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焼き鳥缶で3つのレシピ!登山好きアナウンサーが考える「山ごはん」と防災

Sitakke

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HBCアナウンサーの堀内美里(ほりうち・みさと)です。

登山をして、ごはんを食べる…いわゆる「山ごはん」が趣味の私。
いろいろな環境で料理を作ってみましたが、山で料理をするときは水や電気がない状況。

断崖絶壁の山頂でホットサンド(北海道・黄金山)

あれ?これらのグッズやアイデアって、災害時にも使えるのでは?

今回は「山ごはん」をヒントに、断水・停電の状況で食事はどう用意するかを考えます。

連載「堀内美里の言いたいことは山々ですが」

工夫次第で「お気に入りの食材」が防災食に

災害時は、水や電気などのライフラインが途絶え、復旧まで数日から1週間以上かかることがあります。

一般社団法人「防災安全協会」の事務局長・水口健さんは、「いざというときでも、工夫次第で料理はできる。大切なのはアイデア」と話します。

今夜にも台風が来ると予想されたある日、水口さんが夕方にスーパーに寄ると、周囲の人はカップラーメンや菓子パンなど、すぐに食べられるものを買い占めていました。反対に、肉や野菜などの生鮮食品を買う人は少なかったといいます。

水口さんは、肉や野菜と「鍋のもと」を買って帰りました。自宅にはカセットコンロと水の備えがあるため、停電が起きたとしても鍋を作れると考えたのです。

「普段からやっている鍋も、視点を変えると防災食になります。反対にカップラーメンは水が必要なので、水も買っておかないと、断水になったときは困ってしまう」

天気予報を見て準備ができる災害もありますが、地震のように、今起きてもおかしくない災害もあります。水口さんは普段から自宅に、カセットコンロと「長期間保存できる、お気に入りの食材」を備えておくことを勧めます。

ただ備蓄しておくだけでなく、賞味期限の古いものから消費し、また買い足して常に一定の食品を確保する「ローリングストック」という方法があります。「お気に入りの食材」を見つけることは、ローリングストックの実行に有効だといいます。

「米やみそ、ヨーグルトなど、『なくなってから買う』のではなく『なくなりそうになったら買う』という食材がそれぞれの家庭にあるのではないでしょうか。それが実はローリングストックの始まり。缶詰など長期間保存できるものの中でもお気に入りの食材を見つけて、『好きなものをちょっと余計に買う』習慣をつけるところから始めてみてほしい」

さらに、「災害発生直後は、自治体に備蓄されているアルファ米やクラッカー、乾パンが配布されやすいですが、炭水化物だけを食べていると便秘などの体調不良につながります。二次災害を防ぐためにも、タンパク質など栄養がとれるものも用意しておくべき」と話します。

たとえば、防災安全協会が主催する「災害食大賞Ⓒ2021」の缶詰部門でも、焼き鳥缶が優秀賞を受賞しています。
販売するホテイフーズコーポレーションの販売企画課・物江祐太朗さんは、この商品は「そのまま食べてもおいしい」点が災害食に適していると話す。豚肉や牛肉に比べて、鶏肉は脂の融点が低いため、加熱できない環境でも、口に入れるだけで脂がとけ、おいしく食べられるといいます。

その上で、普段はアレンジをしながら楽しんで食べてほしいと話します。
「3年から5年と、賞味期限が長いのが特徴ですが、『ローリングストック』で日常使いできる商品でもあります。そのためにアレンジレシピが有用だと考えています」

趣味の「山ごはん」が防災にも役立つ?

私は「山ごはん」でも、よく焼き鳥缶を利用しています。
常温保存ができ、味付けも不要で、すでに火が通っていて時間短縮もできるので便利です。

北海道・恵庭岳

2018年の北海道胆振東部地震では、札幌にある私の実家もブラックアウトの影響を受けました。
家屋に影響はなく避難所に行く必要はありませんでしたが、炊飯器や冷蔵庫が使えませんでした。

そこで今回は
・冷蔵庫にある食材を、腐る前に消費する
・水や電気を使わずに作る
ことを目標に、3つのレシピを考えました。

登山用ガスバーナーを使いましたが、家庭用のカセットコンロでも代用できます。


①焼き鳥缶で「トマトチキンカレー」

【材料】

・焼き鳥缶(塩) 1缶
・カレールウ 1かけ
・トマトジュース 200ミリリットル 1パック
・アルファ米 1パック

すべて常温で保存できる食材です。
トッピングは冷蔵庫にあるものをお好みでご用意ください。

【作り方】

①アルファ米にお湯を注いで既定の時間待つ

アルファ米というのは、炊飯後に乾燥させた加工米で、炊かなくてもお湯や水を注ぐだけで食べられる製品です。
自治体の避難所の備蓄などでも使われています。

今回使った製品の場合は、戻す時間はお湯で15分、水では60分ほどでした。

②焼き鳥缶、トマトジュース、カレールウを鍋に入れ、カセットコンロで火にかける

今回は登山用ガスバーナーを使用

焼き鳥缶を使っているため、肉にはすでに火が通っているので、生焼けの心配がないのも便利なポイントです。

③米を入れ、お好みでトッピングをして完成

山ごはんでは調理に使ったクッカーをそのまま食器としても使います。食器としても使える調理器具があると、洗い物を減らせます。

そのままでも鶏肉が入っているので満足感がありますが、冷蔵庫にあった食材を使い切りたいときや、ローリングストックとして日常で楽しむときは、卵などを焼いて乗せてもOKです。

アルファ米は、独特な風味やパサパサ感もなく、カレーと一緒に食べると普段のごはんとの違いも感じずにおいしくいただけました。

②焼き鳥缶で「親子丼」

【材料】

・焼き鳥缶(タレ) 1缶
・卵 1個
・たまねぎ 1/4個くらい
・めんつゆ 小さじ2くらい
・アルファ米

「くらい」が多いですが、適当でいいんです。
なぜなら焼鳥缶に、すでに味が付いているから。

【作り方】

①アルファ米にお湯を注いで既定の時間待つ

②鍋に焼き鳥缶・食べやすい大きさに切ったたまねぎ・めんつゆを入れて、火にかける

②たまねぎに火が通ったら、溶き卵を回し入れる

③好みの加減で火を止めて、ごはんの上にかけて完成

今回は乾燥ネギと七味唐辛子をトッピングしてみました。

食べてみると、これぞ特上レトルト!!!びっくりしました。
めんつゆしか入れていないのに、完全に親子丼の味です。

③焼き鳥缶で「和風のりチーズホットサンド」

【材料】

・焼き鳥缶(タレ) 1缶
・食パン(8枚切りがおすすめ) 2枚
・スライスチーズ 1枚
・のり 適量
・マヨネーズ 適量
・七味唐辛子 適量

【作り方】

①食パンの上に、チーズ・のり・焼き鳥缶をのせ、マヨネーズと七味唐辛子をかける

②もう1枚の食パンを重ね、ホットサンドメーカーにはさんで弱火で片面2分ずつ焼く

ホットサンドメーカーと登山用ガスバーナーでの調理例

少し焦げた香りがしてきたら、ひっくり返すタイミングです。

③こんがり焼けたら完成

中の具材までアツアツ。タレのおかげで和風な味になっています。

食パンの厚さはいろいろ試しましたが、8枚切りが具材がこぼれず、ホットサンドメーカーにもはさみやすいので、おすすめです。

ホットサンドメーカーは、はさむだけでなく、片面だけをフライパンとしても使うことができます。
山でもよく使いますが、スイーツ系などアレンジの幅も豊富なので、使いたい食材を使い切るのにおすすめです。

災害時にも、食べ慣れた味を

防災安全協会の水口さんは、缶詰はそのまま食べることもできるものの、温かい料理を食べることで、「心が温まる」と話していました。
「断水で風呂もシャワーもままならない日々で、お湯につけたタオルで体をふいた人たちが、ほっとする表情を見たことがあります。水につけたタオルで体をふくこともできますが、『温かい』ことが大切なんだと感じました。食事も温かいものを食べることで、心を温め、落ち着かせる効果があると思います」

食材のほか、カセットコンロなどの道具も備えておくと安心です。
水口さんによると、「マルチウォームバッグ」という、水を入れるだけで発熱材と反応し熱湯ができる製品もあるといいます。火を使わず安全に食材を温めたり、お湯を沸かしたりできます。

水口さんは、「いざというときに初めてやろうとすると慌ててしまうし、バッテリーが貴重な状況なら検索もできない。災害時に便利な食材や道具は、知るだけでなく、普段から実行して慣れておくことが重要」と話していました。

災害が起こったときは、いつもと違うことばかりで疲れてしまうと思います。
断水時や停電時でも作れるレシピを、普段の食事や山ごはんで楽しんでおくと、災害時にも食べ慣れた味で、心も体もほっとするかもしれません。

おいしく楽しみながら、考えてみませんか?

連載「堀内美里の言いたいことは山々ですが」

※北海道の山に登るときは、クマについても知っておきましょう。「クマに出会ったら」「出会わないためには」の基本の知恵は、HBCのサイト「クマここ」で、専門家監修のもとまとめています。

文:HBCアナウンサー・堀内美里(ほりうち・みさと)
北海道生まれ・北海道育ち。2021年入社。HBCテレビ「グッチーな!」「吉田類 北海道ぶらり街めぐり」、HBCラジオ「平野龍一のミライの扉」を担当。登山歴3年。おいしくごはんを食べるために山に登っています。登山の魅力はインスタグラムでも発信中

編集:Sitakke編集部IKU

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