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ステファン・カウフマン、アウトレイジ『THE FINAL DAY』プロデュース時の制作を振り返る:本誌未掲載インタビュー

YOUNG

ステファン・カウフマン

アウトレイジの名作『THE FINAL DAY』(’91年)の30周年を記念してリリースされる、リミックス・ヴァージョンやフル・オーケストラの音源を収録した『THE FINAL DAY RE:prise』。ヤング・ギター2021年11月号ではこの作品を阿部洋介(g)が語るインタビューを掲載しており、その記事中では本作のプロデュース並びに『~RE:prise』でのリミックスを手掛けたステファン・カウフマンにもコメントをお願いした。

ステファンの経歴を少々解説すると、彼はジャーマン・メタルの大御所:アクセプトの黄金期ドラマーという肩書きが最も有名だ。背骨を痛めてドラムが叩けなくなり、プロデューサーに転身してからはアクセプトの盟友であるウド・ダークシュナイダー(vo)率いるU.D.O.の名作を手がけ、これがアウトレイジとのつながりを生んだ。アウトレイジのメンバーにとってアクセプトと言えば、バンド結成前からの憧れの対象。そんなステファンがアウトレイジ初の“非セルフ・プロデュース作”を手掛けてくれるとなれば、彼らのテンションがダダ上がりするのも無理はない。

ステファンはさらにその後、ドラマーとして再結成アクセプトに復帰したが、背骨の痛みが再発して離脱。しかしギタリストとして再結成U.D.O.に参加して、長年にわたりバンドのブレインとして活躍することになった。’12年に同バンドを脱退して以降、再びプロデューサー業に専念している。

彼にとってもアウトレイジとのレコーディングは思い出深いものだったらしく、今回のインタビューでは実に興味深い発言が連発されたものの、その多くをスペースの都合上カットせざるを得なくなった。が、お蔵入りさせるには惜しい内容のため、ここで未掲載部分を公開させていただく。

ちなみに本サイトでは、期せずして当記事とほぼ同じタイミングでU.D.O.の最新作『GAME OVER』(’21年)に関するインタビューも公開されることになっている。誌面に掲載した阿部&ステファンのインタビューはもちろん、こちらの記事も合わせてお読みいただきたい。

メンバー全員がいいヤツらだし、それぞれが音楽的に優れたアイデアを持っていた

YG:阿部さんによれば、彼はU.D.O.の『FACELESS WORLD』(’90年)の音を気に入って、あなたをプロデューサーに起用できないかと思い立ったそうです。あのアルバムは続く『TIMEBOMB』(’91年)と並んで、あなたが手掛けた作品の中でも歴史的に名高く、マティアス・ディートのギター・サウンドも素晴らしいですね。

ステファン・カウフマン(以下SK):マティアスは主に2台のマーシャル・アンプを使ったんだ。1つはマティアス所有で、ボグナーが改造した“JCM800 2204”。もう1つは俺の所有していたアンプで、やはりボグナー改造の“1987”。どちらのヘッドも50Wだ。これをアクセプトで使われていた、セレッション“G12H”スピーカーが入った4×12のキャビネットで鳴らした。これらの音をゼンハイザーのマイク“412”で拾ったよ。エフェクト・ペダルも沢山使った。例えばMXR“Phase 90”、アイバニーズ“CS-505”、ミュートロン“Octave Divider”、エレクトロ・ハーモニックス“Electric Mistress”と“Flanger”。それ以外にも思い出せないぐらい沢山あったよ。

俺がプロデュースで心がけていることは、30年前と変わっていないね。歪みはきっちり、クリーンは完全にクリーン、その違いを明確にして、曲を完全にサポートするギター・サウンドを作ること。そして曲ごとに異なるギターやアンプ、キャビネット、音作りを使って、最適なプロダクションを作り上げるんだ。

YG:レコーディング期間中にアウトレイジのメンバーとやり取りしていた中で、思い出深いエピソードがあれば教えてもらえますか?

SK:レコーディングを始める日というのは大抵、他愛もない話を色々とするものでね。俺は彼らに訊いたんだ。夕べはどう過ごした、何を食べた、と。彼らはドイツ伝統の料理を食べたと誇らしげに言うんだよ。「ブラートヴルストとビール」だって。俺が「へえ、どこのレストランに行ったんだ?」と訊くと、彼らは「いや、レストランには行ってないよ。近くのスーパーに行ってビールを2ケースと、ブラートヴルストを買ってきた」と言うんだ。軽く驚いて「どこで料理したんだ?」と訊いてみると、彼らは「どういう意味? ブラートヴルストはパッケージを空けて食ったよ」だって。衝撃だったね。「お前たち、生で食ったのか?」と。ブラートヴルストの“ブラート”とは“揚げる”という意味で、つまりそのソーセージはフライパンで揚げて、熱いまま食べるものなんだな(笑)。次の夜は彼らと一緒に近くのレストランに行って、ブラートヴルストとブラートカルトッフェルン(ジャーマンポテト)とビールを頼んで、「お前たちの想像していたドイツ料理はこれだろ?」と教えてやったよ。彼らは納得して、ドイツ料理をより美味しく食べることができたわけだ。今でも大笑いしたい時はこの話をネタにしているよ!

しかし、アウトレイジのメンバーとの作業は本当に楽しかったね! あの当時バンドはあまり英語が喋れなくて、日本語の通訳が常に付いていた。コミュニケートすることに問題はないものの、いつも俺がレコーディングの時に言い合っているようなジョークを交わすことはあまりできなかったんだが、それを差し引いても楽しい思い出しかない。メンバー全員がいいヤツらだし、それぞれが音楽的に優れたアイデアを持っていたし、俺にとっては新しい経験になったよ。だからメンバーも俺も、全員が名作のレコーディングを楽しんだということだね!

YG:阿部さんも「一番楽しかったレコーディング」と言っていましたからね。さて、日本では『THE FINAL DAY』の約1ヶ月前、アウトレイジの初期3作品──『BLACK CLOUDS』(’88年)、『BLIND TO REALITY』(’89年)、『THE GREAT BLUE』(’90年)をあなたがリミックスしたヴァージョンが発売されました。リミックスの方向性に関してはあなたにおまかせだったそうですね?

SK:あの3枚にはいい曲が沢山入っていたが、まず俺はこれらのアルバムをリミックスするだけでなく、“リプロデュース”しようと考えた。元々の素材は素晴らしいのに、アレンジやサウンド・プロダクションに何かが足りないと思ってね…もっと強烈なサウンドに作り直すことができるんじゃないかと。アウトレイジがレコーディングした音そのものは変える必要もないが、それらをベストな状態にするべくトライした。特に目標を立てたわけでもなく、とにかく各楽器と全体のプロダクションを可能な限りアップデートすることだけを考えていたよ。

YG:あなたは’99年にウド・ダークシュナイダーの弟:ピーター(vo)のバンドであるVANIZEの『BOOTLICKER』をプロデュースしましたが、ここには『BLIND TO REALITY』収録曲「Call Of The Hunter」のカヴァーが入っていましたよね? 阿部さんは後になってこのカヴァーの存在を知ったそうですが、あなたがVANIZEのメンバーに曲の存在を教えたからでは、と推測していました。

SK:その通り。「Call Of The Hunter」は素晴らしい曲だとずっと思っていたんだよ。ただし原曲はどうも、ちゃんとあるべき姿にプロデュースされていなかったようにも感じていた。だから俺がVANIZEをプロデュースした時、彼らにこの曲をカヴァーするよう勧めたわけ。彼らも曲を気に入っていたし、俺の考える理想的なサウンドでリプロデュースしたんだ。出来映えには今も満足しているよ!

YG:あなた自身の最近の活動についても教えてください。U.D.O.のオーケストラ共演作『WE ARE ONE』(’20年)、並びにDIRKSCHNEIDER & THE OLD GANGの『ARISING』(’21年)で、久々にウドとの共演が実現しましたね。アクセプト時代の盟友であるピーター・バルテス(b)もこれらの作品に参加していたわけですが、かつてのバンド・メイトたちとの共演はいかがでしたか?

SK:素晴らしかった! まるで昔に戻ったかのようだったね。俺が何をして欲しいかを彼らに説明する必要もなかった。もう40年以上の付き合いだし、まるで故郷に戻ったような感覚だったよ!

YG:U.D.O.はあなたがメンバーから外れて来年で10年になりますが、最近の作品ではあなたも曲作りなどで関わり続けていますよね。現在のU.D.O.について、特に現在のギタリスト2人(アンドレイ・スミルノフ&ディー・ダマーズ)についてはどんな印象がありますか? 

SK:どちらのギター・プレイヤーもとてつもなく素晴らしいね。彼らはトラディショナルなメタル・ギター奏法に“若い”影響を織り交ぜているんだ。だから彼らと作業するのは楽しいし、俺が彼らから学ぶこともある。何故なら彼らの視点は、時に俺の“古い”考え方とまったく違っていたりするからね。

YG:U.D.O.の最新作『GAME OVER』は、ヴォーカルやベース、ドラムをあなたのスタジオでレコーディングしたそうですね?

SK:前作の『STEELFACTORY』(’18年)とほぼ同じやり方だったよ。『GAME OVER』が前作と違うのは、俺の親友であるマッツ(マーティン・ファイファー)がいたこと。アルバムのプロデューサーは彼で、俺はそのエンジニアを務めた。俺はプロダクションの作業に専念しつつ、彼が色々とやってくれるから、非常にやりやすかったよ。俺がバンドに現役のギタリストとして在籍して、プロデュースもやっていた頃というのは、何から何まで俺が自分でやっていた。曲作りもアレンジも、プロデュースもミキシングもだ。時には仕事量が過多になってしまうこともあったけど、今のやり方だったら関係者全員にとって完璧なんだ。

YG:近々、またギタリストとしてプレイを披露する機会はありそうでしょうか?

SK:おお、君はDIRKSCHNEIDER & THE OLD GANGのことをもう言ってるじゃないか。まあ、将来何が起こるかな…。

INFO

『THE FINAL DAY RE:Prise』/OUTRAGE
ユニヴァーサル インターナショナル
2021年10月27日発表

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