【単独インタビュー】第62回百想芸術大賞でテレビ部門大賞!リュ・スンリョンが語る「キム部長の物語」への思い
韓国のゴールデングローブ賞とも称される『第62回百想芸術大賞』でテレビ部門大賞に輝いた俳優リュ・スンリョン。JTBCドラマ『ソウルの家から大企業に通うキム部長の物語』で彼が演じたキム・ナクスは、社会が与えた肩書きをすべて失った末に、初めて本当の自分を見つけ出す男だった。
ナクス(落水)・・落ちる水。その名の通り、どん底まで落ちて初めて流れとなり、川となり、やがて海へとたどり着く物語。多くの人がそのドラマを前に静かに涙を流したのは、そこに私たち自身の姿が映し出されていたからかもしれない。
映画とドラマの世界を行き来しながら、休むことなく走り続けてきた彼には、もうひとつの顔がある。それは、済州オルレウォーキングフェスティバルの常連参加者であり、EBS『白頭大幹文化遺産探訪記』(原題:백두대간 문화유산 답사기)では自らの足でこの地の文化と歴史をたどってきた旅人としての顔だ。
速さと競争が美徳とされる時代の中で、彼は黙々と「ゆっくり歩く人生」を実践し、その価値を伝え続けている。今回、華やかな受賞歴よりも、長い年月をかけて刻んできた足跡の方が、より深く心に響く俳優リュ・スンリョンにお話を伺った。
Q1. 13年ぶりに百想芸術大賞の大賞を受賞されました。第49回の映画部門大賞受賞時と比べて、今回の受賞にはどのような違いを感じられましたか?
その間に歳月も流れ、私自身も年を重ねました。
当時と変わらず素晴らしい候補者の皆さん、そして優れた作品の数々とともに受賞できたことを大変光栄に思っています。
今でも信じられないほどで、心から感謝しています。
Q2. 映画部門・テレビ部門の大賞を制覇した初の俳優となられました。この記録は、俳優としてどのような意味を持つものだと感じていますか?
記録そのものよりも、これからさらに謙虚でなければならないという気持ちの方が先に立ちます。
特別な意味を持たせるというより、これまでそうしてきたように、一つひとつの作品と役に誠実に向き合う俳優であり続けたいと思っています。
Q3. 受賞スピーチでは、「ナクス (落水)」という名前に込められた意味について語られていました。その言葉を準備されたとき、どのようなお気持ちだったのでしょうか。
この時代を生きるすべての世代の方々に、少しでも共感と慰めを届けたいという思いがありました。
私自身もこれまでの人生の中で、そしてこのドラマを通して多くのことを学んできましたので、その気持ちを皆さんと分かち合いたいと思いました。
Q4. キム・ナクスという人物に感情的に最も深く共感した場面や瞬間があるとすれば、どのような部分でしょうか。
一家の大黒柱として責任を背負う姿に、最も強く心を動かされました。
表向きは強がっていても、内面では絶えず不安や恐れを抱えながら生きている姿が、私たちの身の回りにいる多くの人々と重なって見えたからです。
Q5.「誰もがそれぞれの場所で踏ん張りながら生きている時代」とおっしゃっていましたが、リュ・スンリョンさんご自身にも、そのような“踏ん張る”瞬間はありましたか。
振り返ってみると、人生そのものが踏ん張ってきた時間の連続だったように思います。これからもきっとそうでしょう。
ただ今は、ただひたすら耐えるのではなく、もう少し柔軟に受け止めながら前へ進んでいきたいと思っています。
Q6. Disney+『パイン ならず者たち』のオ・グァンソク役も高い評価を受けました。キム・ナクスとオ・グァンソクという全く異なる2人のキャラクターには、どのようにアプローチされたのでしょうか。
2人は生きてきた環境や置かれた状況、そしてそれぞれの物語こそ異なりますが、結局のところ、人間が抱く欲望や責任感、恐れといった感情は共通していると思いました。
その共通する感情を土台にしながら、それぞれの人物ならではの個性や質感を見つけていこうと努めました。
Q7. 審査員からは「今年の作品を語るうえで、リュ・スンリョンを抜きには語れない」と評されました。ここまで作品に集中し続けられる原動力は何なのでしょうか。
俳優は、私が本当にやりたかった職業です。
好きな仕事を続けられていることへの感謝の気持ち、そして一家の大黒柱としての責任感が、いつも私を前に進ませてくれる原動力になっています。
Q8. 50代の中年男性を主人公にした物語が、これほど多くの視聴者の共感を集めた理由は何だと思われますか。
年齢や世代に関係なく、誰もが心の中に何らかの欲望を抱えて生きています。
そして、その裏には準備できていなかった不安や、簡単には解消できない悩みが存在します。そうした感情が、多くの方々の共感を呼んだのではないかと思います。
Q9.『ソウルの家から大企業に通うキム部長の物語』を選んだ理由として「率直さ」を挙げられていましたが、俳優としてその率直さを画面に表現するために、特に意識されたことは何でしょうか。
何よりも「共感」を大切にしました。
視聴者の皆さんが身近で一度は見かけたことのあるような人物、あるいは自分自身の過去や現在、未来を重ね合わせられるようなリアルな姿をお見せしたいと思っていました。
Q10. 演技活動以外にも、済州オルレウォーキングフェスティバルでの祝辞や、EBS『白頭大幹文化遺産探訪記』への出演など、歩くことや文化活動を継続されています。多忙な俳優生活の中でも、そうした活動を続けている理由を教えてください。また、今後挑戦してみたい作品や活動があればお聞かせください。
私にとっては、道を踏み外さないための「健全な逸脱」のような大切な時間です。
戻るために離れ、満たすために空にする。そうした時間を持つことで、俳優としても人生や人をより深く見つめられるようになる気がします。
これからも、共感や癒やし、そして応援のメッセージを届けられる作品に出会いたいと思っています。
また、済州オルレのような活動を通じて、人々と心を通わせる機会もこれから先ずっと大切にしていきたいです。
(写真 = Prain TPC / インタビュー = Danmee)