「あと10分!」が止まらない子が変わる。ゲームや動画との“ちょうどいい距離感”の育て方
臨床心理士・公認心理師のyukoです。ゲームや動画に夢中の子が多い今、「あと10分!」となかなか切り替えられなくて困っている親御さんも多いようです。なぜ気持ちの切り替えが難しいのか、どのような習慣で切り替えられるようになるのか。ゲームや動画との距離の取り方を考えてみましょう。
「あと10分だけ!」「いい加減にしなさい」を繰り返す毎日にうんざり
6年生の息子は毎日「あと10分だけ!」とゲームの時間を引き延ばそうとする。やめるよう声をかけると「今いいところだから!」と反発し、なかなか自分からやめられない。宿題をやっているかと思ったら動画を開き、だらだらと見ていることも。「いい加減にしなさい」と叱ると、本人も「やめたいのにやめられなかった」と罪悪感を抱き、イライラして家の空気も重くなる。ゲームや動画と、どうやって付き合っていけばよい?
ゲームや動画の“止まりづらさ”と“親子の対立”は小学生の親御さんの多くが抱える悩み。
その子が最も夢中になるコンテンツであったり、友達同士の会話の中心であったりすると余計に執着しやすくなります。
子どもたちの生活とは切り離せなくなってしまったゲームや動画。
どのように距離をとっていけばよいのかを考えます。
デジタルとの“ちょうどよい距離感”を育てる3つの方法
ゲームや動画は、子どもの世界の大きな一部です。
そのためデジタルを排除しようとするのではなく、「自分で使い方を選ぶ練習の場」と捉えるのが第一。
まずは「目的を言葉にする」
だらだら見てしまう子は、まず”なんとなく動画を見る時間”を減らします。
ダラダラ見が癖になっている子に対しては、見始める前に「何のために見るの?」と尋ねる習慣を作るのがポイント。
・息抜き
・友達と話題を合わせたい
・攻略を調べたい
・好きなジャンルの研究
目的は「なんとなく」以外なら何でもOKとします。
目的を言うだけで脳が「終わり」を意識しやすくなり、ダラダラ時間が自然と減り、時間を守りやすくなります。
「前と後の気持ち」をメモする
臨床現場ではよく、”気持ちの観察”を行います。
お酒を飲みすぎてしまう人やタバコがなかなかやめられない人は、どんな気持ちが障壁になっているのか、飲む前・吸う前と飲んだ後・吸った後の気持ちにどのような変化があるのかを観察してみるのです。
ゲームや動画に依存気味になっている子に対しても”気持ちの観察”は有効です。
方法は、使う前の気分・使った後の気分を話したりメモしたりするだけ。
・ゲームの続きが気になる、早くやりたい。→楽しかった・すっきりした。
・ゲームのこと以外考えられない、とりあえずやりたい。→いくらやっても足りない。友達はもっと先に進んでるんだろうな。
などと、言葉にして記録していきます。
加えて、時間通りにやめられた日/やめられなかった日もメモしておくのがポイント。
1~2週間観察していくと、「疲れてるときに長くやるとイライラが増える」 「息抜きなら短時間で十分スッキリする」など子どもの癖が見えてきます。
癖に気づくと、子どもとゲーム・動画との距離の取り方のヒントが見えてくるでしょう。
自分で管理できている感覚を育てる
親が厳しく叱ったり、罰を課したりすることでルールを守っている子もいます。
その場ではルールを守れるため有効ですが、「何のためのルールかは知らない。親が怒るから」という理解に留まってしまうケースが多いよう。
なのでルールは短く端的に、”自分で選ばせる”ものにするのがおすすめです。
例えば、
・使う目的を言う、終わりの時間を自分で宣言する、終わったら気分をひと言だけ共有する
・自分でタイマーを設定し必ず守る、宿題を終わらせたあとリビングで行う、気持ちの記録をしておく
”管理されている”感を減らし、自分のために守るルールと意識していけるとよいでしょう。
これからの子どもたちは、スマホ・ゲーム・AIと共に生きていきます。大切なのは“遠ざける教育”ではなく、 “適度に距離を取りながら使える力”を育てること。
ゲームや動画を”敵”として立ち向かうのではなく、子どもを育てる”教材”としてうまく利用していけるといいですよね。
yuko/臨床心理士・公認心理師