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「子どもの虫刺されにお湯を」は効果なし! 虫刺されの予防と正しい対処法〔医師が解説〕

コクリコ

子どもに多い病気やケガへの対処法の最新知識を伝える連載「令和の子どもホームケア新常識」第9回。「虫刺されにはお湯をかけて温める」という旧常識について、小児科医・森戸やすみ先生が解説。

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【旧常識】虫刺されにはお湯をかけて温める。子どもの体調不良やケガなどの緊急事態に、親が応急手当てをするホームケア。

現代のホームケアの中には、私たち親世代が子どもだったころとは大きく変わってきているものが多数あります。子ども時代の記憶を頼りに、古い常識のまま子育てをしていませんか?

本連載【令和の子どもホームケア新常識】では、子どもに多い病気やケガへの現代の正しい最新対処法などを、小児科医・森戸やすみ(もりと・やすみ)先生が解説。

第9回は「虫刺されにはお湯をかけて温める」という旧常識について。

虫刺されの対処法は誤情報も多い

春以降子どもが外で遊ぶことが増えると、気になるのが虫刺され。虫刺されには「お湯をかけて温める」といった方法のほか、ネットやSNSではさまざまな対処法が散見されます。

はたして、これらは正しいのでしょうか。森戸やすみ先生に伺いました。
───
虫刺されのシーズンになると、毎年多くのデマがSNSで拡散されています。

例えば昔から伝わる「ハチに刺されたときはアンモニアをかける」は、実はまったく効果がないことがわかっていますし、「50℃のお湯やドライヤーで温める」「熱い蒸しタオルで押さえる」も完全に間違いで、むしろ低温やけどをする危険性さえあります。

虫の毒素や唾液成分は「石けんで洗って中和する」ことも、「塩を塗り込んで吸い出す」こともできません。

特に蚊に刺されたときの対処法は、身近な分、デマが多く見られるので注意したいところです。子どもは日常的に蚊に刺されやすいですし、かゆみをがまんするのはつらいもの。正しい対処法はもちろん、予防策も知っておくといいですね。

かゆみ止め薬を塗るなら「早め」が鉄則

子どもにもっともよく見られるのが、蚊による虫刺されです。人を吸血するのは主に「アカイエカ」と「ヒトスジシマカ」の産卵前のメスで、吸血するときに注入される蚊の唾液成分に対する反応で、刺された箇所が赤く腫(は)れたりかゆみが出たりします。

この反応には、すぐに症状が出る「即時型反応」と、1~2日後に遅れて症状が出る「遅延型反応」があり、乳児期は「遅延型反応」のため、すぐにはかゆがらない場合がほとんど。幼児期になると個人差はあるものの、「遅延型反応」だけでなく「即時型反応」も起こすようになります。

かゆみは通常、数日から1週間ほどでおさまりますが、がまんできずにかきむしって皮膚を傷つけてしまうと、傷口からブドウ球菌や溶血性連鎖球菌(溶連菌)が入り込んで、「とびひ」になる恐れがあります。

とびひは、正式には「伝染性膿痂疹(でんせんせい・のうかしん)」と呼ばれる皮膚の感染症です。かゆみを伴う水ぶくれやかさぶたが全身にできて、患部を触った手でほかの箇所に触れると症状が広がり、周りの人にもうつります。

かゆみが気になるとき、過剰にかいて皮膚を傷つけ炎症を起こす「かき壊し」や、とびひが心配なときは、早めに市販のかゆみ止め薬を塗りましょう。

かゆみは蚊の唾液成分により、アレルギー反応を引き起こす「マスト細胞」や白血球がヒスタミンやセロトニンなどを放出することで起こるため、これらが放出される前に塗るのがポイントです。

刺されて時間が経ってから、また、かゆみが出てかきむしってからかゆみ止め薬を塗っても十分な効果は得られません。お子さんにはメントール成分が少なく肌にしみない、クリームタイプや液体タイプの薬が塗りやすいでしょう。

パッチタイプのかゆみ止め薬もおすすめです。かゆみを引き起こすヒスタミンやセロトニンの放出を抑える成分が含まれているほか、皮膚を保護してかき壊しを予防する効果もあります。

ただし、小さなお子さんだと、はがして口に入れてしまう恐れがあるので、使用の際には十分に注意してください。

また、0歳児にはほとんど見られませんが、1~2歳児でまれに強いアレルギー反応を起こして刺された箇所が水ぶくれになったり、大きく腫れたりすることがあります。

重度の場合、足の甲を刺されたのに、膝までの一帯が腫れてしまうケースも。そのようなときは保冷剤で冷やし、小児科や皮膚科を受診してステロイド外用薬を処方してもらうとよいでしょう。

子どもが注意したい虫と虫刺されの症状

虫刺されの症状や現れ方は虫の種類によって異なるため、主な虫刺されの症状を知っておくといいですね。対処法はかゆみをやわらげるために冷やすこと、ステロイド外用薬を塗ることが基本ですが、大きく腫れたりかゆみが強かったりする場合は、皮膚科を受診してください。

【ブユ(ブヨ)】
刺されたときは痛みやかゆみがほとんどありませんが、刺されてから半日ほど経つと刺された箇所が赤く腫れ、だんだんと激しいかゆみが現れます。蚊と同様にかき壊すととびひになる恐れもあるので、症状が強い場合はステロイド外用薬を塗ります。

【ケムシ】
一部の有毒毛を持つケムシに触れると、皮膚炎を起こします。数十万本もの毛が密集している「毒針毛(どくしんもう)」を持つドクガ類の場合、首や腕を中心に激しいかゆみを伴うじんましんのような症状、または赤いブツブツが現れます。

体の表面に棘(とげ)として出ている「毒棘(どくきょく)」を持つイラガ類の場合、触れた瞬間にピリピリとした激しい痛みと赤みが現れ、いったんおさまった後、再び触れた箇所が赤く腫れてかゆみが出ることもあります。

ドクガ類に触れてしまったら、かいたりせず、粘着テープなどで皮膚に付いた毒針毛を取り除き、石けんの泡や流水で洗い流しましょう。かゆみが強い場合は冷やし、ステロイド外用薬を塗ります。

【ハチ】
刺されるとハチ毒(ハチの毒)の刺激により激しい痛みがあり、刺された箇所が赤く腫れます。初めて刺されたときは通常1日以内に症状がおさまりますが、2回目以降はハチ毒へのアレルギー反応が加わるため、注意が必要です。

じんましんや腫れが生じるほか、ひどい場合はアナフィラキシーショックを起こし、呼吸困難や腹痛、意識消失などで死にいたることもあります。

刺されたら安全な場所で横に寝かせ、刺された箇所を冷やします。じんましんや腹痛、気分不良などが見られたら、すぐに救急車を。目立った症状がなく元気なら急いで受診する必要はありませんが、経過に注意してください。

予防には市販の虫よけ剤が効果的

蚊は日本脳炎やデング熱などの怖い病気を媒介しますし、ハチは刺されるとアナフィラキシーショックを起こす危険性もあります。公園など虫の多いところへ出かけるときは、虫に刺されないように予防することが大切です。白っぽい色の長袖・長ズボンを着せて、市販の虫よけ剤を使うのがよいでしょう。

現在、日本で認可され、虫よけの効果が認められているのはディートとイカリジンという2つの成分です。

ただし、ディートは生後6ヵ月未満だと使用できず、生後6ヵ月以上2歳未満は1日1回、2歳以上12歳未満は1日3回までと決まっているので注意しましょう。

イカリジンには、年齢による使用制限はありません。用法を守り、必要に応じて適切に使用するといいですね。

【子どものホームケアの新常識 その9】
虫よけ剤で予防しつつ、蚊に刺されたときは、早めに市販のかゆみ止め薬を塗り、かゆみが強いときは冷やしてやわらげる。

取材・文/星野早百合

●森戸 やすみ(もりと・やすみ)PROFILE
小児科専門医。一般小児科、新生児集中治療室(NICU)などを経験し、現在は都内のクリニックに勤務。医療と育児をつなぐ著書多数

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