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「聴く」という概念について考える、Analog Marketの初日をレポート

タイムアウト東京

「聴く」という概念について考える、Analog Marketの初日をレポート

2022年、音響機器メーカー・オーディオテクニカが60周年を機にスタートした体験型プロジェクト「Analog Market」。これまでは数日間のみの開催だったが、今年は亀有の「SKAC(SKWAT KAMEARI ART CENTRE)」に舞台を移し、同所に入居するレコードショップ「VDS」、SKACを運営するチーム「SKWAT」との共催で、2026年10月4日(日)まで1カ月にわたり開催。今回は「聴く」という行為にフォーカスするという。

同プロジェクトでは期間中常設のコンテンツに加え、週末を中心にリスニングセッションやライブイベント、のみの市などが実施される。初日の9月2日に取材し、入場無料の常設のコンテンツである「Listening Station」「SKWAT HERTZ ORCHESTRA ARCHIVE」「Listening Room」を体験したので、レポートする。

ヘッドホン、レコードプレーヤー、レコード針の組み合わせとその違いを楽しむ

まずは、亀有駅から会場へ向かった際に足を踏み入れるであろうVDSの店内で展開されている「Listening Station」から見ていこう。

通常営業時からレコードの試聴機が置かれている場所に、それぞれ異なる組み合わせのオーディオテクニカ製のヘッドホン、レコードプレーヤー、レコード針を設置。木製のハイエンドなヘッドホンやオーディオテクニカ独自の技術が詰まったレコード針「VMカートリッジ」各種、そして価格帯の違うレコードプレーヤーを一度に試せる機会はなかなかないだろう。

Photo: Kisa Toyoshimaヘッドホンの「ATH-ADX7000」、スケルトンな筐体(きょうたい)が印象的なレコードプレーヤー「AT-LPA2」、カートリッジは「AT-VM760xSL」という組み合わせの「Station 5」

ここでは、価格が高いからいいというわけではなく、音楽のジャンルによって機材の合う合わないがあるのだと再確認できたように思う。針をレコードに落とし、増幅された音をヘッドホンで聴くというアナログな音楽体験だからこそ、機材の個性の違いが大きいのだろう。

Photo: Kisa Toyoshima「Station 5」では見砂直照と東京キューバン・ボーイズによる『カリビアン・ブリーズ』を試聴した

収録された環境音と自分が今聴いている音が融合

2026年2月にSKACに置かれた、2台のストリートピアノ。その場にいた人が弾いたピアノのフレーズは、もちろん環境音まで録音・アーカイブされてきた。時にはアーティストが招かれて、ピアノを演奏したこともあったという。そんな膨大な音源をVDSの増森卓がエディットし、新たな7つの音楽へと再構築した。

そして今回、単管パイプで組まれた本棚に挟まれたギャラリースペース「ARCADE」で、「SKWAT HERTZ ORCHESTRA ARCHIVE」として展示されることとなった。本展では7つの曲を、オーディオテクニカの2種類のヘッドホンで聴き比べできる。

Photo: Kisa Toyoshima「SKWAT HERTZ ORCHESTRA ARCHIVE」

アーティストやDJが使用する密閉型の「ATH-M50x」で聴くと周囲の音が遮断され、ほとんどヘッドホンから流れてくる音だけが聴こえてくる。そして開放型のヘッドホン「ATH-R50x」だと、周囲の音が自然に取り込まれるのが大きな違いだろう。

音源によっては録音時に居合わせた人のくしゃみ、高架下ならではの電車が通過する音が収録されているのだが、それぞれのヘッドホンで別の体験が生まれた。密閉型だとヘッドホンで聴いている音だと分かるのに、開放型だと録音なのか、すぐ横で誰かがくしゃみをしているのか、今真上で電車が通過している音を聴いているのか、一瞬分からなくなるのだ。

Photo: Kisa Toyoshima密閉型のヘッドホン「ATH-M50x」で聴いている様子。遮音性が高く、DJやアーティストが愛用するのもうなずける

高架下のノイズをこの場所特有の個性として取り込む

定期的にアート展示などに活用されるスペース「PARK」には、「Listening Room」を設置。ここでは、「TAKANAWA GATEWAY CITY」で開催された都市型音楽フェスティバル「NU Festival」でインターネットラジオの「dublab.jp」がプロデュースした部屋に導入されていた、無指向性のスピーカーや特別なミキサーから成るサウンドシステム「OTOJU」から流れる音楽が楽しめる。

Photo: KisaToyoshima遮光には和紙を使用し、造園会社のGREEN WISEによる盆栽も設置されている

通常時は畳が敷き詰められており、寝そべりながらでも、誰かと会話しながらでも、併設されているカフェ「TAWKS」の飲み物を飲みながらでも、アットホームに自由に過ごせる。取材時は坂本龍一+ダンスリーによる『エンド・オブ・エイシア』が流れていたのだが、弦楽器の鳴りがかなりいい。また、個人的には高架下のノイズはあまり気にならず、音楽と溶け合う瞬間があるとすら感じられた。

Photo: Kisa Toyoshima「Listening Room」のサウンドシステムの一部

同スペースでは、週末を中心にイベントが開催される。ロンドンの教会を舞台とした音楽コミュニティー「Church of Sound」が初来日し、13日(日)にはリスニングセッション、19日(土)にはモモコ・ギル(Momoko Gill)ら日英のミュージシャンによるライブセッションが行われる。

またVDSでは、店頭のレコード棚を音楽ジャンルはもちろん、聴いた時に感じた色や情景で分類している。そんな棚を医学用語としての意味ではなく、直感的に感じたまま新しい音楽に出合えるセクションとして「共感覚コーナー」と名付けており、それにちなんだ「共感覚リスニング」が20日(日)〜23日(水)に開催される。期間中は1日に4人のセレクターが、それぞれ音から得た感覚を頼りにレコードをセレクトする。

イベントは無料のものも有料のものもあるので、訪れる際は事前にチェックしておこう。

Photo: Kisa Toyoshima来場者は思い思いに音楽を楽しんでいた。イベント時は畳を片付け、スタンディングになるそうだ

そのほか、SKACを手がけた設計事務所・DAIKEI MILLSの素材倉庫として普段利用されているスペースの「MM storage」では、12日(土)・13日(日)の11時から19時まで、長野県岡谷市の「CELLAR RECORDS」、吉祥寺の「SILENCIO」をはじめ、ジャンルもコンセプトも異なるレコードショップが全国から24店舗集結する「Record Market」を開催する。

さらに開催期間の週末には古物やアート、フードにワインなど、「出店者が思うアナログなもの」が販売される「NOMINOICHI」も実施。ここだけの出合いを探してほしい。

Photo: Kisa ToyoshimaSKACの外観

音楽ファンはもちろん、SKACをまだ訪れたことのない人もぜひ足を運んでみよう。そして、アナログならではの手触りのある体験を楽しんでみてほしい。

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