かな、なんて言いながら。

おでん にいの
福岡市中央区警固2-10-8
092-751-2400

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