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20年売れないミュージシャンを続ける私が『国宝』を観て眠れなくなった理由

ロケットニュース24

日本の実写映画をほぼ見ない私(中澤)。でも、そのことをよく理解している友人が誘ってきた映画が『国宝』だった。私みたいな実写に興味ないクラスタでも名前は知っているし誘われるくらいだからガチで流行ってるんだなー。

まあ、日本の実写映画界を掘るほどの意欲がないというだけで、見たら見たで物語自体は楽しめる。良い機会だし、断る理由もない。そこで行ってみたところ夜眠れなくなった

・共感できるか?

多分、その友人が私を誘ってきた理由は『国宝』が表現者に関する映画だからだと思う。私は売れないながらも20年バンド活動をしている。43歳の今、同世代は続けている人の方が珍しくなってきた。辞めた人はもちろん、失踪したヤツも死んだヤツもいる

一方で『国宝』は歌舞伎の世界を描いた作品。なので畑違いなんだけど、ステージの上に立つという共通点はある。むしろ、現実を知りすぎているバンド映画とかだと、煌びやかさを誇張しすぎた演出に失笑してしまうことが多いため、ちょっと違う畑の方がまだしも共感できるかもしれない。

それくらいの温度感で見てみたところ、むしろ他人事に思えなさすぎた

・ステージ前の気持ち

もちろん、私は『国宝』に出てくるような人物ほど成功していない。が、それゆえにエンタメの世界において、才能が正しく評価を受けるわけではないという現場を嫌というほど見てきている(私に才能があるという話ではない)。描かれているのは天才の人生なのに、そのじわじわした辛さに共感せずにはいられなかった。

特に自分のことのように感じてしまったのは、大舞台前の喜久雄が鏡の前で「俊ぼんの血が欲しい」と泣くシーン。そうそうこの感じ! 大舞台に出ていく前って何よりまず怖いのだ。なぜなら一発勝負だから。人によるかもしれないけれど、少なくとも私は1000回以上ステージを経験した今でもその気持ちが一番強い。

・闇の中を突き進んでる

ステージ前が「ワクワクするぜ!」ってテンションだけの表現はバンド作品に比較的多くて、バンドに対する幻想がそうさせてると思うけど、正直言うとそれは心臓に毛が生えすぎだと思う。心臓がゴマフアザラシの赤ちゃんくらいもふもふだ。そんなヤツおらんやろ。もしいたら嫌だし、一緒にバンドとかできなさそう。

強がりなら分かるけど、その表現も私からすると子供すぎる。感情が襲って来る順番としては、その状態からステージに出て真っ白になった後、終わった後の楽屋で「今日良かったかも」とぼんやり思い返す感じである。この最後の「今日良かったかも」を目指して闇の中を突き進むのだ

・なぜ

まずその気持ちに共感できるから、ストーリーがより重くのしかかってくる。結果として映画を観終わり帰宅して布団に入った後で色んなことを思い出し考えてしまった。これまでのこと、これからのこと、死んだ友達、自分はどのように生きて死んでいくのか。何より、なぜ表現することをやめないのか?

そんなに大変ならやめればいい。でも、やめられない。じゃあ、なぜ続けるのか? その問いは20年バンド活動をやっている自分の中でもハッキリとした答えが言えないものだ。「好きだから」だけで片づけられると違うように感じる妄執みたいなものがある。でも、それが何なのかはよく分からない。

胸の奥に確実に存在するにもかかわらず言葉にならない気持ち。そのずっと掴めなかった棘みたいな答えが、苦悩や葛藤や苦難を描くことにより浮き彫りにされているように感じた

・言葉を超越したもの

吉沢亮さんや横浜流星さんの演技が素晴らしいのはもちろんだけど、その奥に永遠のテーマがある本作。言葉にできないからこそ突き刺さる。そんな言葉を超越したものがあった。

なお、読売新聞によると、『国宝』は第98回米アカデミー賞国際長編映画賞に出品されるという。舞台は日本ならではの設定だけど、投げかける問いは言葉の壁を超えていると思われるだけに、個人的には結果が興味深い。

参考リンク:国宝、読売新聞
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

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