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TVアニメ『スナックバス江』リレーインタビュー⑤ タツ兄役・落合福嗣&監督・芦名みのる

Febri

TOPICS2024.01.09 │ 12:00

TVアニメ『スナックバス江』リレーインタビュー⑤


タツ兄役・落合福嗣&監督・芦名みのる

北海道最大の繁華街「すすきの」から5駅離れた「北24条」の小さなスナックを舞台に、人生経験豊富なママ&チーママのコンビとクセの強い客たちが織りなす、酒と泪と男と男のタペストリー。『スナックバス江(以下、バス江)』の穏やかな空気を支える、みんなのタツ兄を演じるのは落合福嗣。芦名みのる監督も取材に飛び入り参加して、クロストークで本作の魅力を掘り下げる。

取材・文/前田 久

アニメクリエイターインタビュー_TOPICSスナックバス江声優芦名みのる落合福嗣

役のほうから自分に寄ってきてくれた感覚があった

――『スナックバス江』の原作はもともと知っていましたか?
落合 マンガ好きで、読んで面白かった作品を紹介し合う友達がいるんですけど、彼から2年くらい前に教わって読んでいました。でも、まさかアニメ化するなんて(笑)。

――驚きますよね。
落合 ちなみに、オーディションを受けることが決まってからは、あえて連載を追わないようにしています。アフレコが終わったら、また購読を再開しようと思っています。

――スナックに行ったことは?
落合 『バス江』の打ち入りで行ったのが初体験でした。めっちゃ面白かったです。こんなににぎやかなんだ!と。そうしたら監督から「『スナックバス江』はこんなににぎやかな店じゃないから、これが『バス江』の世界観だと思わないでね」と言われて(笑)。たしかに冷静に考えれば絵面も全然違うし、僕が初めて体験したスナックは特別だったんですよね。
芦名 あれはね、スナック「大繁盛」だったよ(笑)。
落合 「場末」ではなく(笑)。でも、ホントに楽しい場所でした。

――タツ兄という役には、どんな印象を持っていますか?
落合 僕の中では「謎が多いおじさん」ですね。何の仕事をしているのか、格好を見てもわからないけど、仕事帰りに「スナックバス江」にやってきては、毎回ちゃんとお金をお店に落として帰っていく。会話の中に断片的な情報はあるんですけど、日常生活がはっきりと見えないのが魅力だと思っています。

――そういう場合、役作りは難しいのではないかと思うのですが。
落合 そこまででもなかったです。「あまりおじさんらしくなりすぎないようにしてほしい」と第1話の収録時にディレクションしていただいて、そのときに役が自分に近づいてきた感覚があったんですよね。僕の実年齢よりも歳上のキャラクターなので、ちょっと老けた感じのお芝居を考えていたんですけど、考えていたよりも楽だったというか、タツ兄がこっちに寄ってきてくれた感じがあります。
芦名 タツ兄みたいな見た目のキャラは基本的におじいちゃんっぽい演技になっちゃう傾向があります。が、実際の作品を読むとおじさんではありますが、そこまで年をとった人ではないんですよ。設定年齢40代ですからね。だから歳を取りすぎず、くたびれていない演技をしてくれた福嗣がとてもしっくりいったんです。そして、なにより彼の自然な演技が自分の作りたい「スナックバス江」にハマったんです。だから本番でも彼に「そのまんまの演技でいいよ」と伝えました。

久しぶりにメインキャストが揃ってアフレコできた

――タツ兄のセリフに漂う「中年の悲哀」みたいなものは、どう受け止めていますか?
落合 わかる部分もあるし、「今はわからないけど、いずれわかるんだろうな」みたいな部分もありますね。中年といいつつも、なんだかんだで考えていることは中学生のようだったりもしますから(笑)。ガジェットが好きとか、心の中に乙女がいるとか。意外とかわいいところもあるので、あまり「中年」とか「哀愁」みたいな部分は意識しすぎないようにしました。

――言われてみれば、妙にかわいく見えるときもあるキャラクターですね。
落合 そう。でも、狙ってやるとかわいくならないので、意識することなく、できるだけ思っていることを素直にぶつけて、そこにかわいさを感じてもらえたらいいなと思っています。

――他に「タツ兄らしさ」を表現するために考えていたことはありますか?
落合 自分ひとりで「こうやろう、ああやろう」と考えることはなかったですね。コロナ禍以来、数年ぶりにメインキャストが揃ってお芝居ができる現場だったので、みんなが持ってきたお芝居をテストでぶつけあう中で「そうくるんだったら、こう返そうかな」と考えることを大事にしていました。本当にアフレコブースの中がスナックみたいな感じだったので、凝り固まって考えるのはやめよう、と。

――共演者のお芝居や、他のキャラクターのセリフで気になったものはありますか?
落合 小雨ですね。小雨の一挙手一投足、すべての芝居が大好き。あんまりタツ兄とは絡まないのが残念です。いつもブースの後ろのほうに座って「あ~、小雨だな〜」と思いながら、宮本(侑芽)さんのお芝居を見ています。とくに印象に残っているのが「私の名前は天野小雨。フリーのター」というセリフで、その言い方が原作を読んでいたときに僕の頭の中にあった小雨のイメージと100%マッチしていて「あー! 小雨ちゃんだ!」と感動していました(笑)。

――あはは。
落合 『バス江』はどのキャラクターもインパクトが強いんですけど、やっぱり僕の中では小雨ちゃんがイチオシです。まわりのインパクトが強すぎて、常識人かなと思うときもあるんですけど、よく見ると「この子も相当やばいな」と思わされるシーンがあって、そこがたまらなく好きです。
芦名 ……そんなに語るほど好きか! ……ま、でも、気持ちはちょっとわからんでもない(笑)。

――タツ兄と小雨は絡みがあまりないのが寂しいですね。
芦名 この場で(原作者の)フォビドゥン澁川先生にお願いしときな。
落合 いいんですか? じゃあ……本当、タツ兄として小雨ちゃんと絡みたいです。お願いします、原作で絡みを増やしてください! きっと第2期もあるので。
芦名 こらこら、そこまで勝手なことを言うな(笑)。

次ページ他の現場ではありえない、熱い議論<!--nextpage-->

「大変な現場に来てしまった」と実感したシーン

――おふたりのやりとりからも、現場の空気のよさが伝わってきますね(笑)。
落合 基本的に収録中は、笑いをこらえるので精一杯の現場でしたね。一度、どうしても笑いが堪えられなくて、別録りにしていただいたシーンもあったくらいです。

――『バス江』の現場ならではの苦労があるのでしょうか?
落合 「ちんちん」のアクセントで揉めたところかなあ。あれは他の作品とは違うなと思いました(笑)。ちんちん(↑)なのか、ちんちん(↓)なのか、すっごい真剣な表情で議論していて。「舞台は北海道だから、やっぱちんちん(↑)がいいんじゃないか?」「でも、森田はエセ関西弁だから、ちんちん(↓)が正解では?」って、監督を含めて3人くらいで「ちんちん、ちんちん」と繰り返しながら真面目に検討していて。あれを見たときは「大変な現場に来てしまったんだな」とあらためて実感しましたよ。
芦名 めちゃくちゃ真面目なやりとりだったよね、アレ。
落合 そう、すごく真面目なんですよ。でも、他の作品では絶対ありえないディスカッションなんだろうな、と思いながら見ていました。

――フレーズのインパクトが強い作品ですが、お気に入りのものはありますか?
落合 「三顧の礼!」ですかね。

――やっぱり!
芦名 ……というリアクションがあるということは、他のキャストもインタビューで言っているな(笑)。みんなで流行らせようとしているのね……。
落合 現場では大流行ですからね。世間でも流行らせたい(笑)。テストでも「三顧の礼!」が言える箇所がないかなって、チャンスを探していましたから。アフタートークでも、ガヤで多用していました。

ぜひ、大事な人と一緒に見てほしい(?)

――現場のノリのよさということでは、各話のエンディングがアフレコ現場でそのまま録ったカラオケだというのも、注目ポイントですよね。
落合 楽しかったですね〜。カラオケ用のダイナミックマイクで、みんながいるところで歌うのは、ちょっと恥ずかしさもある。でも、それによって本当にスナック感が出るというか。

――監督に聞きたいのですが、どうしてこういうエンディングの方式になったんですか?
芦名 スナックって歌ってなんぼだと思うんですよ。でも、最初は声優事務所からNGを出されるかなと思っていたんですよね。普通の歌唱と違って、現場でカラオケのように歌うだなんて……って、ところが事務所からの返答はどこもOK(笑)。「じゃあ、やりますか!」と。収録のとき、「テストで1回歌っていいけど、本番はトチってもそのまま使う」と宣言して、実際にそうしました。カラオケってそういうものじゃないですか。そのおかげでただカラオケを歌っているだけじゃない、ちゃんとキャラクターの歌になりましたね。

――作品の内も外も、そのままの空気感なんですね。
落合 おかげでキャストとしても本当に面白い作品になった手応えがあります。個人的には自分の大切な人、家族、とくにお子さんと一緒に見てもらいたい作品だなと思っています!
芦名 ……本気か?(笑)
落合 実際は、家で子供が起きている時間にVチェック(リハーサルVTRの確認)をしていたら「お父さん、これ、どういう意味?」といろいろ聞かれて大変だったので、次第に子供が寝てからチェックするようになりました(笑)。でも、視聴者の皆さんはぜひ、ご家族でご覧ください!

落合福嗣おちあいふくし 8月20日生まれ。愛知県出身。青二プロダクション所属。主な出演作に『グラゼニ』(凡田夏之介役)、『火ノ丸相撲』(小関信也役)、『HUGっと!プリキュア』(チャラリート役)、『空の青さを知る人よ』(中村正道役)など。芦名みのるあしなみのる アニメーション監督、脚本家 兼 獣医師。主な監督作に『異世界かるてっと』『怪獣娘-ウルトラ怪獣擬人化計画-』『夜は猫といっしょ』など。リレーインタビュー第6回に続く作品情報

TVアニメ『スナックバス江』
2024年1月12日(金)よりTOKYO MX他にて放送開始!

©フォビドゥン澁川/集英社・「スナックバス江」常連一同

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