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心を動かしてもらうために。が~まるちょば(HIRO-PON)#1

ほぼ日

嘘のスペシャリストたちに「嘘論」をうかがうインタビュー企画。今回はパントマイムアーティスト「が~まるちょば」のHIRO-PONさん。
ことばを使わず、セットも使わず、見る人の想像力をあやつるパントマイム。
「嘘」というテーマを真ん中に置きながら、パントマイムのこと、ソロ活動のこと、五輪開会式でのピクトグラムのことなどをうかがいました。
全8回でおとどけします。


HIRO-PON
きょうは「嘘」の話ですよね?

──
はい。嘘のスペシャリストに嘘について訊くという企画です。

HIRO-PON
パントマイムにはうってつけですね。ぼく、すっごく嘘つきですよ。

──
おぉーっ。

HIRO-PON
なんでも聞いてください。

──
それではさっそくですが、「が~まるちょば」といえば、トランクケースのパントマイムが有名ですよね。空中でピタッと止まるという。

HIRO-PON
ええ。

──
もともとパントマイムって、ああいう不思議な現象を表現するものだと思っていたんです。

HIRO-PON
ああ、なるほど。いわゆる「イリュージョン」ですね。

──
そうなんです。でも、HIRO-PONさんの他のインタビューを拝見すると、ああいうパフォーマンスを「パントマイムみたいなもの」と分けて話されてますよね?

HIRO-PON
厳密にいえば、あれはパントマイムじゃないです。ついでにいえば、五輪開会式のピクトグラム。あれもパントマイムじゃないですからね。

──
じゃないんですよね。

HIRO-PON
じゃない、じゃない。

──
となると、パントマイムというのは‥‥。

HIRO-PON
その線引きが、じつはなかなか難しい。

──
ハッキリしてない?

HIRO-PON
トランクケースが動かなくなったり、ないものがあるように見えたり‥‥。たしかにそれもパントマイムです。例えば、こういう壁とか。(見えない壁を、手のひらでペタペタさわる)

──
おぉぉ、壁がある(笑)。

HIRO-PON
この「見えない壁」を伝えるなら、こういうジェスチャーで十分ですよね。もしくは声に出して、「ここには壁があります」といえばいい。つまり、壁の存在を伝えるだけなら、パントマイムである必要もないんです。

──
素朴な疑問なんですが、パントマイムとジェスチャーはちがうんですか?

HIRO-PON
全然ちがいます。

──
なにがちがうんでしょうか。

HIRO-PON
うーん、それはですね‥‥。「が~まるちょば」の舞台は、ご覧になったことありますか?

──
はい、DVDで拝見しました。はじめてパントマイムの劇を見たのですが、セリフが一言もなくてびっくりしました。体の動きだけで物語を演じていて、最後までものすごく引き込まれました。

HIRO-PON
パントマイムの舞台って、セリフもないし、セットもないし、説明的なものはなにも使わないんです。それってなんでだと思いますか?

──
なんでか? ええ、なんでだろう。

HIRO-PON
それにはちゃんと理由があって、まずお客さんから見えるのは、舞台にいる「ぼく」だけです。演者しか見えません。

──
はい。

HIRO-PON
ぼくしか見えないということは、お客さんはぼくの動きや表情を見て、笑ったり、驚いたり、感動したりするわけです。つまり、パントマイムというのは、演じている人の心を通して、見ている人の心を動かすものなんです。

──
心を動かす‥‥ん?

HIRO-PON
例えば、ここに壁があるとします。(見えない壁に手のひらをあてる)

──
壁、あります。

HIRO-PON
さっきもいいましたが、この壁の存在を伝えるだけなら、壁に手をかざせばいいわけです。(見えない壁をペタペタさわる)‥‥このジェスチャーで十分伝わります。

──
でも、それはパントマイムじゃないんですよね?

HIRO-PON
ちがいます。パントマイムの場合は、この壁を感じている「ぼく」がいます。そして「ぼく」を見ている「あなた」がいて、その「あなた」になにかを感じ取ってもらう。それがパントマイムなんです。

──
見ている人に、なにかを感じ取ってもらう。

HIRO-PON
例えば、壁をさわるだけじゃなく‥‥。(急に手の動きが止まり、ゆっくりと視線が上にあがっていく。口をすこしだけ開けて、天井付近をじっと見つめている)‥‥いま、なにか感じましたか?

──
え、なんだろう‥‥。いま、壁の「高さ」は感じました。

HIRO-PON
それ。いまのがパントマイム。

──
え?

HIRO-PON
ぼくが感じたなにかを、あなたが受け取ったから、いまそういう壁に見えたわけです。

──
ちょっと待ってください(笑)。いま、HIRO-PONさんは目と顔を動かしただけですよね?

HIRO-PON
伝え方はなんだっていいんです。例えば、いまここに壁がありますけど、もしそっちと目があうとしたら‥‥。(壁を手でバンバン叩く。こっちに目で合図しながら、なにかを大声で伝えようとしている)

──
‥‥あっ、ガラスだ!

HIRO-PON
壁じゃなくてガラスになる。でも、透明じゃないガラスだとしたら‥‥。(突然、目線があわなくなり、ガラスの表面を服の袖で拭きはじめる)動き方もさわり方も、さっきとはちがってきます。

──
わっ、おもしろい!

HIRO-PON
こうやって見ている人の心を、いろいろ動かすのがパントマイム。だから「ことば」を使いません。だって、ことばにした途端、おもしろさがなくなっちゃいますから。「目の前にこんなに高い壁がある!」って急にいわれてもねぇ‥‥。

──
たしかに‥‥。

HIRO-PON
パントマイムの舞台では、ことばを使わないし、セットも使いません。例えば、お城のセットがあったら、その舞台はそのお城でしかありえません。でも、セットがない舞台というのは、それぞれのお城が頭の中で見えてくるんです。

──
頭の中で想像するわけですね。

HIRO-PON
その人の経験や年齢によって、大きさやかたちもちがう、それぞれのお城が頭の中に出てきます。つまり、100人のお客さんがいたら、100通りのお城を見てることになります。

──
でも、実際はなにもなくて、舞台にはHIRO-PONさんがいるだけ‥‥。

HIRO-PON
だからいったでしょう。ぼく、すっごく嘘つきだって(笑)。

(出典:ほぼ日刊イトイ新聞「嘘ってなんだ!? Vol.3 HIRO-PON(が~まるちょば)編|01 ぼく、すっごい嘘つきですよ。」)

が~まるちょば(HIRO-PON)
パントマイムアーティスト。
1999年に「が~まるちょば」を結成。サイレントコメディー・デュオとして、世界の35カ国以上で公演を行う。
現在はデュオ活動に終止符を打ち、HIRO-PONが「が~まるちょば」を継続。
黄色のモヒカンがトレードマーク。
東京オリンピックの開会式では、クリエイティブチームのクリエイターとしてピクトグラムの創作を手掛け話題になる。

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