お寺の建物はどこを見ればいい?本堂・門・屋根・天井の見どころをやさしく解説
私たちは、お参りや観光で寺院を訪れたとき、建物そのものをじっくり眺めたことがあるだろうか。
特に観光名所などで著名な大寺院の場合は、その巨大な姿に圧倒され、パンフレットに建築物の案内が出ていたとしても、どこから何をどう見てよいのかわからずにいる、というのが実状ではないだろうか。
もちろん専門家のような知識は必要ないし、特別な見方などもない。
大切なのは、その寺院のもつ往年の雰囲気をとらえることではないだろうか。
今回は皆さんが寺院を訪れた際に必要な寺院建築の見方を、基本的なポイントに絞って解説したい。
本堂から寺院建築の基本構造を見る
まずは、本堂や金堂、講堂などの建物からお話しを始めよう。
建物の基本構造は、四本の柱の上に屋根を被せた形である。
ちなみに屋根のてっぺんの水平の部分は「棟(むね)」と呼ばれる。
そしてここに渡される材を棟木という。
この棟木と平行して柱の上に渡した材を「桁(けた)」、棟木と垂直方向に渡した材を「梁(はり)」という。
さらにこの基本の母屋(もや)から「庇(ひさし)」を外側に差し出せば、建物の内部や周囲に広い空間を確保できる。
寺院建築では、この空間が仏像を安置する内陣(ないじん)や、礼拝する場所である外陣(げじん)へと発展していく。
また、この母屋と別の棟を渡り廊下などで結べば、建物は増えて複雑化し、それぞれの役目を果たすことになるのだ。
寺院の第一印象を決める「門」の見方
では次に、寺院の入り口に建つ門について解説しよう。
大きなお寺を訪れると、先ず仰ぐのが門構えだ。
門を正面から見たとき、柱間が一つのときは一間(いっけん)、三つの場合は三間といい、その柱間に扉が付き通行できる出入り口を戸(こ)と呼ぶ。
大寺院の場合、門が二階建てのことが多い。
このうち、下層に屋根がないものを楼門、上下層に屋根があるものを二重門と呼ぶ。
これらは門の構造による名称だが、寺院での役割によって三門、山門と呼ばれることもある。
三門は、仏道修行で悟りに至るための空・無相・無作という三つの関門を表す「三解脱門」の略とされ、特に禅宗寺院の正門に多く用いられる。
山門は、宗派を問わず寺院の正門を指す一般的な呼び名である。
さらに唐門(からもん)という呼び名も耳にするが、これは合掌部が丸く反った山形の曲線状の破風・唐破風(はふ・からはふ)造りの門をいう。
唐門は、平安時代末から鎌倉時代にできた様式である。
屋根の形と材料に注目しよう
寺院建築で特徴的なのが屋根で、最も見分けやすいポイントも屋根といえる。
それは屋根を葺く材料と形で、呼び名が異なるからである。
草葺(くさぶき)には、茅(かや)葺、藁(わら)葺、麦藁(むぎわら)葺がある。
また板葺では、杮(こけら)葺が知られ、ヒノキ・サワラなどの木材を厚さ3ミリほどに薄くはいだもので葺く。
桧皮(ひわだ)葺は、ヒノキの皮を細かく裂いたもので葺く。
瓦葺もあり、丸瓦と平瓦を交互に並べて葺いたものを本瓦葺という。
ほかに寺院によっては銅板葺もある。
形で分類すると、切妻(きりづま)造、寄棟(よせむね)造、入母屋(いりもや)造、宝形(ほうぎょう)造の四つに分かれる。
切妻造は、書物を半ば開き伏せた形、妻とは物の端や縁のことをいう。
寄棟造は四注造ともいい、大棟から四方に屋根を葺き下ろす、二つの台形と二つの二等辺三角形が張り合わされた形である。
入母屋造は、屋根の主幹部である母屋(もや)を切妻とし、その四方に庇を葺き下ろし、一つの屋根とした形だ。
また宝形造は、屋根が頂上の一点に集まる形で、正方形の建物だけでなく、六角形や八角形の堂にも用いられる。
天井や欄間にも見どころがある
寺院にあがって気付くことの一つに、堂内は広く、天井も高いことがあるだろう。
そして、天井を見上げると、そこにはさまざまな様式があることにも気付くはずだ。
組入(くみいれ)天井は、細い格縁(ごうぶち)を格子状に組み、その上に板を張るもので、奈良・平安時代からみられる。
また格(ごう)天井は、太い格縁を比較的大きな格子状に組んで板を張ったもので、この格間にさらに細かく格子を入れたものを小組格天井と呼ぶ。
そして、板を張っただけのものを鏡(かがみ)天井といい、そこに雲竜図などが描き込まれる。
このほか、板を張らず垂木をあらわに、屋根裏をみせたままにした化粧屋根裏、舟を逆さにしたような形の舟底(ふなぞこ)天井というものもある。
天井から下に視線を移してみよう。
すると、天井と鴨居(かもい)の間にあるのが欄間だ。
欄間は、採光・通風用に開いた空間で、いろいろな装飾意匠がほどこされた大切な見どころの一つだ。
竹の節、格子、透彫(すかしぼり)、丸彫彫刻などが取り付けられている。
格子欄間は縦横格子を嵌め込み、菱格子欄間は格子を菱形に交差させて涼し気な雰囲気を演出する。
また吹寄(ふきよせ)欄間は、二、三本の桟を狭い間隔で一組にし、組と組の間を広く取ったものをいう。
禅宗建築に多い窓と扉の特徴
最後に、寺院建築の窓や扉にも目を向けてみよう。
寺院の窓には、連子子(れんじこ)を縦に並べた連子(れんじ)窓や、連子子の隙間をなくして見通しが利かないようにした盲(めくら)連子がある。
さらに鎌倉時代以降になると、禅宗建築の伝来とともに、上部に独特の曲線をもつ花頭(かとう)窓や、格子の組子に花形飾りを付けた花狭間(はなはざま)窓なども広まった。
このほか、細い木を縦横に組んだ格子窓も用いられている。
扉は一枚だけの片開き、二枚の両開き、二枚扉が二つ折りになる両折(もろおり)両開きなどがある。
厚板をつなぎ合わせた板戸、薄い板を使い横桟で補強した板桟戸(いたさんと)、外枠を組み、間に粗い桟を入れ、板を挟み込んだ桟唐戸(さんからと)は、禅宗様で鎌倉時代から多くなった。
寺院建築は、一見するとどれも似たように見えるかもしれない。
しかし、ある程度の知識をもって目を向けると、それぞれの違いが理解できるだろう。
次にお寺を訪れる機会があれば、ぜひ建物そのものにも注目して欲しい。
きっと、これまでとは違った寺院の魅力に出会えるはずだ。
※参考文献
京都歴史文化研究会(高野晃彰)著 『京都札所めぐり 御朱印を求めて歩く』メイツユニバーサルコンテンツ
文 / 高野晃彰 校正 / 草の実堂編集部