夏のライディングに最適なウェア選び
まもなく本格的な夏が到来し、ライダーにとっては強い日差しとの戦いがやってきます。あまりに暑いからと言って、半袖でバイクに乗ると万が一の際に大怪我をしてしまいますし、肌を露出させることで日差しをまともに浴びて深刻なダメージを負うことに繋がります。暑い夏場でも快適なライディングが楽しめるライディングウェアの選び方、そして爽快なライディングを約束してくれる便利グッズもご紹介します。
半袖はダメ!夏場でも長袖ジャケットを着る理由
一般的な服装選びでは快適性が優先されるので、気温が上がるほど薄着になり、上着は長袖から半袖になります。しかし、ライディングジャケットは夏用であっても基本的に長袖しかありません。その理由を4つの視点から解説します。
日焼けによる体力消耗
今夏も猛暑が予想されています。ライダーは太陽からの直接的な暑さだけでなく、アスファルトの照り返しによる間接的な暑さ、そして乗用車やトラックなどのエンジンから発せられる高熱も浴びているので、路上はまさに灼熱地獄。通常の歩行や軽い運動などとは違い、ライディング中は同じ姿勢であるため腕や首の日焼けは強烈で、短時間でも火傷のようになってしまいます。
ライディングジャケットには遮光や遮熱効果があるので、一般的なアパレルよりもそうした総合的な暑さを大幅に和らげられます。また、肌に到達する紫外線の量を減らせることから、日焼け防止にも効果的です。なお、紫外線には疲労感やその後の回復にも悪影響を及ぼすという研究結果も出ており、そうした観点からも直射日光はできるだけ防いでおいた方が良いでしょう。
万が一の転倒時に身を守る
ライディングジャケットの肘や肩には、プロテクターが内蔵されています。これは転倒などのアクシデントの際に衝撃を緩和し、けがを軽減する効果が期待されています。プロテクターが内蔵されている部位は製品によって異なりますが、近年は背中や胸部にも最初から標準装備しているもの、もしくはあとから追加できるものがほとんどです。
また、半袖など肌の露出面積が広いほど、転倒時に擦過傷ができやすく、傷口にアスファルトや砂などが入り込んでしまう可能性が大です。そうした事態を減らす目的においても、長袖であることのメリットは大きいのです。
飛来物から身を守る
気温が高くなるほど、ヘルメットのシールドやバイクのスクリーン、ヘッドライトなどに付着する虫の量が増えます。このことからも分かるように、バイクはそうした環境の中を走っており、もちろん衣服にもそれらが少なからず当たっています。小さな羽虫ならまだしも、バッタやカナブンが直接肌に当たるとけっこう痛いので、長袖による対策は効果的です。
飛来物と言えば、前方を走る乗用車が跳ね上げた小石などが当たるケースも少なくありません。中にはヘルメットのシールドに引っかき傷が残るほど鋭利なものもあるので、肌の露出はできるだけ少ない方が怪我の予防にもつながります。
風の影響を受けにくい
一般的なアパレルはバイクでのライディングを想定していないので、走行風によってかなりバタつきます。それに連動して少なからず体も揺さぶられるので、結果的に疲労へとつながります。また、そのバタついた生地の一部がミラーの視界を狭めてしまうケースもあります。
ライディングジャケットは、乗車姿勢を前提とした立体裁断をはじめ、体にフィットさせるためのアジャスターが各部に設けられているものもあります。近年はパーカータイプのジャケットも増えていますが、走行風によってフードがはらまないよう、各メーカーが工夫を凝らしているのもこのジャンルの特徴と言えるでしょう。
タイプ別で選ぶ夏のジャケット
サマーシーズン用のライディングジャケットには、生地の種類によってメッシュ、テキスタイル、レザーの3種類に大別できます。それぞれのメリットとデメリットについて紹介しましょう。
メッシュジャケット
気温が25℃を超えるころから活躍するのが、通気性の良い特殊な生地で作られたメッシュジャケットです。登場した当初は、まるで網戸のようなザラザラとした肌触りであったり、インナーウェアや素肌が透けてしまったりなどの短所がありました。ところが、最近では立体的に編み込まれた柔らかいメッシュ生地が開発され、そうした欠点はほぼ完全に払拭されています。
多くのメッシュジャケットは、内側に取り外し可能な防風インナーが装備されており、これをプラスすることで山間部を通過する際や朝晩の寒さを凌げます。つまり対応できる気温の範囲が非常に広いことから、温暖化が進んだ昨今の日本において、バイクシーズンの大半をカバーできるもっとも万能的な一着と言えるでしょう。
テキスタイルジャケット
メッシュジャケットが登場する以前の主流であり、今もなお根強い人気を誇るのがテキスタイルジャケットです。使われている生地はナイロンなどの化繊による布帛で、裏面には防水性や防風性を目的とした特殊コーディングが施されています。メッシュ生地よりも耐摩耗性や引裂強度に優れるほか、気温が20℃を下回る条件下では寒さをしのげるというメリットがあります。反面、生地自体に通気性がないので、特に夏は熱がこもりやすいのが難点でしょう。
テキスタイルジャケットの中には、こもった熱を排出するためのベンチレーションや、走行風を取り入れるためのエアインテークを設けた製品があり、それらの開口部を開放すると、まるでジャケットの内側に風の通り道ができたかのように快適になります。涼しさ自体はメッシュジャケットに及びませんが、近年はゲリラ豪雨も多いことから、あえて防水性を有したテキスタイルジャケットを選ぶというライダーも少なくありません。
レザージャケット
昔からの定番アウターの一つであるレザージャケットは、クラシカルなものからモダンなデザインまでさまざまな種類があります。牛革などの天然皮革は耐摩耗性や引裂強度においてナイロンを上回るだけでなく、防風性があり、着続けることで体に馴染んでいくなどのメリットがあります。サマーシーズン用として、パンチング加工による通気穴を開けた製品も古くからあり、ベテランライダーを中心に一定数の人気があります。
天然皮革は雨や汗などで染みができやすいほか、風通しの悪いところで保管するとカビが生えてしまうなど、メンテナンスに気を使う必要があります。しかし、ツーリング後のブラッシングや、定期的に保革油を塗るなどの手間も含めて、レザージャケットを所有することの醍醐味と言えるでしょう。
ライディングを爽快にしてくれるアイテム
ここまでに紹介したジャケットに限らず、夏のライディングを快適にしてくれるアイテムはたくさんあります。それらをうまく組み合わせて、涼感ライドを楽しんでください。
冷却インナー
スポーツやアウトドアシーンだけでなく、日常生活においても市民権を得た感のある高機能インナー(アンダー) ウェアも今夏欠かせないアイテムとなるでしょう。特に吸汗速乾性や接触冷感などの機能は、ライディングジャケットの快適性をワンランクアップしてくれるので、着用することを積極的にオススメします。
吸汗速乾性とは、汗を吸い上げて素早く蒸散させる機能のこと。肌面が常にサラッとするだけでなく、気化熱冷却が促進されるという効果もあり、コットンなどのインナーよりも非常に快適です。近年は抗菌防臭機能をプラスした製品が増え、匂いもほとんど気にならないレベルに抑えられるまでになっています。
接触冷感とは、肌面にひんやりとした冷たさを感じる機能のことです。これも吸汗速乾性と合わせて夏のライディングを爽快にしてくれます。その他、製品によってはUVカットやコンプレッション機能などもあるので、自分に合いそうなものを試してみてください。
冷却ヘッドギア
いくらクーリング性能に優れたハイエンドのヘルメットでも、走行していなければ風が流入しないので、特に渋滞の中では汗が目に入ってくるほど頭部が蒸れます。それを軽減してくれるアイテムがインナーキャップです。
高機能インナーウェアと同等の吸汗速乾性を備えた製品がほとんどで、汗を素早く吸収するだけでなく、ヘルメットの内装へ汗や皮脂が付着するのを軽減してくれます。特に泊まりがけのツーリングでは、宿泊先で内装を外して洗うのはなかなかに面倒なもの。インナーキャップなら簡単に洗えますし、速乾性に優れているのですぐに乾きます。なお、ヘルメットのサイズ感が変わる可能性もありますので、その点はあらかじめ頭に入れておいてください。
冷却電動グッズ
近年の酷暑対策として、専用デバイスを用いた冷却グッズが登場しています。RSタイチの「リキッドウインド」は、ベストに仕込んだチューブから冷却水をインナーウェアに送水し、気化熱冷却を積極的に促進するアイテムです。腰に装着したボトルの電動ポンプによって送水するシステムで、冷却水にはメントール成分が含まれています。
電動グッズと言えば、近年はペルチェデバイスによる冷却アイテムも増えています。ペルチェとは、2種類の半導体を電極でつなぎ、電流を流すことで熱を吸収・放出する効果のことを表します。ペルチェ素子は、ある方向へ直流電流を流すと、素子の片端で吸熱(冷却)し、他端で発熱(加熱)するという特性があり、それを利用した製品です。うまく排熱できないと冷却機能が落ちたり、焼損したりする可能性があるため、メッシュジャケットのような通気性の良いアウターを組み合わせる必要がありますが、効果はかなり期待できます。
安全で快適なツーリングを楽しもう
夏でも長袖のライディングジャケットを着るべき理由は多岐にわたります。高機能インナーウェアや電動グッズを活用すれば、暑さを抑えた快適なバイクライフが実現します。装備を整えて、安全かつ爽快なライディングを楽しんでください。