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一般介護予防事業とは?高齢者の健康づくりを支える5つの取り組みを解説

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2025年1月に開催された「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方」検討会では、地域の特性に合わせた介護予防の実現に向けて「一般介護予防事業」の重要性が指摘されました。

地域の保健センターや福祉会館では、運動教室や健康相談、趣味活動など、高齢者が気軽に参加できる多彩なプログラムが実施されています。実際に2022年度の調査では、全国約14万ヵ所で通いの場が設けられ、高齢者の6.2%が参加しているという結果が出ています。

特に注目されているのは、理学療法士や作業療法士などの専門職と連携した取り組みです。専門家の知見を踏まえた効果的な介護予防活動により、参加者の健康維持と自立支援に大きな成果を上げています。

この記事では、全国で広がる一般介護予防事業の仕組みと具体的な取り組みについて解説します。

一般介護予防事業の概要と目的

一般介護予防事業の定義

一般介護予防事業は、介護保険法に基づき、65歳以上の高齢者を対象にした介護予防のための事業です。この事業は、要介護認定を受けていない高齢者を中心に利用できるサービスであり、地域における高齢者の健康維持や生活の質の向上を目的としています。

事業の実施形態は、地域の特性やニーズに応じて多様な展開が可能となっております。 主な実施場所としては、地域の保健センターや福祉会館などがあり、健康教室や運動教室、地域サロンなど、高齢者が気軽に参加できる環境が整えられています。

また、一般介護予防事業は、地域の医療機関や福祉サービスと連携しながら、包括的な支援を提供することが求められています。こういった連携により、高齢者が必要な情報やサービスにアクセスしやすくなります。さらに、地域住民が主体的に関与することで、地域全体の健康づくりが進められ、持続可能な地域社会の形成にも貢献することが期待されています。

一般介護予防事業の目的

一般介護予防事業は、高齢者が自立した生活を維持し、介護が必要となるリスクを軽減することを目的としています。特に日本では、2040年にかけて急速な高齢化と人口減少が進行しており、これに伴い介護人材の確保が大きな課題となっています。これらの背景を踏まえ、介護予防事業はますます重要な役割を果たしていると考えられます。

具体的な目的としては、主に以下の3点が挙げられます。

健康寿命の延長と生活の質の向上 地域社会の活性化 介護サービスの利用抑制

介護予防事業の主な目的は、健康寿命の延伸と生活の質の向上です。具体的には、運動や栄養指導、社会参加を促進するプログラムを通じて、高齢者が自らの健康を管理し、日常生活をより充実させることを目指しています。これにより、介護が必要となる前に、健康状態を改善し、介護サービスの利用を減少させることが期待されています。

また、介護予防事業は地域社会の活性化にもつながります。地域の高齢者が集まり交流することで、孤独感を軽減し、精神的な健康を促進します。これにより、地域全体の福祉が向上し、介護人材の負担軽減にもつながることが期待されています。特に、地域のボランティアやNPOが介護予防活動に参加することで、地域の絆が強まり、持続可能な介護支援体制が構築されます。

しかし、高齢化に伴う介護人材の不足は依然として深刻な問題です。高齢者の増加に対して、介護職の確保が追いつかない状況が続いており、介護サービスの質が低下する懸念があります。このため、介護予防事業を通じて、介護が必要となる高齢者を減少させることで、介護人材の不足の解消にもつながることが期待されています。

介護予防・日常生活支援総合事業における位置づけ

介護予防・日常生活支援総合事業は、高齢者が自立した生活を送るための支援を目的とした事業であり、平成27年度の介護保険法改正により導入された事業です。この事業は、65歳以上の高齢者を対象に、「一般介護予防事業」と「介護予防・生活支援サービス事業」を合わせた二つの柱から成り立っています。

介護予防・生活支援サービス事業は、要支援1または2と認定された高齢者や、サービス事業対象者と判断された高齢者に対して、日常生活に必要な支援を提供することを目的としています。この事業には、訪問介護や通所介護、生活支援サービスなどが含まれており、食事の準備や掃除、買い物の代行など、日常生活における支援が行われています。

2つの事業は、相互に補完しあう関係にあります。介護予防・生活支援サービス事業は、すでに支援が必要な高齢者に対して直接的な支援を行う一方で、一般介護予防事業は、介護が必要になる前の段階での健康維持を目指しています。つまり、一般介護予防事業によって健康を維持することで、介護が必要になるリスクを減少させ、結果的に介護予防・生活支援サービス事業の利用者を減らすことが期待されています。

一般介護予防事業の5つの取り組み

1.介護予防把握事業

介護予防把握事業は、高齢者の健康状態を把握し、介護予防活動へつなげることを目的としています。この事業では、地域の現状について情報収集を行い、支援が必要な高齢者に、閉じこもりやうつ病、栄養不足などのリスクを早期に発見し、介護予防活動に結びつけることを目指しています。

このリストは、日常生活や身体機能、精神面に関する25項目の質問から構成されており、定期的なチェックにより健康状態の変化を認識することができます。

また、必要に応じて保健師による訪問も行われます。地域包括支援センターと連携して実施され、支援が必要と判断された高齢者には、地域包括支援センターの職員が直接アプローチし、適切な介護予防活動を続けていく仕組みとなっております。

このような早期発見・早期対応により、要介護状態への進行を阻止し、高齢者の自立した生活を支援することが可能となっています。

2.介護予防普及啓発事業

介護予防普及啓発事業は、高齢者が自立した生活を維持し、要介護状態になることを防ぐために、介護予防に関する基本的な知識を地域住民に広めることを目的とした取り組みです。この事業では、市町村が主体となり、さまざまな活動を通じて介護予防の重要性を啓発しています。

まず例として挙げられるのは、パンフレットの作成・配布です。介護予防に関する情報をまとめたパンフレットを作成し、地域住民に配布することで、介護予防の基本的な知識を広めることを目指しています。

また、認知症予防セミナーなどの講演会や相談会を開催する取り組みもあります。専門家による知識の提供や、地域住民同士の交流を促進する場として利用されています。さらに、地域の高齢者を対象にして、体操や運動を中心とした実践的なプログラムを提供する介護予防教室では、参加者が実際に体を動かすことで、介護予防の重要性を認識することができます。

活動を効果的に展開するためには、地域の団体やボランティアとの連携も重要となっています。地域全体で介護予防に取り組むことで、より多くの高齢者が活動に参加しやすい環境づくりが進められています。

3.地域介護予防活動支援事業

地域介護予防活動支援事業は、高齢者が介護を必要とする状態になることを予防するために、地域住民が主体的に介護予防活動を行えるよう支援する取り組みです。この事業は、地域包括支援センターと連携し、「通いの場」と呼ばれる住民が気軽に集える環境を整備することを目的としています。

厚生労働省の調査によると、通いの場の設置数と参加率は2020年度に一時的に低下したもの、2021年度以降は上昇傾向にあります。2022年度における65歳以上の高齢者の参加率は6.2%となっており、少しずつ浸透していることがわかります。

通いの場での活動内容は多岐にわたり、体操が53.9%と最も多くの割合を占めています。続いて趣味活動が20.7%、茶話会が13.0%となっています。興味を持ちやすい多彩なプログラムを提供することで、参加者同士の交流が促進され、介護予防への意識も高まっています。

また、住民同士の交流をしながら、孤独を回避し、心身の健康を維持することも重要な目的の一つです。地域の特性に応じた活動を展開し、地域全体で介護予防を推進しているのが特徴となっています。

4.一般介護予防事業評価事業

一般介護予防事業評価事業は、一般介護予防事業におけるプロセス、実施状況、効果を検証し、地域のニーズに応じたサービスの質を向上させるための取り組みです。介護予防事業が適切かつ効率的に実施されているかを確認し、必要に応じて改善策を講じることを目的としています。

評価結果は次年度以降の事業計画に反映され、より効果的な介護予防活動の実現につながります。一般介護予防事業評価事業は、地域の高齢者が自立した生活を送るための支援を強化するために不可欠なプロセスであり、地域全体の健康づくりの質の向上を図っています。

5.地域リハビリテーション活動支援事業

地域リハビリテーション活動支援事業は、地域の介護予防機能を強化するための取り組みです。この事業では、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といったリハビリテーションの専門家が、地域の通いの場や介護サービス事業所を訪問し、専門的なアドバイスや支援を行っています。

主な活動として、まず専門家が利用者の自宅を訪問し、生活上の課題を把握します。そのうえで、リハビリテーションの視点から評価を行い、自立した生活を続けるために必要なアドバイスを提供します。また、利用者の状況は定期的に確認され、必要に応じて新たなアドバイスが行われます。目標の達成状況を見ながら、次のステップに向けた支援計画も立てていきます。

地域ケア会議やサービス担当者会議にも専門家が参加し、ケアプランにリハビリテーションの視点を取り入れることで、サービスの質を高めています。さらには、通いの場に対して運動法や介護予防に関する指導を行い、参加者が継続的に活動できるような支援も行っています。

このように、専門家の知識と技術を地域の介護予防活動に活かすことで、より効果的な介護予防の実現を目指しているのです。

一般介護予防事業の具体的な取り組み事例

通いの場を活用した介護予防の推進

「通いの場」とは、高齢者が地域で集まり、健康づくりや社会参加を促進するための活動の場を指しています。ここでは、地域住民同士が気軽に集い、体操や趣味活動を通じて交流を深めることができます。

具体的な事例として、千葉県流山市では「高齢者ふれあいの家」を展開しています。この施設では、家に引きこもりがちな高齢者が自由に集まり、趣味活動や教養講座、地域の子どもたちとの世代間交流などを行える場として運営されています。

厚生労働省は、介護予防を推進するために通いの場の活用を強く推奨しており、地域包括支援センターを通じて、通いの場の設置や運営に関する支援を行っています。これにより、地域の特性に応じた活動が展開され、高齢者が自らの健康を維持するための環境が整備されています。

リハビリ専門職と連携した介護予防の取り組み

神奈川県大和市では、身近な公園を活用し、リハビリ専門職との連携を取りながら通いの場を形成する独自の取り組みを展開しています。

大和市は、市内にある公園の約100ヵ所に、ストレッチや筋力トレーニングを気軽に行える健康遊具を設置しました。そこでは介護予防担当部局の理学療法士などがインストラクターを務め、健康遊具を活用した体験会を年に約30回実施しました。セミナー終了後には、ボランティアや保健師の支援により、月に数回の体力づくりを行う通いの場となっています。

このような取り組みの効果について、日本老年学的評価研究(JAGES)の知見によると、以下のような成果が確認されています。

運動機能の改善効果 社会参加の促進効果 健康意識の向上

このように、リハビリ専門職との連携は、介護予防の効果を高める重要な要素となっています。

短期集中予防サービスとの連動

短期集中予防サービスは、高齢者の生活機能の低下を防ぐために設計された介護予防プログラムです。このサービスの特徴は、リハビリ専門職と連携して実施されることが多く、要支援認定を受けた高齢者や生活機能の低下がみられる方を対象に、集中的な支援を提供する点にあります。

奈良県生駒市では、介護予防の効果を高めるために、体系的な取り組みを展開しています。「パワーアップ教室」や「転倒予防教室」などの短期集中予防サービスでは、運動機能の向上や機能バランスの改善、筋力向上などを目指した専門的な指導が行っています。

身体機能の改善が見られた利用者は、その後通いの場などの地域活動に移行します。短期集中予防サービスと一般介護予防事業を効果的に連携させることで、介護予防・自立支援の取り組みがより実効性の高いものとなり、持続可能な地域づくりにつながっています。

地域を支える一般介護予防事業

一般介護予防事業は、高齢者の健康維持と自立支援において重要な役割を担っていますが、今後はさらなる発展が期待されています。

2025年以降、人口減少は地域によって異なるスピードでますます進んでいきます。2040年には、現役世代が減少し医療・介護専門職の確保が困難となる一方で、85歳以上の高齢者は1,000万人以上にものぼると考えられています。

このような状況下で、高齢者の生活を地域で支えていくためには、市町村が中心となって地域のリハビリテーション専門職との連携を強化し、地域の特性に応じた柔軟な事業展開が重要となっていきます。

一般介護予防事業は、各地域・自治体の創意工夫のもと、住民主体の活動と専門職による支援を効果的に組み合わせながら、2040年問題の解消に向けて今後も全国に広がりを見せることが予想されています。

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