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恐竜時代の海竜「魚竜化石」特別展示(2025年8月2日〜31日開催)〜 西日本ではじめて発見された古代生物化石

倉敷とことこ

恐竜時代の海竜「魚竜化石」特別展示(2025年8月2日〜31日開催)〜 西日本ではじめて発見された古代生物化石

「魚竜(ぎょりゅう)」という生物を知っていますか。

最初の恐竜が誕生したときより前の、今から約2億5千万年前に現れた「爬虫類(はちゅうるい)の仲間」で、イルカによく似た姿をした生物です。

2025年8月2日(土)から31日(日)、高梁市成羽美術館に収蔵している化石のなかから、西日本で初めてとなる魚竜の化石が発見されたことを記念した特別展示が開催されました。

展示されている実物の魚竜化石を含む岩塊(がんかい)と、その発見の経緯についてお話を聞いてきましたのでレポートします。

高梁市成羽美術館 化石展示室の紹介

高梁市成羽美術館は、成羽町出身の洋画家 児島虎次郎(こじま とらじろう)の遺徳を顕彰するため、岡山県初の町立美術館として1953年に開館。以来、常設展に加え数々の企画展も催されています。

高梁市成羽美術館 正面より

現在の建物は3代目で、1994年に世界的建築家・安藤忠雄(あんどう ただお)氏の設計により新築されました。安藤氏の建築の特徴であるコンクリート打ち放しのモダンな建物は、内外装ともにひとつのアート作品のようです。

美術館の2階の一角にある「化石展示室」は、近隣で採取された植物化石を中心に、多くの化石が展示されています。

化石展示室

美術館と化石の展示。
少し不思議な組み合わせが生まれた理由は、成羽地区の地層にあります。

成羽の植物化石についてのパネル展示

成羽地区一帯には、今から約2億3000万年前の地層が広がっています。この地層から植物の化石が採取されるため、明治時代から現在に至るまで学術研究も盛んな地域です。

近隣で発掘された化石のひとつ「成羽の珪化木(けいかぼく)」

そのような経緯もあって、地域の自然遺産を保管・収集する目的で、美術館の開館当時(1953年)から化石の展示をおこなっています。

魚竜とは

今回、西日本で初めて発見された「魚竜」とは一体どのような生物だったのでしょうか。

成羽の魚竜と当時の環境

魚竜とは、約2億5000万年前の中生代・三畳紀に地球上に現れたとされる爬虫類の仲間で、イルカによく似た外見をしています。

魚竜についての紹介パネル

名前が似ていることもあり、よく恐竜と混同されるのですが、恐竜とはまったく別の生物です。中生代は海での生活に適応する爬虫類が登場してきた時期で、魚竜もそのうちの一種です。

展示内容の紹介

今回の特別展示は、化石展示室の入口にある一角を使って催されました。

特別展示コーナーのようす

展示では魚竜化石を含む岩塊を中心に、パネルや模型を用いて魚竜や今回の発見の意義がわかりやすく説明されていました。

魚竜化石を含む岩塊

こちらが展示されていた魚竜化石を含む岩塊の実物です。

化石を取り出すために不要な部分を大まかに取り除き、その後表面から削って少しずつ化石を露出させていきます。写真はその途中の段階で、表面に見える細かな白い線状の模様は、岩石を削る工具の跡です。

取材時に展示を観に来られていた地元の来館者のかたからは「裏山から化石が出てくる」との声も。成羽地区の化石が豊富であることをうかがい知れました。

魚竜とイルカの背骨の違い

また、岩塊のX線CTスキャンデータをもとに3Dプリンタにて製作した模型も展示されていました。そのほか、姿や形がよく似ているイルカの骨との比較展示もあり、魚竜と海生哺乳類の違いについてわかりやすくまとめられていて、とても参考になりました。

インタビュー 〜 魚竜化石発見によせて

今回開催された企画展と、魚竜化石発見の経緯について、高梁市成羽美術館 化石部門学芸員の碇京子(いかり きょうこ)さんにお話を聞きました。

高梁市成羽美術館 化石部門学芸員 碇京子(いかり きょうこ)さん

──魚竜化石の発見に至った経緯について教えてください

碇(敬称略)──

今から2年前の2023年夏、当時倉敷芸術科学大学の加藤教授(現岡山理科大学)と、福井県立恐竜博物館の湯川研究員が学生を引率し、見学のため当美術館へ来館されました。

その際に加藤教授が館内に展示しているいろいろな化石を見ているなかで、何かを発見したのです。

あれ?これ骨じゃないの」と言われたので、私と湯川研究員がその場で確認して骨であることがわかりました。その後、骨を調べたところ、魚竜の化石であることが判明したのです。

──今回の発見の成果について教えてください

碇──

今まで日本国内で魚竜の化石が発見されたのは、宮城県の南三陸町での一例のみでした。

西日本では初めてとなる魚竜化石の発見でした

成羽での発見は国内で二例目、西日本では初めてとなる魚竜化石の発見で、学術的にも大変価値のあるものです。

化石の時代は異なるものの、千葉県でも成羽と同時期に魚竜化石が発見されているため、ともに二例目として扱われています。

成羽で発見された魚竜化石は、後期三畳紀の「ノーリアン」という時代(約2億2000万年前)のもので、この時代の魚竜化石が日本で発見されたのは初めてのことです。

魚竜は中生代の長きにわたり、多種多様な種類が存在しました。故に、魚竜の化石自体は世界各地で数多く発見されているものの、後期三畳紀の魚竜化石は比較的発見事例が少ないです。

発見されても断片的なものが多く、全体像がつかめていない魚竜も多いんですね。

そのようなこともあり、今回の発見は魚竜の進化を解明するうえでも重要なものでないかと思っています。

3Dプリンタで作られた魚竜化石の復元模型も展示されていました

──展示公開のあと、魚竜化石は研究のため福井県へ行くと聞いています。福井県ではどのようなことをされていますか

碇──

福井県でおこなっているのは、おもにX線CT(コンピュータ断層撮影)を用いた非破壊検査による分析です。

こちらの化石が含まれている岩塊が非常に硬いため、岩石を削って化石だけを取り出すことが難しいとわかってきました。なので、X線CTを使って岩塊内部の化石を撮影し、詳細な化石(骨)のデータを取っています。

X線CTによる非破壊検査自体は、今までもおこなっているのですが、今後はより細部の情報を得たいと考えています。

X線CTで魚竜化石を含む岩塊内部を調査したところ、多くの骨が発見されました

──今後の展開についてお聞かせください

碇──

前述のX線CTによる分析などを通じて、今後も新しい情報を積み重ね、学術論文としてまとめていきます。その過程で、新たな発見も得られると思います。

その成果については随時皆さんに発表していく予定ですので、今後の動向に注目いただければ幸いです。

おわりに

今回の取材を通して、成羽地区が昔から化石がよく出る場所であったことと、さまざまな偶然が重なって魚竜化石が発見されたことがよくわかりました。

成羽の地層には、未知なる古代生物の化石がまだまだ多く残されているのではないかと考えると、何だかロマンがありますね。

魚竜化石は成羽美術館での展示終了後、2025年9月13日から27日にかけて、岡山理科大学 恐竜博物館でも特別展示をおこないました。

今後の研究で明かされていく発見の数々に、引き続き要注目です。

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