ももクロ 玉井詩織[日本武道館ライブレポート]“ミュージカルコンサート”で届けた多彩なパフォーマンス
ももいろクローバーZの玉井詩織が、5月6日(火・休)に日本武道館でソロコンサート<―30th Anniversary―SHIORI TAMAI SOLO CONCERT「Maison de Poupée」>を開催した。
玉井にとって新たな挑戦となった今回のソロコンサートは、東京2020パラリンピック開会式をはじめ演劇やライブなどの演出を手掛けるウォーリー木下が総合演出、ももクロライブの初代音楽監督を務めていた武部聡志が音楽監督を担当。特別なソロコンサートになるに違いないとファンの間でも期待が高まり、チケットはソールドアウトに。GW最終日、武道館にはおよそ8,500人のファンが駆けつけた。
本記事では、オフィシャルレポートをお届けする。
取材&文:ATSUSHI OINUMA
昨年、春に東京と初夏に追加公演として大阪でキャリア初となるソロコンサートを行なった玉井は、その後、各地のフェスにも出演したほか、冬には<Billboard Live Tour>を行なうなど精力的にソロでの音楽活動を展開。今年も先日、<中森明菜 Tribute Concert “明響”>に出演して話題を集めたばかり。ここでは、新たなライブの可能性を示した玉井詩織のソロコンサート<Maison de Poupée>の模様をレポートする。
タイトルの<Maison de Poupée>は、フランス語で“ドールハウス”という意味。武道館のステージには6色の集合住宅がセットとして組まれ、その集合住宅に住む6人の女性の物語を演じていくというミュージカル的なコンサートになっていた。
開演を告げるブザーが鳴り響くと、プロローグは玉井のナレーションでスタート。人生を螺旋階段に例えて、出会いや別れ、さまざまな出来事がくり返されて“いろいろ”な私が存在していると語られると、“⼀夜限りのミュージカルコンサートMaison de Poupée、開幕です”という宣言でライブは幕を開けた。1曲目は今回のライブのために書き下ろされたテーマ曲「Maison de Poupée」。8人のアンサンブルを従えて、ミュージカルの幕開けを飾るように歌って踊り表現する玉井の姿に、黄色のペンライト一色に染まった会場からは大きな歓声が上がる。後半、ステージ上に色々な家具がセットされると、曲の終わりとともに玉井はコートと靴を脱いでベッドの中へ……。
ここからストーリーが本格的に動き出していく。1人目の主人公はAMI。目覚まし時計のベルが鳴り響き、AMIが大きく伸びをしてベッドから起き上がると、6人の分身たち(アンサンブル)が“お誕⽣⽇おめでとう!”“晴れたよ!”“でも今日は予定なし”“寂しい30歳”など次々に話しかけてくる。そして、ソロ曲「日常」へ。まさに、日常の風景の中で迎えた誕生日当日の始まりを描いた形だ。身支度を整えたAMIが部屋から街へくり出すと、アンサンブルとともに傘をステッキのように持ったり、傘を開いたりしながらミュージカル的な振り付けでダンスを展開していく。“今⽇が特別な毎⽇になるように”という歌い終わりの歌詞が印象的に鳴り響くと、次の曲は「宝石」。昔の恋人から誕生日プレゼントにもらった宝石がキーワードだ。雑踏の中、忘れられない昔の恋人の姿を見つけるAMI。付き合っていた当時の2人の様子が回想シーンのように、昔の恋人役の佐藤海音/S(龍宮城)とのペアダンスで描かれていく。そして、再び6人のアンサンブルを従えて「Eyes on me」へ。この曲では、仲間から祝福される誕生日パーティの様子が描かれ、生き生きとした表情で歌って踊る姿や《新しい私のドラマが始まる 自分史上最高のStyleで華麗に生きよう》といった歌詞からは、誕生日を機に気持ちを新たにして前向きに歩んでいくと決めたAMIの強い意思が感じ取れたのではないだろうか。
このように、最初のブロックでは「日常」、「宝石」、「Eyes on me」という玉井のソロ曲3曲を通じて、30歳の誕生日を迎えたAMIの心境の変化や成長を表現。このブロックで今回のライブの演出意図や楽しみ方を理解し、この先登場する主人公により感情移入したり、主人公の気持ちを汲み取ったりできるようになったファンも多かったことだろう。
次のブロックでも、同様に楽曲を通じて2人目の主人公SIHOのストーリーが描かれていく。真夜中に突然、電話のベルが鳴る。それは過去の自分からの電話だった。過去のSIHOは言う。“もしもし、元気? 元気ならいいんだけど、あまり無理はしないでね。そっちは楽しい?”。電話が切れると、ももクロの楽曲「手紙」へ。SIHOは歌いながら机に向かって手紙を書き始める。最後に、その手紙を紙飛行機にして飛ばすと、もう1人のSIHOのもとへと届き、「ベルベットの森」へ。“私は誰かを輝かせていますか?”というメッセージを歌いながら、2人のSIHOが合わせ鏡のようにステージ上で交差しながらパフォーマンスしていくと、続いて新曲「まわるきもち」を初披露。この曲では過去のSIHOが何人も登場。ともに手を取り合って、お互いを⿎舞するように歌い上げていく。楽曲を手掛けたのはMONO NO AWAREの玉置周啓。ポップな曲調に合わせたコミカルなダンスもとても印象的だった。
続いて、3人目の主人公ロックスターのHIROMIはエレキギターを抱えてバンドメンバーの真ん中に登場。このブロックは、昨年のソロコンサートのオープニングでも披露された「HAPPY-END」でスタートした。ここで、武道館の空気が一変。ミュージカル的要素が強かった前半ブロックから、一気にロックバンドのライブの雰囲気へとシフトし、客席からは盛大なコールも沸き起こった。すると、“最後に新曲を聴いてください”というMC(あくまでHIROMIのストーリー上のMC)から、新曲「君に100個⾔いたいことがあんだ」を初披露。ビジョンに歌詞が映し出される中、スタンドマイクに向かい、4人のアンサンブルとともに“アイラビュー”“アイニーヂュー”を表現したキャッチーな振り付けで会場を盛り上げていく。配信されたばかりにも関わらず、コールを覚えて臨んでいたファンも多く、初披露ながら今後のライブ鉄板曲になることを予感させるような盛り上がりを見せていたのがとても印象的だった。忘れらんねえよの柴田隆浩が手掛けたこの曲も「まわるきもち」同様に、意外なミュージシャンからの楽曲提供ということでファンを驚かせたが、どちらの曲も玉井のまた新たな一面、新たな魅力を引き出すことに成功したと言っていいだろう。
大歓声を浴びて新曲が終わると、ステージを降りたHIROMIとマネージャーの楽屋での会話がくり広げられていく。ライブ後にもぎっしり詰まった仕事のスケジュールを伝えるマネージャー。それよりも今日のライブの出来を気にするHIROMI。マネージャーが部屋を出て行くと、思わずHIROMIの弱音が飛び出す。“なんだか疲れちゃった ずっと戦ってきたから キズついてキヅいた今さら……”。まるでロックスターの光と影を表現したかのように、ももクロのナンバー「追憶のファンファーレ」の歌い出しの歌詞をセリフとして語ると、そのまま楽曲の歌唱へと続いていく。ドラマティックな曲の展開に、4人のアンサンブルによるコーラスも加わり、ももクロのライブの時とはまた違った曲の魅力を見せる。《何度だって輝いてみせるさ》という歌詞に乗せて力強くHIROMIの意思を表現していたのが印象的だった。
4人目の主人公はTIRI。ここではまた少し趣が変わったシーンを見せる。都会で同棲中の恋人と別れて部屋を出る……、そんな人生の大きな転換点となる1日を表現。別れ際の男女の会話のやり取りを経て、印象的なピアノのイントロが流れ出すと、玉井が作詞を手掛けた「Sepia」へ。スーツケースを片手に歩きながら歌うTIRIと別れた恋人役の西田至/ITARU(龍宮城)の今回限りの特別なデュエットバージョンとして披露。ステージ後ろのビジョンにセピア色の写真が次々と写し出される中、サビのパートで2人が歌いながらステージ中央ですれ違うところは、まるで映画のワンシーンかのように描かれていた。そして、TIRIが駅に到着して電車に乗ると、ももクロの楽曲「Brand New Day」へと続く。アンサンブルは小道具の椅子を動かしながら、移動する電車の様子を表現。ここでも、玉井のソロ曲とももクロ楽曲との組み合わせで、恋人との別れから新たな旅立ちを決意した女性の心情の変化などを見事に伝えた形だ。
そして、5人目はお人形遊びが好きな小さな女の子MAIのストーリー。両親が共働きのために、毎日家で一人遊びをしているという設定だ。コミカルなBGMに合わせて、積み木遊びやお人形遊びをしているMAIのもとに、大きなぬいぐるみMOMOが現れて、MAIを空想の世界へと誘っていく。このブロックでは、ももクロの楽曲「momo」がMAIの世界観を見事に再現。もともと、「momo」は玉井が歌い出しを担当するももクロのライブでも人気の高い曲だが、今回は玉井がMAIに寄せて歌唱。会場が黄色一色に染まる中、いつもよりも幼く子どもっぽい雰囲気で歌う姿がとても新鮮で印象的だった。さらに、全編英語詞の「Spicy Girl」へと続いていく。この曲ではアンサンブルのメンバーがMAIとまったく同じ衣装で登場し、迷い込んだ鏡の中の世界を表現。さらに、ミラーボールが武道館の天井を照らし出して煌びやかな空間を演出し、今回のブロックの中で最もメルヘンチックでファンタジーなパートとなった。
6人目の主人公は、絵の中の女性RIO。波の音が聴こえてくると、絵の中に描かれていた女性がリアルなRIOに姿を変えて現実世界に飛び出してくる。青のワンピースに麦わら帽子、そして、裸足のRIOは砂浜をゆっくりと歩きながら、中森明菜「スローモーション」のカバーと「マリンブルー」の2曲を続けて披露。今回のソロライブで、「スローモーション」を生で聴きたいと思っていたファンは特に多かったことだろう。歌詞に合わせ、ステージを大きく使って踊るRIOが「スローモーション」を歌い終わると、ひと際大きな拍手が沸き起こる。青一色に染まった会場の景色もとても神秘的だった。
6人の登場人物を演じた後、7人目に登場したのはSHIORI。白のワンピースで登場したSHIORIは最も玉井本人に近い人物として描かれていく。再びテーマ曲「Maison de Poupée」が流れ出すと、プロローグと同じくベッドに横になったシーンに。目覚まし時計のベルが鳴りSHIORIが起き上がると「Another World」で最後のブロックがスタート。30歳の誕⽣⽇の朝が再び始まる。すると、ステージ上にはここまで演じてきたAMI、SIHO、HIROMI、TIRI、MAI、RIOの6人が次々と登場(実は、彼女たちの名前はすべてTAMAI SHIORIのアナグラムとなっていた)。続いて、タイトルコールからソロライブの定番曲「We Stand Alone」へ。お馴染みのサビのクラップで会場に一体感が生まれていく。徐々にではあるが、会場のファンもアンサンブルキャストの一部としてミュージカルに加わったような感覚で、ライブを楽しめるようになっていたようだ。そして、ラストナンバーは「暁」。最後はアンサンブル8人全員がステージに勢揃いして一緒にパフォーマンス。多幸感溢れるミュージカルコンサートのフィナーレとなった。
これまでのソロコンサートの概念を変えるようなシアトリカルなショー。新たなジャンル“ミュージカルコンサート”としてファンを魅了した玉井詩織。本編中は一切MCがなかったため、観ている側にも緊張感が生まれていたが、緊張から解放されたタマノフ(玉井詩織のファンの総称)は盛大な拍手とともに、大きな声でアンコール(しおりんコール)を送っていく。
そして、アンコール1曲目は「涙目のアリス」。イントロが流れた瞬間、会場からは大歓声が沸き起こった。イントロに乗って、パーカー姿の玉井が再びステージに登場。この日初めてハンドマイクで歌う玉井の表情からもリラックスした様子が伝わってくる。この曲も多くのファンがソロコンで必ず聴きたい曲の1つだろう。玉井にとっての最初のソロ曲、今回もアンコールの1曲目というタイミングで大切に披露された形だ。続いて、アンコールラストに披露されたのは「泣くな向⽇葵」。デビュー当初、泣き虫キャラだった玉井も来月30歳を迎える。ライブで披露するたびに、玉井自身のテーマ曲として育ってきたと感じさせる人気曲だ。ラストは再びアンサンブル全員が登場し、客席が黄色一色に染まる中、タオルが回る圧巻の景色と一体感を生み出して大団円を迎えた。しかし、アンコール後もタマノフの拍手が鳴り止まず、急遽ダブルアンコールを実施。武部のピアノ演奏でももクロの「オレンジノート」を披露すると、6人のバンドメンバーと8人のアンサンブル、そして、ウォーリー木下の総合演出で届けられた玉井詩織初のミュージカルコンサート<Maison de Poupée>はすべて終了した。
今年のゴールデンウィークは、玉井にとってもファンにとっても一生忘れられないような、とても濃い期間となったのではないだろうか。ももクロとして<JAPAN JAM>に出演し、ソロとして<中森明菜 Tribute Concert “明響”>にも出演。そして、最終日には日本武道館で新たなミュージカルコンサートを成功させるという充実した音楽活動を展開。また、今回のソロコンでは新曲も数曲初披露し、楽曲面でも新たな可能性を見せている。今回披露された新曲「君に100個言いたいことがあんだ」「まわるきもち」は現在配信中。また、玉井詩織のTikTok、ももクロのYouTube、Instagramでは、「まわるきもち」のライブ映像の一部が最速で公開されているので、こちらもぜひチェックしてみてほしい。
ももクロの中ではバランサーと呼ばれることが多かった玉井だが、こと音楽面においては、今後さらにグループ全体を引っ張る存在になっていくことだろう。玉井詩織のこれからのソロ活動にも大いに期待していきたい。今年の夏、8月2日(土)と3日(日)には、神奈川県・横浜スタジアムにて<ハマの夜祭り番長襲名記念 ももクロ夏のバカ騒ぎ2025 in 横浜スタジアム>が開催される。去年から今年にかけて玉井がアーティスト、表現者として培ってきたものが、ももクロにどのように還元されていくのか、玉井が発する新たな“いろいろ”な色にも注目していってほしい。
玉井詩織<―30th Anniversary―SHIORI TAMAI SOLO CONCERT「Maison de Poupée」>
2025年5月6日(火・休)
日本武道館
M1. Maison de Poupée
M2. 日常
M3. 宝石
M4. Eyes on me
M5. 手紙
M6. ベルベットの森
M7. まわるきもち
M8. HAPPY-END
M9. 君に100個言いたいことがあんだ
M10. 追憶のファンファーレ
M11. Sepia
M12. Brand New Day
M13. momo
M14. Spicy Girl
M15. スローモーション
M16. マリンブルー
M17. Another World
M18. We Stand Alone
M19. 暁
〜アンコール〜
M20. 涙目のアリス
M21. 泣くな向日葵
〜Wアンコール〜
M22. オレンジノート
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