【潜入】世界レベルの講師とUCCコーヒー体験! ロストバゲージを乗り越えた一杯はやっぱり深かった。水素焙煎も必見!
以前、青山を歩いていたとき、ガラス越しに見えたおしゃれな空間がずっと気になっていた。
そこはUCCグループの東京本部にある「UCCコーヒーアカデミー」。扉越しに覗いていたら、講師らしき男性が「予約制で講座を開いているんですよ」と声をかけてくれたのを覚えている。
そして、その隣にある、関係者しか入れなさそうなおしゃれな空間も気になっていた。
そんな場所に、まさかの潜入チャンスを得た。以前書いた「ひみつのドリップ」記事をきっかけに、UCCの担当者からお声がけをいただいたのだ。
ずっと気になっていた“あの空間”の中へ……いざ潜入!
「色彩のみからなる商標」として登録されている「UCC ミルクコーヒー」
・入口からすでにコーヒーの森
乃木坂駅から歩くこと5分、UCCグループの東京本部に到着。
ワクワクしながら扉を開けた瞬間、モワッとした湿気に包まれた。室内にはコーヒーの木が並び、熱帯の栽培環境を再現しているという。
実際に赤く色づきはじめている実も見ることができた。
その奥に、かつて外から眺めていた“あの空間”が広がっていた。
木のぬくもりと香ばしい香りに包まれたカフェのような空間。今日はここで、プロのハンドドリップと、UCCのカプセル式ドリップコーヒーシステムの最新マシン「DRIP POD YOUBI」によるコーヒー体験をさせていただくのだ。
・世界第二位の受賞経歴を持つ・中井千香子さん登場
最初に案内してくれたのは、UCCコーヒーアカデミー専任講師の中井千香子さん。
ジャパンブリューワーズカップ2018優勝、ワールドブリューワーズカップ2019ファイナリスト、ジャパンサイフォニストチャンピオンシップ2019優勝など、輝かしい実績を持つすごい人だ。
もともとは音楽の学校に進んでいたそうで、声楽を専攻していた中井さん。「近所のカフェでのアルバイトが、コーヒーの世界に入るきっかけでした」とのこと。そっちの話も気になる……。
そんな中井さんが、目の前でハンドドリップを披露してくれることに。
使用するのは「UCC 珈琲探究 炒り豆 コロンビアブレンド SAP 140g」。
まずは、ドリッパーやサーバーをお湯で温めるところからスタート。温度によって香りや味が変わるため、これも欠かせない工程だという。
続いて、コーヒーの粉全体に少量のお湯を注ぎ、約20秒ほど蒸らす。この「蒸らし」が味わいを左右する重要なポイントで、豆に含まれたガスを抜き、成分を均一に抽出しやすくするのだそう。
いや~、ものすごく贅沢な体験をしているような気がする。
間違いなくそうなんだけど、私は普段せっかちなので、こんなふうに待つ時間を楽しめていること自体が、すでに特別だ。
その後は、中心から円を描くようにお湯を細く注ぐ。ゆっくりと、しかし一定のリズムで。この所作自体がまるで儀式のように美しく、思わず見入ってしまう。
今回は比較のため、蒸らしを省いて早く注いだコーヒーとも飲み比べをさせてもらった。左が“蒸らしなし”、右が“蒸らしあり”の一杯だ。
すっきりと軽やかな味わいと、コク深くまろやかな味わい。同じ豆と同じ挽き方なのに、こんなにも違うとは。たった数十秒のひと手間が、これほどまでに味を変えるなんて、コーヒーって奥が深い。
ここに中井さんの歌声も組み合わさったら最高だ……。(ダメ元でリクエストはしてみた)
他にもフィルターの折り方やお湯の量などについても教えていただいたが、こういった話は、一般の人でも参加できる「UCCコーヒーアカデミー」の講座でも学べるそうだ。
・ドリップポッドでプロの味を再現
続いて登場したのが、最新モデル「DRIP POD YOUBI」。
先日発表された「2025年度グッドデザイン賞」も受賞しており、置くだけで部屋がおしゃれになりそうな、凛とした佇まいが印象的だ。空間・プロダクトデザイナーの二俣公一さんがデザインを手がけたそうだ。
さてさて、ここからはドリップポッドブランドマネージャーの小牧さんに案内してもらい、まずは「ホンジュラス&コロンビア」の通常レシピと、プロレシピを飲み比べてみた。
プロレシピとは、専用アプリと連携してUCCに在籍するプロフェッショナルが開発した抽出レシピを再現できる仕組みのこと。
今回は、中井さんが監修された「Creamy Nuts」というプロレシピを選択。同じカプセル(豆も焙煎方法も同じ)を使っているのに、味の印象がまったく違う。
前者はキリッとした飲み口で後味すっきり。一方、プロレシピはまろやかでクリーミーなコクが広がる。こういうのめちゃくちゃ面白い!!
こうして味の違いを共有しながら話を弾ませるのも、食を通したコミュニケーションの醍醐味だと強く強く思う。
ちなみに中井さんに「レシピを考えるとき、どんなことを意識していますか?」と伺ってみたところ、「どんな人がどんなシーンで飲むかを具体的に想像している」とのこと。
コーヒーの味のバリエーションが無限にあるように、人の個性のバリエーションも無限。そこが重なり合って広がっていくのが、なんだかすごく奥深いなと思った。
続いて「水素焙煎 エチオピアイルガチェフェ地方産コーヒー」も試飲させていただいた。
コーヒーの製造過程で最もCO2を排出するのが焙煎工程だそうだが、その熱源に、燃焼してもCO2を出さない水素を使った焙煎機での量産は、なんと世界初。
今まさに話題の水素分野ということもあり、個人的にも興味津々だ。
で、気になるのは味だが、これがすごくおいしい!
フルーティーで華やか。軽やかさの中にしっかりコクがあって、個人的にはかなり好きなタイプだった。
ちなみに水素焙煎は、従来より幅広い温度帯で焙煎できるらしい。そのおかげで、焙煎中の香りや味わいの変化を細かく調整できて、より多彩な風味を引き出せるとか。
さらに、マリアージュとして提供していただいたチーズとの相性も興味深かった。
レッドチェダーと合わせると酸味が引き締まり、香ばしさがより際立つ。一方、コルビージャックと組み合わせると、まろやかな甘みがふわりと広がり、やさしい余韻が残る。
同じコーヒーでも、合わせるチーズでここまで印象が変わるなんて、マリアージュの奥深さを改めて感じた。
・コーヒーの世界は、自由で楽しい
ちなみにコーヒーを飲みながら、印象的だった話があるので最後に紹介したい。
中井さんが初めて世界の舞台に立ったのは、思いがけないハプニングを乗り越えた末のことだった。
もともと挑戦していたのはサイフォン部門。しかしファイナリスト止まりで優勝には届かず、「練習のつもりで」出場したブリュワーズ部門で、思いがけず日本一に。
迎えたアメリカでの世界大会では、なんとコーヒー器具一式を詰めたスーツケースがロストバゲージになってしまったとのこと。
普通なら心が折れてもおかしくない状況だが、そんなこともあろうかと日本に予備を用意していたという。急いで第二陣のメンバーに連絡し、必要な器具を託して現地へ……結果、見事に世界第4位の快挙を成し遂げた。
やっぱり、人生どこでどうなるかわからない。そんなことを思いながら、飲むコーヒーはいつもより、ものすごく深い味がした。
参考リンク:UCCコーヒーアカデミー
執筆:夏野ふとん
Photo:RocketNews24.