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【中学入試】2025年の中学入試に出た作品の傾向と「入試に出題されやすい本」の特徴3選〔中学受験の専門家が解説〕

コクリコ

2025年中学入試に出た国語物語文の素材の特徴や傾向を、のべ200校400題の入試問題を分析して大解剖! 2025年の中学入試に出た作品の傾向と「入試に出題されやすい本」を首都圏中学受験塾で教室長を務めるakiraさんに解説していただきます。

中学受験「国語」読解力アップ3大秘訣 出題小説を受験塾教室長が徹底解説

2025年の中学入試も無事終わり、ほっとしている親御さんも多いかと思います。入試に出題されやすい本の特徴を知っておくと受験に有利です。すこし気が早いですが、2026年の入試に備え、2025年の中学入試の「国語物語文の素材」に使われた作品をふりかえってみましょう。

今年出た国語物語文の素材3つの特徴や傾向を解説するのは、首都圏中学受験塾で教室長を務めるakiraさん。この記事をご執筆いただくにあたり、のべ200校400題の入試問題を分析していただきました。気になる結果は下記に!
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首都圏中学受験塾の教室長をしています。akiraと申します。

2025年入試もようやく終わりを迎え、手元に入試問題がだいぶ集まってきました。このタイミングで2025年の入試素材文の傾向をふりかえってみましょう。入試に出題されやすい本の特徴を知っておくと入試で有利になることは先輩たちが証明しています。

私が考えている入試素材文の傾向は以下の3点です。

・新刊本(前年の9月から入試の年の8月ごろまで。※2025年入試であれば2023年9月から2024年8月まで)
・主人公は少年少女。そのほうが中学受験としては問題が作りやすいです。
・書店が力を入れて販売している本(文学賞のノミネート作品、受賞作品、中学受験人気作家の新作)。それだけ先生の手に取ってもらえる可能性も増えます。マーケティング的な切り口です。

具体的な作品を紹介しながらくわしく説明していきます。

akira氏の教室の本棚。注目している作品を集め、生徒に紹介している。(提供 : akira氏)

2月上旬に入手できた、のべ200校400題の入試問題を分析しました。その結果、2025年入試の素材文の4割は、2023年の9月から2024年の8月ごろまでに発売された本から出題されていました。新刊本から出題される傾向は今後も続きそうです。

来年以降入試を迎える皆さんはまず、今回紹介した中から興味がある本を手に取って読んでみてください。学校の先生方が入試問題に採用した注目の本です。時間をかけて読む価値が非常に高いです。

次に、今後の模試で出題された素材文の中で、出版時期が2024年の9月以降の本であれば2026年入試に出題される可能性が高いです。模試の問題を取っておいて入試直前期に読み直すことはもちろん、夏休みなど時間があるときに、素材文に当たってじっくり読んでみてください。

2月から5月は書店に行け!

特に出題が多かった本に限れば、2月から5月に発売日が集中しています。中学の先生方は入試が終わったらすぐ来年の入試の準備として書店へ向かっているのでしょう。

来年以降受験される方は、この時期ぜひ書店へ足を運んでみてほしいです。

また今回紹介する物語文の共通点は、主人公が小学生から高校生の子どもたちで、受験生にとっては感情移入しやすい内容になっています。子どもが主人公だと、中学受験国語の重大テーマである「他者理解」や「挫折と成長」をテーマにしやすいのも採用される理由でしょう。

出題が集中した本を出題校が多い順に紹介していきます。

最多出題の作品はこれだ

蟹江杏『あの空の色がほしい』が今年の最多出題の作品です。ぜひ買って読んでみましょう。2月1日の時点で、複数校出題があったため6年生に紹介したら、海城2、三輪田2で出題されてとても感謝されました。

入試は1点が勝負です。そして国語の1問が当たるのは大きいです。まず、国語はほとんどの入試問題では1科目です。ここで波に乗れると強いのです。次の科目、算数もうまくいくことが多いです(みなさんは、逆の経験もしたことがありませんか? 国語で失敗すると次の算数に響くという経験は誰しもあるでしょう)。

国語の文章題は配点だと30点から40点分あります。これは知っている本と初めて読んだ本では大違いでしょう。読んだことがある本だと子どもたちは落ち着いて読むことができるようです。実際子どもたちの中にはこれらの本を1回ではなく何回も読んでいる子もいますから、内容もかなり自分の中に落としこめた状態で読めて、より深く理解できます。中には文章を読まずに問題を解いたという子もいました。

大妻1、海城2、久留米大学附設、慶應義塾湘南藤沢、國學院大學久我山1、サレジオ学院B、三輪田2、横浜共立Aの8校で出題されています。

『あの空の色がほしい』 蟹江杏 河出書房新社 2024年5月30日刊

──「それからマコは変な子じゃない。ユニークって言葉知ってる? 『唯一無二の特別な存在』って意味なのよ。マコは変な子じゃなくてユニークな子だとママは思うよ」(『あの空の色がほしい』より、入試素材文を抜粋)

受験勉強は情報戦

佐藤いつ子『透明なルール』吉祥女子1、栄東B、城北1、昭和女子大学附属A、鶴見大学附属、立教女学院、早稲田実業の7校で出題確認

出題箇所も体育祭のスローガンを決めるシーンが多く、的中率が高い作品でした。前評判も高く、対策している人が多そうなので平均点が高くなったかもしれません。中学受験は国語も情報戦と言えそうです。

『透明なルール』 佐藤いつ子 KADOKAWA 2024年4月24日刊

──「『だからわたしは、どんな意見であっても、みんなで、自由に、言い合いたい』教室が、静まりかえった」(『透明なルール』より、入試素材文を抜粋)

本屋大賞ノミネート作品に要注意

早見和真『アルプス席の母』は、愛光、海陽中等1、佼成学園1、淑徳東大3、山脇学園国語1科、ラ・サール、立教池袋の7校で出題

私も今年一番おもしろく読んだ本です。きっと先生方も気に入ったはず。本屋大賞にもノミネートされています。それだけ書店も推していたので、多くの人の手に取られたのでしょう。本屋大賞ノミネートの発表は2月3日なので、残念ながら入試前に本屋大賞ノミネートの本を知ることはできませんが、ノミネートされるということは書店で力を入れて販売されている可能性が高いです。ぜひリアルな書店に足を運ぶことをしてみましょう。354ページの大作ですが、じっくり読んでほしい本です。

出題箇所が重なるときは重なりますが、切り取られた場面が違うということはそれだけ国語の先生が出題したい箇所が多いということでしょう。

また、早見和真さんの2025年3月発売の新作『問題。以下の文章を読んで、家族の幸せの形を答えなさい』は「中学受験」がテーマの本なので注目しています。来年の入試でも出題される可能性は高いでしょう。

『アルプス席の母』 早見和真 小学館 2024年3月15日刊

──「『チームのためなんて思わなくていいからね。自分のためだけにがんばりな』『わかっている』『明日は航太郎の人生が決まる日だよ』勝手に熱くなっている母親に辟易することなく、航太郎は最後までまっすぐに『そうだね。悔いがないようにやってくる』と言い切った」(『アルプス席の母』より、入試素材文を抜粋)

読書初心者や小学6年生以外にも手に取りやすいのはこの一冊

志津栄子『ぼくの色、見つけた!』は、跡見学園1、大妻3、鎌倉女学院1、暁星1、日本大学A1、横浜雙葉1の6校で出題。夏休み前から紹介をしていたこともあって多くの生徒が目を通してくれていたようです。

非常に読みやすいので読書初心者の方や小学6年生以下の方にもおすすめします。世界が広がります。主人公は、「色覚障がい」という共感されにくい悩みを、どのように克服していくのか考えながら読んでみてください。

『ぼくの色、見つけた!』 志津栄子 講談社 2024年5月23日刊

──「ぼくが思っているほど、人は気になんかしないってことがわかった」(『ぼくの色、見つけた!』より、入試素材文を抜粋)

阿部暁子『カラフル』は、神奈川学園A、芝1、日本大学第三1、明治大学附属八王子A1、森村学園1の5校で出題

こちらも『透明なルール』同様、出題箇所が予想しやすく、学級委員を決めるシーンが切り取られています。

『カラフル』 阿部暁子 集英社 2024年2月26日刊

──「『けど、それでも、私はこれを個性とは言わないでほしい』『私はやっぱり、自分の足で歩けるようになれるなら今すぐそうなりたい』」(『カラフル』より、入試素材文を抜粋)

坪田侑也『八秒で跳べ』は、開智2、共立女子1、栄東東大Ⅱ、聖光学院帰国の4校で出題されました。

開智、栄東と出題が相次いだので、紹介をしました。SNSでも評判が良い本でした。

『八秒で跳べ』 坪田侑也 文藝春秋 2024年2月10日刊

──「あれがきっかけで、梅太郎はずっと景のことを追いかけてるんだよ。尊敬してて、同時にこいつにだけは負けたくないって思ってる」(『八秒で跳べ』より、入試素材文を抜粋)

入試頻出著者はこの人だ

青山美智子『リカバリー・カバヒコ』は、栄東東大特待、佐久長聖1、東洋大学京北1の3校で出題されています。昨年の芝2次は第4話「勇哉の足」でした。第1話「奏斗(かなと)の頭」を読みたい方は光文社文芸編集部のnoteにもアップされています。2024年本屋大賞7位の作品ということもあり多くの人に手に取られた作品です。

青山美智子さんは入試頻出著者でこのほかにも『お探し物は図書室まで』が東洋英和A女学院と早稲田2で、『ただいま神様当番』が、かえつ有明1で、『月の立つ林で』が西大和学園で出題されています。

また、2025年も本屋大賞に『人魚が逃げた』がノミネートされています。

『リカバリー・カバヒコ』 青山美智子 光文社 2023年9月21日刊

──「ちょっと違うかな。人間の体はね、回復したあと、前とまったく同じ状態に戻るというわけじゃないんだ」(『リカバリー・カバヒコ』より、入試素材文を抜粋)

狙われやすいテーマ「俳句と短歌」

百舌涼一『17シーズン 巡るふたりの五七五』は、晃華学園、頌栄女子学院2、専修大学松戸1の3校で出題されました。

今後も俳句や短歌をテーマにした本は狙われる可能性があります。過去には同テーマで『リマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ』『そらのことばが降ってくる:保健室の俳句会』なども出題されています。

『17シーズン 巡るふたりの五七五』 百舌涼一 講談社 2024年2月26日刊

──「『色のない 虹を見たこと ありますか』気づけば『五・七・五』が、『十七音』が、音々のつくった『俳句』が、口から勢いよく放たれていた」(『17シーズン 巡るふたりの五七五』より、入試素材文を抜粋)

出題校は少ないですが、注目したい作品を紹介します。

宮田愛萌『春、出逢い』は、筑波大学附属、立教新座1の2校で出題されています。狙われやすい短歌がテーマです。

発売日が遅いということもあり来年以降も出題の可能性があります。また、宮田愛萌さんは女性アイドルグループ「日向坂46」の元メンバーでもあります。

『春、出逢い』 宮田愛萌 講談社 2024年8月9日刊

──「しかし、俺の心の準備がまだはじまってもいないうちに審査員による投票が終わり、あっという間に四対一で朱那ちゃんが勝った。それが俺には少し意外で、ほっとしつつも、そうなのか、と思う」(『春、出逢い』より、入試素材文を抜粋)

注目しておきたい◯◯賞

伊与原新『藍を継ぐ海』は、第172回直木賞(2024年下半期)受賞作品です。

直木賞受賞作品は過去にも出題されています。『八月の御所グラウンド(170回 2023年下半期)』『夜に星を放つ(167回 2022年上半期)』。

2024年下半期の直木賞の発表が2025年1月15日でしたので発表後に読むのはさすがに難しかったかなと思います。おなじく伊与原新さんの作品では『月まで三キロ:アンモナイトの探し方』が日本大学三島と頌栄女子学園1で出題されています。

『藍を継ぐ海』 伊与原新 新潮社 2024年9月26日刊

──「『この子たちみんな、勇気ありますね』この海の向こうに、何があるかわからないのに。待ち受けているのは、きっと大変な試練ばかりなのに」(『藍を継ぐ海』より、入試素材文を抜粋)

新傾向!? かなり珍しい出題

少し前の本ですが物語文でも論説文でもない本が入試に出題されたので紹介しておきます。

すとうけんたろう『5文字で四字熟語』が、今年付属校人気で話題の立教池袋で素材文として出題されました。おもしろい問題なので紹介しておきます。(2025年立教池袋1より一部抜粋)

受験生が実際に入試問題を解いたときに緊張がほぐれてほっこりしたはずです。続きが気になる方はぜひ手に取ってみてください。

五.『5文字で四字熟語』(著・イラスト すとうけんたろう)から選んだ四字熟語とその説明です。この本には「5文字のかんたんな言葉をつかって、四字熟語の意味がざっくりわかるようにしてみた」と書いてあります。

(二)絶体絶命→超大□□□
3つの□にカタカナを入れなさい。

(三)9.大器晩成の説明はどれですか。
イ そいつだけ   ロ 今後に期待   ハ ふいに本題
ニ みんな違う   ホ 超わがまま   ヘ マジうける
卜 今時それか

『5文字で四字熟語』 すとうけんたろう 講談社 2022年6月1日刊

『5文字で四字熟語』より、入試素材部分を抜粋

──「たとえば、よく耳にする四字熟語を5文字であらわすと……? 意気消沈→『もうダメだ』 紆余曲折→『色々あった』 危機一髪→『超あぶない』 言語道断→『話にならん』 阿鼻叫喚→『うわひどい』 付和雷同→『イエスマン』 岡目八目→『野次馬目線』 一気呵成→『ぶっとおし』」(『5文字で四字熟語』より)

かなり珍しいですね。語句に苦手意識を持っている人にとっても読みやすいのでぜひおすすめします。私は同シリーズの『5文字で百人一首』も愛読しています。

論説文の最多出題作品はこちら

最後に論説文です。出版社別で見ると圧倒的にちくまプリマー新書が多いです(のべ65校)。論説文はなかなか手に取りづらいですが、模試で出題された素材文で、ちくまプリマー新書のものだけでも読んでみるのはどうでしょうか。

中屋敷均『わからない世界と向き合うために』は、愛光、鷗友学園女子2、晃華学園、市川1、大妻多摩1、共立女子1、昭和学院秀英1、高輪A、桐蔭学園1、日本大学A1、富士見3、茗溪学園2、山脇学園A、横浜共立学園A、立教女学院、甲陽学院、神奈川学園Cの計17校で出題されています。

これは昨年の『増えるものたちの進化生物学』よりもかなり多く感じます。愛光、市川と続いたところで生徒に紹介をしたら、購入して読んでくれた子もいました。読む気になれば2時間あれば読めます。

直前期にすすめたこれらの本を手に取って読んだ子、時間がない中でも1点を取ろうと動いた子は合格しています。これだけ多くの学校の先生が選ぶ本ですからぜひ手に取って読んでみてください。

『わからない世界と向き合うために』 中屋敷均 ちくまプリマー新書 2024年2月8日刊

──「しかし、現実の世界を生きていくということは、実はそんなものではない。どんな選択をしてもそれに伴うリスクが必ず存在し、現実の問題の多くには、そもそも絶対正しい『正解』なんてない」(『わからない世界と向き合うために』より、入試素材文を抜粋)

入試の合否以上に人生に影響を与える「読書」

はじめは「入試や模試に出るかもしれないから」と作品を読み始めた子どもたちも、入試を終えるころになると、読書が習慣になっています。

入試を通して身についた読書の習慣は一生の財産です。もしかしたら入試の合否以上に人生に影響を与えることになるかもしれません。

本のおもしろさに気づいた人は入試が終わっても今年の注目の本を読んでいるそうです。みなさんもそんな先輩に続けるように一冊手に取ってみてください。中学受験生活、そして人生をプラスの方向に少しずつでいいので変えていきましょう。読書にはその力があると信じています。

写真:アフロ

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