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TOSHI-LOWが弦楽四重奏とともに届けた、BRAHMANの名曲たち 『ROCKIN’ QUARTET 第5章』

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『ROCKIN' QUARTET 第5章』 撮影=高田梓

ROCKIN’ QUARTET 第5章 2021.7.14 Billboard Live Tokyo

ヴァイオリニスト・NAOTO率いる弦楽四重奏と名だたるロックボーカリスト達とが行ってきたライブシリーズ『ROCKIN’ QUARTET』へ、ついに満を持してこの男が登場することとなった。カルテットのみで届けたライブ冒頭のインストゥルメンタル「Explorer 改」が終わり、2階席後方から現れて紅く染まるステージへと進んでいくのはBRAHMANとOAUのフロントマン・TOSHI-LOWだ。上がカッターシャツにジレ、下はタックパンツで足元のみスニーカーという粋な着こなしがビシッと決まっている。

※以下、曲目にも触れながらライブの模様を振り返っていきます。配信で視聴予定かつネタバレを避けたい方は後でお読みください。

さて。僕にとって、この『ROCKIN’ QUARTET』史上最も、原曲の持つイメージとストリングスアレンジが結びつきづらいのが今回だった。という事前の印象に、同意していただける方は少なくないと思う。しかも、もともとヴァイオリンがいるOAUの曲ならまだしも、今回はカバー曲を除けば全てBRAHMAN曲からセットリストが組まれていたから尚更だ。で、BRAHMAN×ストリングスはどんな化学反応を起こしたのか?という問いへの回答を、初っ端の「真善美」からまざまざと見せつけられることとなる。

ビオラやチェロの中低音域を前面に押し出してループするサウンドに乗せ、ステージ上を闊歩しながら語りかけるように、檄を飛ばすように、握りしめたマイクに言葉を乗せていくTOSHI-LOW。驚いたことに、セカンド・ヴァイオリンの柳原有弥によるシャウトまで飛び出す。四重奏メンバーがコーラス等に参加するという、おそらくこのシリーズを通して見ても初めての試みは、後のMCでNAOTOが語っていたように、「弦楽のマナーに原曲を当て嵌めるのではなく、原曲の持ち味をどう弦楽で再現するか」という『ROCKIN’ QUARTET』の哲学にのっとり、BRAHMANの曲が持つ激しさやスピード感と向き合うために必要不可欠な要素だったから。たった数本のライブのために妥協せず手を尽くす、つくづくストイックで贅沢なライブだ。

「DEEP」や「BASIS」といった初期の、今以上にパンキッシュな楽曲たちも演奏された。指板をタップする奏法を交えたりはするものの、ビートを刻む楽器が不在の編成なのに、アンサンブルの向こうから疾走する2ビートや8ビートのドラムが聴こえてくるような気がするから不思議である。会場がビルボードで、演奏しているのは弦楽四重奏にも関わらず、座席から身を乗り出すようにして拳を突き出す観客が何人もいる光景は、この『ROCKIN’ QUARTET』ならではだ。

逆に、「あ、これはストリングスがよく似合うだろうなぁ」と想像しやすい曲もいくつかあって、その筆頭だった「鼎の問」はやはり出色の出来。軽やかに奏でられる3拍子のリフの可憐さと、じっとスタンドマイクと対峙して唄うTOSHI-LOWの歌の生々しさ、力強さとのコントラストがあまりに凄絶だ。中盤、ピアノが加わってからの「最後のニュース」もまた然り。

30年以上前に発表されながら、今なお続くコロナ禍をはじめとした混迷の世を予見していたような井上陽水のカバーはOAUのライブ等でもお馴染みだが、静謐で穏やかな前半~中盤から、間奏を機に一気に演奏の厚みが増し、シャウト交じりのクライマックスへと繋がる流れはあまりにもドラマティックだった。言葉を、その意味を、メッセージを、「伝える」という部分では右に並ぶ存在がちょっと思いつかない、TOSHI-LOWの歌の凄みにただただ圧倒される。

水面のイメージが投射される中で届けた「ナミノウタゲ」、TOSHI-LOWが軽くステップを踏みながら歌ったミドルナンバー「空谷の跫音」を経て、本編の最後を飾ったのは「霹靂」だ。ウッドベースのように指で弾くチェロの音色とともに始まり、弓でスプラッシュシンバルを叩いていたNAOTOがヴァイオリンを奏で出すタイミングで、堰を切ったように演奏が一気に加速。元々緩急の際立つ曲だが、激しいビートや歪んだエレクトリックサウンドがなくともその迫力は健在で、中核を成すTOSHI-LOWが大きく手を拡げてラストのヴァースを歌い切ると、場内からは万雷の拍手が降り注いだ。

奔放なMCも大きな見どころだったこの日。いささか奔放過ぎたがゆえにどこまで配信版に反映されるかは不明だが、アンコールでTOSHI-LOWが語った内容が特に胸に残った。ライブハウス育ちで楽譜も読めないような自分たちとは相容れない存在だと感じていた、音大や芸大を出て弦楽の道を選んだ人も、それぞれの道を究め仕事として生きている同志であるということ。かつての自分が音楽に壁を作ってしまっていたことを自戒しつつ、こう続けた。

「また一個、帰ってくるバンドが増えました。ROCKIN’ QUARTET!」

そうして演奏されたのは「今夜」。ステージを上手から下手までまわりながら丁寧に歌い上げるTOSHI-LOWと、弦楽カルテットとピアノとで生み出す音たちが、それまで以上にギュッと一丸となって聴こえたのは気のせいじゃないだろう。全ての曲目を終え、背後の紗幕が開いて露わになった夜景を背負ったTOSHI-LOWが、指揮者のようにカルテットに起立を促したあと、悪戯っぽく笑いながら客席側にも同じ動作をしてみせた。結果、ちょうどスタンディングオベーションのような格好となって、大喝采に包まれながらライブは幕を下ろしたのだった。

取材・文=風間大洋 撮影=高田梓

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