国宝臼杵石仏と並び大分県を代表する磨崖仏【大分元町石仏】
大分県が「磨崖仏の宝庫」と呼ばれているって、ご存知でしたか?
石仏といえば「臼杵石仏」しか浮かばない…という方も多いかもしれません。
ですが、実は県内にある磨崖仏の数は、場所で括っても70ヶ所以上もあるのです。
ということで今回は、大分市元町にある国指定史跡『大分元町石仏』をご紹介します。
アクセス
大分駅からは車でおよそ10分。
国道10号線を進み、フォルクスワーゲン大分中央店向かいの「古国府堂前(どうのまえ)の1踏切」を渡ります。
踏切を渡ってすぐ元町石仏参拝者用の駐車場がありますので、車の方はそちらに停めてください。
『大分元町石仏』は駐車場から案内図に従って徒歩3分ほどのJR久大本線沿いにあります。
この辺りは大分市の「上野歴史探訪コース」に指定されており、豊後の中心地として栄えた上野・元町周辺の石仏や神社仏閣を訪ねるコースが整備されています。
『大分元町石仏』
『大分元町石仏』は民家が連なる通りの一角にあります。
敷地に入ると左に案内看板があります。
木造瓦葺の覆堂(おおいどう)と呼ばれる貴重な文化財や史跡等を風雨から保護するための建築物は、石仏保護のため常時扉が閉まった状態ですので、開けて中に入ってください。
扉を開けると更に扉があるので、足元に気をつけ、注意書きに従って扉を開けっぱなしにしないようにしてください。
中に入ると、ひんやりとした空気に包まれ神聖な雰囲気を纏う石仏が姿を現します。
大分元町石仏と歴史
『大分元町石仏』は、上野丘台地東端の凝灰岩の崖に刻まれた石仏で、石薬師(いわやくし)とも呼ばれ、地域の方達に大切に守り継がれています。
昭和9年(1934年)1月22日に国指定史跡となった『大分元町石仏』は、磨崖仏の宝庫である大分県の中でも屈指の規模と卓越した造像技術を誇り、臼杵石仏と並ぶ大分を代表する磨崖仏です。
堂内の中央に鎮座するのは、人間をはじめすべての生物の病苦を除き安楽を与えるとされた薬師如来坐像(やくしにょらいざぞう)。
像高307cmを計り、台座を入れると5mを超す大きさがあります。
薬師如来坐像は、温和な表情や衣装類の皺を表現した浅彫りの技術から、11世紀後半に造られたものだといいます。
この頃元町付近は宇佐神宮領に組み込まれており、その強大な経済的基盤を背景に造立されたものと考えられています。
また近年の保存整備の中で、仏像の表面の仕上げに漆の痕跡や塑土(そど)を盛りつけている部分が確認されています。
漆や塑土は、主に木彫仏にほどこされる技法であり、元町石仏は木仏師による造像の可能性もあるといわれ注目を集めています。
薬師如来坐像の左には多聞天立像(たもんてんりつぞう)をはさんで、その妻子とされる善膩師童子(ぜんにしどうじ)と吉祥天像が左右に。
右に不動明王をはさんで左右に矜羯羅(こんがら)、制口迦(せいたか)の二童子が彫られています。
堂内には腰掛けも用意されています。
また、英語での案内も置かれていました。
お堂を出て右側には、すりへって風化した像が。
3体の仏像が一つの大きな光背を負う「三尊形式」の磨崖仏が残されています。
その他にも、お堂を出た左側には祠といくつかの石像がありました。
およそ一千年前から元町に鎮座し、人々の暮らしにそっと寄り添ってきた『大分元町石仏』。
ふくよかで優しい笑みをたたえた薬師如来坐像を始めとする荘厳な磨崖仏がある場所へ、ぜひみなさんも足を運んでみてはいかがでしょうか。