通常学級の授業についていけてない?授業参観での小1発達グレー息子の様子にショック
監修:鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
発達障害グレーゾーンの息子。通常学級への就学を決意したけれど……
しのくんは発達障害グレーゾーンの6歳の男の子です。現在小学1年生で、通常学級に籍を置いています。
小学校へ入学するにあたっては、いろいろな不安がありました。2歳まで発語がなく、身辺自立や運動面の発達もゆっくりだったしのくん。保育園での集団生活も苦手で、教室から脱走したり、行事に参加できなかったりすることもありました。
保育園の年長からは、加配の先生が付かなくても過ごせるようになっていましたが、発達検査を受けたところ「総合指数は通常といえる範囲内だけれど、言語・社会性の面で発達に遅れが見られるので、声かけなどの支援は必要になりそう」と言われました。
しのくんに長年関わってくださっている療育の先生方でさえ悩むような状態だったので、就学先を通常学級にするか、それとも特別支援学級にするか、とても迷いました。
最終的に、保育園の先生方の「しのくんは通常学級がいいと思います」との意見と、夫の希望が一致して通常学級を選びましたが、特別支援学級に就学しないことで、「支援が必要ない子」と思われてしまうのでは……という不安がありました。
特にしのくんは、人の話を聞いていなかったり、うまく人としゃべれなかったりすることがあるので、学校生活で困りごとが出てくるのではないかと心配でした。
そのため、就学前の2月、学校の先生と就学コーディネーターの先生に個別面談をしてもらうことになりました。
就学前の個別面談で、これまでの経緯などを小学校の先生方に説明
個別面談では、今までの経緯 (2歳まで発語がなくことばの教室に通っていたこと、保育園で集団行動ができないと言われて3歳から療育センターに行っていること)や、しのくんの特性について先生方に説明しました。また、生まれつき目の病気があるので前の席にしてほしいとも伝えました。
2人の先生は、しのくんが生まれた時の状況から、現在の様子までを最後まで真剣に聞いてくださり、しのくんが楽しく学校生活を送れるよう一緒に頑張りましょうと言ってくださったので、とても安心したのを覚えています。入学前に先生と話すことができて良かった……と心から思いました。
いざ小学校入学、出だし順調でひと安心!しかし初めての授業参観で見た光景は……
そして4月になり、しのくんは小学校に入学しました。保育園では行き渋りしていた時期もあったので心配していましたが、いざ学校が始まってみると行き渋りもなく、元気に通えている様子でひと安心。
ところが5月、入学して初めての授業参観の時のことです。教室に行ってみると、席替えがまだ済んでいないようで、しのくんの席は前のほうではありませんでした。クラスの人数が多いこともあり、先生の目があまり届いていない様子……。
授業参観が始まって、しのくんの様子を見ていると……。教科書のページを開く、教材を出すなど、すべてにおいて周りの子からワンテンポ遅れているしのくん。最終的には何をすればいいのか分からなくなってしまったようで、不安そうに後ろを振り返り、「ママー」と助けを求めてきました。
最初はママと呼ばれても「がんばれー」と見守っていたのですが、見かねたパパが、しの君のヘルプに入っていきました。
初めての参観日で、とにかくしのくんは「先生の話を聞いていない」ということが分かったのでした……。
後日、先生との面談で今後のことを相談。2学期からは通級の利用も
授業参観でのしのくんの様子が不安になったので、後日、担任の先生と面談をお願いしました。
先生の話によると、最初の1ヶ月ほどは支援員さんが付いてくれていたが、いなくなった後に困りが出てきてしまったようでした。
現在は 一番前の席にしてもらえたので、先生も こまめに声かけをしてくださっているようです。ですが、やはり一斉指示についていけないなどの困りが目立つようになってきたので、2学期から学校内に設置されている通級指導教室に通うことになりました。
いろいろと不安もあるため、月に一度は面談を希望し、授業の様子や学校での様子を教えてもらうことにしました。
まだまだ試行錯誤しているところですが、しのくんが楽しく学校生活を送れるように、先生方とも連携しながらひきつづきサポートしていきたいと思います。
執筆/keiko
(監修:鈴木先生より)
恐らく療育センターで医師の診察は受けているものと思われますが、学校だけではなくかかりつけ医との相談も必要です。発達検査はIQテストだと思いますが、あくまでも参考値ととらえるべきです。言葉の遅れだけでなく、先天的な目の病気もあるので、サポートが必要なお子さんだと感じました。また、2歳まで発語がなかったことから聴覚検査も必要かと思われます。先生の話を聞いていないのではなく、聞こえづらい可能性もあるからです。私の外来でも4歳で難聴が見つかり、補聴器で言語が改善した例を経験しています。教育だけでなく医療とも連携しながら、お子さんの学校生活をサポートしていけるとよいですね。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。