芳根京子さん&小手伸也さんの「なくしたくない思い出」とは? ディズニー&ピクサー最新作『私がビーバーになる時』インタビュー
ディズニー&ピクサー最新作となる映画『私がビーバーになる時』が、2026年3月13日(金)より劇場公開されます。
本作は「もしも動物の世界に入れたら」というユニークなテーマを描くディズニー&ピクサーのアニメーション映画。大好きなおばあちゃんとの思い出の森を守るため、大学生のメイベルが極秘テクノロジーを使ってビーバーになり、動物の世界へと飛び込んで奮闘する物語が展開します。
このたび、メイベルの日本版声優を担当する芳根京子さんと、優しすぎるビーバーの王様、キング・ジョージの日本版声優を担当する小手伸也さんにインタビュー! 本作が初共演のお2人ですが、劇中さながらの軽快な掛け合いで、物語やキャラクターの印象、そして“俳優として忘れたくない原点”を語ってくれました。
【写真】ディズニー&ピクサー最新作『私がビーバーになる時』芳根京子&小手伸也インタビュー
笑って泣ける『私がビーバーになる時』の魅力
ーーインタビュー開始前の写真撮影の時から楽しくお話されていましたが、お2人は今作が初共演になるんですよね。
芳根京子さん(以下、芳根):今日が“3度目まして”です。まだ関係性が薄いんですよ!
小手伸也さん(以下、小手):そんな堂々と関係性が薄いって言わなくていいじゃん(笑)。
芳根:インタビューを読んで「この2人関係性が薄いな」と思われるより、先に「※この2人は関係性が浅いです」という一文を入れておいた方が親切かと思って(笑)。
小手:本当に注釈入れられちゃったらどうするのよ(笑)。
ーー(笑)。初共演とは思えないくらい、劇中では息の合った掛け合いをされていました。
芳根:本当ですか? ありがとうございます! 初めてお会いしたのが、小手さんの声優発表動画撮影の動物園でのサプライズの時で。
小手:お互いビーバーの着ぐるみを着ていたんですよ。
芳根:ビーバーの恰好をしながらの「はじめまして」だったので、ビーバー効果もあって、心の壁がなかったのだと思います。
小手:後々判明したのですが、お互い人見知りなんですよ。でもあの時は、ビーバーの恰好をしていたから「行ける!」と思って。普通の服での初対面だったら、あそこまでグッと行けていなかったと思います(笑)。
ーービーバーのおかげですぐに打ち解けられたんですね。
小手:着ぐるみを着た瞬間は「これ大丈夫なのか?」と不安になったのですが、同じ背中が見えたときの安心感といったら……!
芳根:「仲間がいる!」と思いましたよね(笑)。
小手:芳根さんはいいけど、僕は50歳を過ぎたおじさんですからね。最初はひとりでのロケだったので、本当に不安だったのですが、そこにすごく陽気なビーバーが来てくれたものだから……「救われた!」と思いました(笑)。その後に、改めてちゃんとお話したいと思い、共通の知り合いである岡崎紗絵に頼んで食事会をセッティングしてもらって、なんだかんだ5時間くらい話していたよね?
芳根:動物園ロケの3倍くらい話しましたよね(笑)。
小手:そうそう。で、意気投合して。
芳根:今日が“3度目まして”です。浅い関係です。
小手:まだ言うか!(笑)
ーーこれまで動物の世界を描いた作品はたくさんありましたが、「人間が動物になって、その世界に入り込む」という設定はとても斬新に思いました。お2人は映画を観てどんな印象を持ちましたか?
芳根:素直にすごく面白いと思いました。最初は「私の吹き替え大丈夫かな?」という不安の方が大きかったのですが、観ているとそんなことを忘れてしまうくらい物語に惹きこまれて。一観客としてとても楽しんでしまいました。笑。
小手:普通に笑うし、なんなら僕は泣きましたよ。
芳根:グッとくるポイントもたくさんありましたよね。どこで泣きました?
小手:メイベルとおばあちゃんの関係性が本当にステキだし、メイベルが頑張りすぎて空回りしているところも。そんなメイベルをキング・ジョージが慰めるシーンがあるのですが、僕自身もメイベルを抱きしめてあげたくなりました。
芳根:わかります。
小手:「メイベルにこの気持ちが届け!」と思いながらお芝居したので、あそこは僕の愛情も入り混じったシーンになっていると思います。目の前に芳根さんがいると想像して、抱きしめるように演じました……と言ったらちょっと気持ち悪い意味になっちゃいますね(笑)。
芳根:全然気持ち悪くないですよ!(笑) 私がすごく好きなシーンは、ジェリー市長の車の後部座席にビーバーズたちが座っているところです。動物たちと一緒にいる時と人間から見たときの、ビーバーのキャラクターの造形が違うのですが、急につぶらな瞳になって「スン……」とした顔で座っている絵がかなり衝撃的で。思い出しても笑えるくらいです。ぜひ映画館でそこにも注目していただけたらと思います。
ーー私も試写を観て、物語はもちろん、ビーバーの魅力にも取りつかれて。「ビーバー 飼い方」で調べてしまいました。
芳根:飼おうと思ったんですか!?(笑) そこまでの影響があったなんて、すごいですね!
小手:ビーバーの生態もちゃんと描かれていますから。ファンタジーでありながらリアリティも大事にしていて、そのバランス感覚が非常に面白いと思いました。動物対人間の勧善懲悪ではなく、多様性というのでしょうか。森や動物を守りたいメイベルと、道路を作って市民を便利にしてあげたい市長。それぞれに正義があって、どちら側の視点も描かれるから、複雑ではあるけれど一貫性がある物語なんです。相反するもののバランスがしっかり取れているからこそ、笑いながら泣ける作品になっていると思いました。
ーー物語もそうですが、お2人の吹き替えのお芝居もすばらしいものになっていました。どのようにキャラクターを作り込んでいったのかも聞かせてください。
芳根:メイベルは、とにかく猪突猛進。しかし、何のために行動しているかを明確にしないと、ただの自己中心的な子になってしまうので、「おばあちゃんとの思い出の森を守りたい」「動物たちを守りたい」という愛を中心において挑まなければいけないと思いました。私はあまり声のお仕事をしたことがなく、テクニックも持っていません。しかしながら、本作ではセリフ量が多く、「どうすれば耳障りにならないように声を張れるんだろう」などと技術面にもかなり悩みました。普段の自分よりも低い声を出してみたり、色々トライさせてもらっていた中で、監督から「すごくいいです」と言ってもらえて、そのまま突き進もうと思いました。
小手:僕はアニメ作品に声優として何度かレギュラー出演したことがあるのですが、さすがにビーバー役はやったことがなく(笑)。二頭身のキャラクターも演じたことがなかったので「その姿から生まれる声ってどんなのだろう?」といろいろ考えて、地声でやった方が面白いんじゃないかと思いました。しかし、実際に演じてみると「威厳がありすぎる」と言われてしまって、改めて分析した結果……たどり着いたのは“キング・ジョージの顔真似をしながら演じる”ということでした。
芳根:……ん? どういうことですか?(笑)
小手:ちょっとここ(※動物のωとなっている部分)を膨らませて、口角を上げて、歯をちょっと出す感じ(笑)。「キング・ジョージに似ている」とスタッフさんに言われていたんですよ。だから自分の中で複雑に作り込むよりも、まず構造から寄せて演じた方がいいと思って。それに加えて、本国よりもワントーンだけ声を高くして演じました。
芳根:つまり、ビーバーの実写版もいけるってことですね!
小手:いけるかなぁ?
芳根:実写化オファーお待ちしています!(笑)
小手:オファーしてもらえるんだったら、やぶさかではないよね。よく「ピクサー顔だよね」「バズ・ライトイヤーに似ている」とも言われます(笑)。
初心を胸に、新しい景色へ
ーー危険を厭わず猪突猛進なメイベルと、リーダーとしてみんなをまとめるキング・ジョージ。とても対照的なキャラクターですが、お2人はタイプ的にどちら寄りなのでしょうか?
小手:姿かたちだけでなく、僕とキング・ジョージは性格や思考の部分でも近しいと思います。争いごとがあると仲介役を任されることが多かったり、相手の言い分を聞かないと怒ることができなかったり。猪突猛進よりも、一旦考えてから行動するタイプです。キング・ジョージほどではないものの、僕も調和が好きだし、誰にでも優しくありたいと思っています。
芳根:私もベースはキング・ジョージだと思うのですが、メイベルの気持ちもすごくわかるので「基本はキング・ジョージ、ときどきメイベル」みたいな感じでしょうか(笑)。
ーー先ほど「ビーバーの生態もちゃんと描かれている」というお話もありましたが、ビーバーについて知って、何か驚いたこと・感心したことなどはありますか?
芳根:ビーバーはかじり取った木などを用いて水の流れをせき止めてダムを作る習性があることから、別名「森の建築家」と呼ばれているそうなんです。劇中では当たり前のようにその生態が語られていましたが、改めて考えると、めちゃくちゃすごいことをしていますよね。ビーバーが1匹いれば森を救えると知って、すさまじいパワーを持った生き物なんだと感心してしまいました。
小手:動物の王様というと熊やライオンをイメージする方が多いと思うのですが、台本を読んで「ビーバーなんだ!?」と驚かされました。ビーバーがダムを作ることで池が生まれ、そこに魚が集まり、それを啄む鳥がやってきて、またそれを狙う動物もやってくる。生態系を作るというか、まるで1つの国を作っているようです。そういう意味では、ビーバーが王様なのはすごく腑に落ちました。
芳根:ビーバーがいないと始まらないんですよね。そんなステキなことを皆さんにお伝えできる作品になっています。
小手:ダムは作るけれど、住処は別にあるというのも面白い発見でした。
芳根:わかります! あと、氷の池でも平気で泳ぐらしくて、さすが北半球の動物だなぁと。だから着ぐるみを着た時、あんなに暑かったんだと思いました(笑)。
小手:真冬のロケだったのに、お互い汗ばんでいたよね(笑)。劇中では語られませんでしたが、実は香料を出す動物でもあるんですって。
芳根:そうらしいですね!
小手:肛門の近くから分泌物を出すとか。本作への出演をきっかけに、ビーバーの生態についていろいろ知ることができました。
ーー本作で、メイベルは自身の思い出の場所をなくさないために奮闘します。お2人にも「なくしたくない大切な場所・思い出」があれば聞かせてください。
小手:すごく普通のことを言ってしまいますが、家族のいる家です。子どもがいるので、父親として子どもが帰る場所は大切に守っていかなきゃいけないと思っています。ちょっと普通すぎるかな(笑)。
芳根:いやいや、大事なことですよ。
小手:そのためには、やっぱり仕事も大事ですよね。仕事がない時期が長かったので、今こうやって仕事できている幸せは日々感じています。色々なことに挑戦したいし、見たことがない世界に行ってみたい。なくしたくないというか、自分の居場所を広げていきたいですね。
芳根:私が忘れたくないのは、「朝ドラ(『べっぴんさん』)のヒロインです」と言われたあの瞬間です。思い出すと初心に戻れるというか、あの時ほどいろんな感情が一気に押し寄せて来た経験は、これまでの人生で味わったことがありませんでした。喜びなのか不安なのか、何の感情がわからないのに、涙がうわーっと溢れて来て。それは今のお仕事にも繋がっていて、「ちょっと疲れたな」と思っても、あの瞬間を思い出すと「ちゃんとやらなきゃ!」と背筋が伸びるんです。きっとこれから長くお仕事させていただく中で、色々な経験をすると思うのですが、あの瞬間だけは絶対に忘れたくないし、忘れられないと思います。これからも何度も、私にエネルギーを与えてくれると思っています。
小手:「初心忘るべからず」だね。
芳根:その通りです! 当時のマネージャーさんがとても厳しい方だったのですが、ヒロインに決定して、よくわからないまま翌日の会見の準備をして、まだ実感がわかないまま控室のホテルに入った瞬間に、そのマネージャーさんから「おめでとう」と言われて握手をしました。またそこでぶわっと泣いたのは、いい思い出です(笑)。あの時はなかなかオーディションに受からなくて、仕事もまったくない状態だったので……。「仕事があるのは当たり前のことじゃない」としっかり胸に刻み、これからも1つ1つのオーディションやお仕事を大切にしていきます。
小手:僕も下積みが長かったので、すごくわかります。大河ドラマや月9に初めて出演すると決まった時は、ゾワゾワした気持ちになりました。それまでは主に舞台で活動していたので、映像に苦手意識があって。でも、苦手に立ち向かった先にこそ見えてくる景色があるので、いろんな挑戦を重ねながらも、たまに初心に帰って、新しい景色へと向かっていきたいですね。それこそ……ハリウッドとかね!
芳根:まだまだ経験してないことはたくさんありますからね! 新しい世界への好奇心や探求心も忘れたくないです。
[インタビュー/米田果織 撮影/胃の上心臓]