くら寿司「うにといくらフェア」を食いに行ったら地味にヤバい魚がいた / これを寿司で全国展開は気合が入ってる
2024年11月29日から、くら寿司で始まった「うにといくらフェア」。目玉は新物のウニとイクラ。そしてAIを駆使して養殖された寒ブリなど、同時に販売開始となるいくつかのネタが大きく扱われている。
なるほど、それらはもちろん美味いのだろう……しかし、真に注目すべき寿司はそれなどではなく、恐らくコイツだと思う。これを全国で流通させるのは、実は凄いと思う。
【写真】他にも注目の寿司がたくさん / なんとAIで餌を管理した寒ブリも…!
・対象寿司
さて、くら寿司のキャンペーンにおいて、正確にどれがどのキャンペーンの対象寿司なのかはよくわからないが、とりあえずタブレットで「キャンペーン」のタブで表示される寿司は、恐らくその時の最もタイムリーな寿司なのだと思われる。
PUされていた寒ブリとかウニも入ってるしな。ということで、この中から一通り美味そうなものを選んでオーダーしていく。
こうして選ばれし7品。全てフェア対象か、同日から販売開始のネタではないかと思う。さて、それではこの中で、私が真に注目すべきだと感じた寿司はどれだろうか?
・シイラ
もったいぶらずに行こう。答えはこの「柚子胡椒 漬けしいら(115円)」だ……!
は? シイラじゃん。そうなるかもしれない。確かにシイラはウニやイクラと比べると、いまいちパンチ力に欠ける……ように思えてもおかしくない。
しかし待ってほしい。そして冷静に考えれば気付くはずだ。海辺の街を除き、シイラの寿司にありつける機会は、そう多くないことに……!
シイラ自体はまあまあコモン。釣りの対象としても人気だ。そのクセの無い白身が様々な料理に合う万能選手である。
加熱調理用はスーパーでもそれなりに流通することがあり、から揚げやムニエルなどでよく食べられる。しかし刺身用は港町でもない限り、なかなか無いはずだ。
実はシイラには商業的にあまり人気ではないという側面がある。主な理由は、恐らく鮮度維持の難しさと、歩留まり率の低さだろう。
釣り人などは実感したことがあると思うが、その日釣ったシイラでも、持って帰る間のちょっとの時間ですぐに傷んでしまい、何か微妙にマズいということになる。
それくらい鮮度の劣化が早く、スコンブロイド食中毒のリスクが高い。昨今では冷凍技術が凄まじいので、すぐに凍らせてしまえばどうということもないが、傷みやすい魚が扱いにくいことに違いはない。
沖縄で給食にシイラのフライを出して集団食中毒なんていうニュースもあっただろう。また、これはシイラに限った話ではないが、シガテラ毒やクドア食中毒のリスクも否定できない。
そして歩留まりの悪さだ。島根県による調査「シイラの加工適性に関する試験」だと、歩留まり率は平均で約45%だったもよう。ぶっちぎりで悪いわけではないが、よくも無いのだ。
加工の手間も無視できないかもしれない。シイラは体表に食中毒の原因となる細菌を保持しがちだと一般的に考えられており、刺身で食べるなら体表を真水でよく洗うべきだとされている。まあ工場とかならその辺はどの魚でもやると思うので、そうでもないかもしれないが。
これらネガティブな点と需要を考えると、積極的に商業利用したくなる魚ではないのはお分かりいただけるだろう。それなら普通にマグロとかやってた方が良い。
そんなわけで、少量を提供するだけの海辺の料亭とかならともかく、内陸部にも多く店舗を持つ大型チェーンが大量に生食用に加工するというのは、だいぶ気合の入った話だと思うのだ。
あくまで鮮度管理と輸送、加工の問題なので、現代では金さえかければどうとでもなると思うのだが、注目に値する取り組みであることは間違いない。
前に くら寿司はパンガシウス……つまりナマズを謎に出していたが、社内にその手のラインを攻めたがるグループがいるのだろうか。
ということで「うにといくらフェア」を目的に くら寿司に行く皆さん。恐らくウニやイクラよりも実現難易度が高かったであろうシイラにも注目してみてください。柚子胡椒風味のパンチ力強めでクセになる風味だったぞ!
参考リンク:くら寿司、島根県(PDF)
執筆:江川資具
Photo:RocketNews24.