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ブラームスと柴犬に恋して~バイオリニスト 大谷康子さん

TBSラジオ

大谷康子さん(Part 2)
宮城県出身の日本を代表するバイオリニスト。東京芸術大学音楽学部在学中からリサイタル、NHK交響楽団、モスクワフィル、スロバキアフィルなど国内外の著名なオーケストラと多数共演し、2010年には文化庁芸術祭大賞を受賞。現在は東京音楽大学と東京芸大ジュニアアカデミーで教鞭をとっています。

JK:ご両親は音楽に関しては?

大谷:全く分からないです。楽譜を反対に置いといたって分からないです(^^)

JK:だけどバイオリンってちょっと特殊でしょう。スズキ・メソードですか?

大谷:そうです。自分では覚えてないですけど、2歳の時に仙台で、お隣の東北大の先生が弦楽器の発表会みたいなのに連れてってくださって。それで帰ってきてから親に、「バイオリンをどうしても弾きたい」って言ったんだそうです。

JK:本当ですか?!

大谷:アルバムに父が書いてるから嘘じゃないと思うんですけど(笑)本当に今思っても、これだけ好きなものに出会えて、もし出会ってなかったらって思ったら恐ろしくなっちゃうぐらい。

JK:運命ですね~! 天命ですよ。

大谷:本当、天職だと思ってます。

出水:弾いた時のひらめきというか、ワーッというような喜びみたいなものって覚えてらっしゃいますか? バイオリンを初めて手に取った時。

大谷:とにかくあの頃は真面目だったみたいで、言われたことは一生懸命やる。それでまた先生が素晴らしい方で、西崎真嗣先生という方だったんですけどね、みんなバイオリンを大好きにしてくださった先生なんですよ。しかもものすごくきちんと教えてくださった。教科書みたいなのに書いてあるものだけじゃなく、例えばやりにくい部分があるとそこだけを取り出して、いろんな工夫してくださって「こういう練習をしてください」って。ですから今、その先生のやり方をそのまんま学生さんに言っても通用する。

JK:それがスズキ・メソードっていうの?

大谷:その先生がスズキ・メソードに最初入ってらした。私が音を間違っちゃったりするとしますね、ちょっと音が低かったとか。そうしたらもう大変ですよ、「やっちゃん、やっちゃん」って始まって、絶対そこがちゃんと直るまで次にいけない。

出水:じゃあ厳しいわけですね。

大谷:でも愛情を持ってやってくださって。いつもかなり厳しいわけですよね、そうすると帰りには「またダメだったな」みたいなのがあるじゃないですか。すると私の母も、「あれだけ康子のことを上手にしてあげようと思って、一生懸命言ってくださってありがたいね」ってずっと言い続けてました。

出水:8歳の時に「10 Children」というのに選ばれまして、アメリカへ演奏旅行に行かれたんですよね。

大谷:スズキ・メソードの中から10人の子供を選んで、アメリカに演奏旅行させてくださって。よかったです、あれが! 国連とかに子供で行きまして、演奏しますでしょ。

出水:皆さん耳が肥えてる方の前で!

大谷:終わったら皆さんが飛んできてくださって、それこそ頭撫でたり・・・それが嬉しくて! 金髪で青い目なのになんか褒めてくれる。英語も何もその頃わからない、だけどなんかすごく褒めてくれるんだっていうのがすごくありました。子供でもちゃんと認めてもらえる、言葉通じなくても、全然違うところで背も高い大柄の人たちともつながれるっていうのは、その時からだと思います。

JK:アメリカニューヨークに行って、一流のところで最初から、子どもの頃から!他にもいるわけでしょ、何人か。

大谷:あと9人、お友達と。面白いのが、スズキ・メソードの人はいろんな分野に行かれる。一人のお兄ちゃんは今物理の方で、日本で有名な物理学者に東京大学の教授になった。バイオリンももちろん行った人もいますけど、早野龍五さんっていうお兄ちゃんは今、スズキ・メソードの会長さんになってます。

出水:大谷さんはいつ頃のタイミングで「音楽家として生きていこう」って決めたんですか?

大谷:アメリカ行った時に、これが好きだなっていうのはすごく思いましたし、ずっとそこからブレはないです。

JK:バイオリン以外に楽器がたくさんあるじゃないですか。他には興味なかったんですか?

大谷:その頃は本当にバイオリンしか知らなくて。受験のためにピアノをちょっとやったぐらいなんですけど、音楽高校に入ったらチェロもいいな、打楽器もやってみたいな、っていろんなものがやりたかったんです。でも副科の方でチェロをすると、チェロは手を広く開けますよね。私は手がちっちゃいし、「痛めるからやっちゃいけない」と先生に言われたり・・・ハーブもやりたかったです。そしたら「マメができるから」ってみんなにいろいろ言われて。だから和声とか作曲の方を教えていただいたりしました。

JK:大谷さん、マサカも今までいろいろあるでしょ。代表的なマサカは何ですか?

大谷:例えばピアニストと私で一緒に2人で演奏会に行くことが多いんですよ。曲順もプログラムで決まってるわけですよね。私は最初が「愛の喜び」だと思って、パンパパ~ン♪って元気よくいこうとするんですけど、なんか様子が変だ、あれ?と思ったら、ピアノがポンポロロロン♪って「序奏とロンド・カプリチオーソ」っていう全然違う曲が始まって、「えーウソ~!」と思って切り替えたり。

JK:間違いですか、それとも思い込み?

大谷:私の思い込みか、プログラムはどっちが正しかったんだか・・・ちょっと忘れたけど、もし私が先に元気のいい曲で弾いちゃったら、彼女慌てちゃったでしょうね!

JK:早いもん勝ちですね(笑) やってると弦が切れるとかは?

大谷:それが今のところ50年間、子供時代も含めて、全然切れたこと一度もないんですよ、本番では!オーケストラでよくクイズありますでしょ、もし誰かが切れたらどうするか?って。すぐに後ろにどんどん回して・・・って、それもないんですよ!

JK:それよく聞きます。後ろの人、後ろの人にね。最後の人がこっそり・・・

大谷:最後の人が予備で張ってある楽器を取ってね。時々クイズがありますからね、ぜひ覚えておいてください。

出水:わぁ面白い! 初耳でした。でも大谷さんは優しくというか、何かあるんでしょうね、弾き方が。

大谷:優しくはないと思いますよ(^^;)

JK:すごく強いと思う(笑)あれって力いるんじゃないですか?

大谷:いや力というよりか、心の力です。

JK:心が! いいこと言いますね。手は勝手に動くわけですね、心がハマれば。

大谷:そうです。私、読売新聞の中で「なりきる演奏」って書かれたことあるんですよ。「風と共に去りぬ」って映画を見た後、ビビアン・リーのスカーレット・オハラになりきちゃって! 「なんであんなことレッド・バトラーに言っちゃったのかしら?」とか後悔して、恋愛もしたことがないのに映画に恋愛しちゃったっていうか。本当に辛くて辛くて、あんな辛かったこと今まで一生でないくらい。

JK:えーっ! 映画の主人公になっちゃったのね!

大谷:だからどの曲も結構そこに入れ込んでなりきる。半分は冷静でいるはずなんですけど、でも半分は入り込んじゃう。

JK:一途って感じですね。だからここまでずっと続くのよ。それが専門家ですよ。探求できる人ですよね。

大谷:まあ「継続は力なり」って言いますけど、本当に音楽を通じていろんな人と仲良くなったり、こういう出会いをさせていただいたり。そういうのも2歳の時にバイオリンに出会ったということが、全ての始まりでしたね。

出水:大谷さんリサイタルが控えてるんですよね。5月18日、渋谷の白寿ホールで「デビュー50周年記念 大谷康子バイオリンリサイタル~ブラームスの世界」。プログラムにもこだわっているそうですが?

大谷:ブラームスは私自身も大好きな作曲家で、バッハからの正統的なクラシックを踏襲してきた上に、自分の斬新な解釈を入れて作曲した。ロマンティックであるけれども重厚でもあって、大好きな作曲家なんですね。もしブラームスが生きてたら、飛びついちゃいたいぐらい大好きなんです(*^^*)

大谷:そのブラームスが大好きだったのが、師匠であるロベルト・シューマンの奥さんのクララ・シューマン。ブラームスは当時の大ピアニストだったクララさんに憧れたわけですよ。シューマンが亡くなった後も最後まで尽くすわけです。純愛物語ですよね。本当のところはどうだったかということは無しにして(笑)とにかくブラームスの世界でクララ・シューマンの作品を入れないわけにはいかないと思ったから、クララの作品「3つのロマンス」を入れています。ブラームスが喜んでくれるんじゃないかな、って思ったわけです。

JK:そういうストーリーがあって聴くといいですね!

出水:大谷さん、今後何かやってみたいことってありますか?

大谷:山のようにあるんですけど、時間との戦いみたいところがあるんですけれども・・・落ち着いたら、またウクライナは絶対にこれは行くと思います。それ以外にも食べることが好きだからお料理とかも大好きですし・・・あと犬が好きなんですよ。次に生まれたら犬になりたいと思って。

JK:飼うほうではなくて、なりたいほう?

大谷:これを言うとみんなおかしいんじゃないかと思うんだけど、前にYouTubeで小春ちゃんっていう犬がすごく大好きになって。今まで人間でもこんなことしたことないのに、バイオリンを聴いてもらいたくて、連絡を取ってもらって会いに行ったんですよ、神戸まで!

出水:柴犬ちゃんが好きになって?

大谷:本当にかわいいし、賢いと思って、本当に行っちゃったのね。コミュニケーションが取れるように、その子が大好きな納豆までぶら下げて行って(笑)でもまさかの痛いくらいバーンッて当たってきたんだけど、バイオリンを弾いたらスッとちゃんと聴いてくれたの!

JK:分かるのね~! 良い相手が見つかりましたね。

大谷:ちょっとまさかの話をしてしまいました(笑)

(TBSラジオ『コシノジュンコ MASACA』より抜粋)

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