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あの老舗が営む路面店『松﨑煎餅 松陰神社前店』へ。世田谷の商店街で育まれる“街の煎餅屋さん”と地域とのつながり

さんたつ

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『銀座 松﨑煎餅』といえば、名物の「大江戸松﨑 三味胴」。小麦が原料の瓦煎餅で、表面に花鳥風月や縁起物を描いた華やかなお菓子だ。そもそも文化元年(1804)、芝の魚籃坂(現在の港区三田4丁目付近)で創業した。慶應元年(1865)に銀座に移転し、銀座本店は現在も木挽町通りで営業を続けている。その老舗が本店に次ぐ2軒目の路面店を出店したのは、世田谷線松陰神社前駅の商店街だった。2016年の開店以来少しずつ地域に根ざし、2026年4月、10周年を迎えた。

松﨑煎餅 松陰神社前店(まつざきせんべい しょういんじんじゃまえてん)

地元民御用達の商店街で出合ったほんのり甘い瓦煎餅

ここは、松陰神社参道商店街。幕末の教育者・吉田松陰を祀る松陰神社があり、商店街のある通りはその参道でもある。戦後に店が増え始め、古くからあるパン屋、八百屋は今なお人々の生活を支える存在。世代交代が進み顔ぶれはだいぶ変わったが、個性派カフェや雑貨店といった新顔と歴史を重ねた古参が隣り合い、新旧入り混じったユニークな街並みを形成する。

軒先の「松﨑煎餅」と書かれた日除け暖簾(のれん)が目印。
世田谷線松陰神社前駅で電車を降りると、すぐ商店街がある。

買い物時にはたくさんの地元客でにぎわう商店街。買い出しのついでに『松﨑煎餅 松陰神社前店』に立ち寄る人もいて、「日常の延長線上で自然に当店と出合ってくれるお客さまが増えました」と店長。これまでは銀座の本店か、または百貨店に入っているイメージが強かったが、「わざわざ遠くに行かなくても、近所で買えるようになってうれしい」という声も多いとか。入り口付近に煎餅やあられ、おかきなどさまざまなお菓子が並び、道行く人の興味をそそる。

この商店街で路面店を始めるに際し、コンセプトに掲げたのは「地域密着」。「わざわざ」感をなくし、ふらっと入りやすくなった店のたたずまいは、言わば「街の煎餅屋さん」である。バラ売りの瓦煎餅は散歩のお供にもなるし、手軽なスタンドパックは普段のおやつにぴったり。今ではすっかり街の景色に溶け込んでいる。

瓦煎餅をはじめ、あられやおかき、揚げ餅など、さまざまな品物が並ぶ。

瓦煎餅「大江戸松﨑 三味胴」はサクッと心地よい歯触り。ふんだんに卵が使われているためコクがあり、朗らかな甘みに気持ちが和む。そんな癒やし系の味わいも、長年名物として愛される秘訣の一つ。ホッとひと息つきたい時のお茶菓子にもってこいだ。

瓦煎餅「大江戸松﨑 三味胴」1枚195円。季節の草花など、時季によってデザインが変わるものも多数。

職人が手間隙かけて滑らかにした表面に、砂糖蜜と焼き印を使い絵柄を入れている。江戸の花鳥風月や縁起物など、ひと目で気持ちが華やぐモチーフが選ばれ、季節の草花や干支のような期間限定のデザインも楽しい。松陰神社参道商店街のキャラクター「しょーいん君」はもちろん、松陰神社前店限定バージョン。色とりどりの「大江戸松﨑 三味胴」を組み合わせれば、手土産としても喜ばれること間違いなし。

ずらりと並んだ品々の中からきっとお気に入りが見つかる

目当ての品物は「大江戸松﨑 三味胴」だけではない。「大江戸松﨑 格子」は頬張ると空気を感じられる食感で、サクサクとした軽さが癖になる瓦煎餅だ。細かく砕いた落花生が生地に潜み、口の中に穏やかな甘みがふわり。お茶だけでなく、コクのある深煎りのコーヒーとも相性がいい。

同じく「大江戸松﨑 黒格子」は、チョコレート入りの生地が特徴。サクサクした生地の食感と、紛れ込ませたカカオニブ(細かく砕いたカカオ豆)のザクザクとした歯触りのコントラスト、濃厚なカカオの味と香りが印象深い。ちなみに、チョコレートとカカオニブは、Bean to Barチョコレート専門店『ダンデライオン・チョコレート』のものを使用。和菓子である瓦煎餅に仕込まれた洋のアクセントが秀逸すぎて胸がときめく。

カカオニブを入れた「大江戸松﨑 黒格子」は、和と洋が融合した甘みがおしゃれ。

リーズナブルで手に取りやすいスタンドパックの揚餅も人気。チャック付きのパッケージは、途中で食べるのをやめて一旦しまっておくことができて便利だが、正直、一つ食べるとたちまちハマってしまい、手が止まらない。食感のよさは言うまでもなく、塩、マヨネーズなどのフレーバーが引き立てるもち米の旨味も魅力。普段のおやつとして常備しておきたい一品だ。

揚餅はマヨネーズの他、塩、チーズ、一味醤油を用意。
揚げ餅は、気軽に手で食べられる親しみやすさもチャームポイント。

品揃えはさらに幅広く、うるち米から作られる草加煎餅も評判。厚焼きの「江戸草加 本丸」から、薄焼きの「江戸草加 西の丸」まで揃う。

現店主である8代目が構想から約10年、多くの試作を経て、2023年に生み出したのが柿の種「松﨑さんちの柿の種」。もち米のしっかりとした堅さと香りが楽しめる自信作となっている。

店内のカフェで甘いものを堪能し、まったりうっとり

店内のカフェもゆっくりできていい。散歩がてら訪れるのも、食料品や日用品の買い出しで商店街を巡り、歩き疲れた時に休憩するのもいい。

定番のあんみつに加え、夏のかき氷、冬のおしることいった季節メニューも好評。素朴な甘みがじわじわ広がり、まったりした気分になってついくつろいでしまう。

店内にカフェを併設。あんみつをはじめ、季節メニューも。

あんみつには、濃厚な味わいのつぶあんを使用。店名にちなんだ、松をかたどった羊羹が愛らしくて目を引く。アイスクリームをプラスしてクリームあんみつにすれば、食べ進めるうちに溶け始めたアイスクリームがあんこと混ざり合い、ミルキーな甘みに変身。最後まで飽きずに食べられ、大きな満足感を得られる。

クリームあんみつ935円。店名にちなみ、松の形をした羊羹をトッピングに。

とろみの強い黒蜜もインパクト大。口に入れるとコクのある甘みが勢いよく舞い、香りが鼻腔まで満たす。たくさん使われている寒天が後味をすっきりさせてくれ、そのメリハリがたまらない。なお、寒天は伊豆の天草から作られているそうだ。

黒蜜を少しずつかけながら食べ進めるのがおすすめ。

東京きっての老舗が商店街で路面店を始め、地元に愛される「街の煎餅屋さん」「街の甘味処」に。ストックしてある揚餅がなくなったらまた訪れよう。

松﨑煎餅 松陰神社前店(まつざきせんべい しょういんじんじゃまえてん)
住所:東京都世田谷区若林3-17-9/営業時間:11:00〜19:00(カフェは〜18:30LO)/定休日:無/アクセス:東急電鉄世田谷線松陰神社前駅から徒歩1分

取材・文・撮影=信藤舞子

信藤舞子
ライター
北海道弟子屈町生まれ、札幌市育ち。現在は東京在住。雑誌、WEBメディアを中心に、街歩きや旅、日本の文化について執筆する。なかでもおやつには目がなく、近著は『東京おやつ図鑑 和菓子編』(交通新聞社)。レコードや着物も好き。

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