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ツーリングが縁で北海道と東京・埼玉で二拠点生活。ユニークなカフェのオーナーが関係人口になるまで

ソトコトオンライン

ツーリングが縁で北海道と東京・埼玉で二拠点生活。ユニークなカフェのオーナーが関係人口になるまで

20代の頃からツーリングライダーとして、東京と北海道を往来してきた塚本哲也(つかもと てつや)さん。約20年前に北海道の道東エリアで第二の拠点を構えました。現在は道東地方の交流人口・関係人口の拡大を担う観光行政に関わる傍ら、2023年に埼玉県川越市で『トレイン&昭和カフェ みっけ®』をオープン。関係人口として道東でも暮らしながら、その魅力を川越から発信しています。

北海道を旅することが「ステータス」だった80年代

東京都足立区に生まれ育った塚本さんは、幼い頃から職人だった父親を見て育ちました。機械いじりが好きで、その流れで自然とオートバイの魅力に目覚めます。

「私が少年時代を過ごした1970年代は『カニ族』といって、全国をひとりで旅をすることが若者のあいだで流行りました。高校生になった1980年代には、北海道をオートバイで走るライダーが『ミツバチ族』と呼ばれ、ある種のステータスというか、憧れとして見られる時代でした。何かかっこよかったんですよね」

高校生になった塚本さんは近所のライダーやバイクショップを訪ね歩き、アルバイトで得たわずかなお金で中古のオートバイを購入。走る楽しみや整備の技術を手に入れます。

20代の頃の塚本さん。レース活動に熱心な時期もあり、楽しみは尽きなかったという。(写真:塚本さん提供)

高校卒業後は長野県内の大学に通い、オートバイで信州地域を駆け巡る日々を過ごした塚本さん。

「長野でも地元のライダーやバイクショップとは今も親交があるくらい、深いお付き合いをさせてもらいました。夏はオートバイ、冬はスキーを趣味にして、公認スキーパトロールのライセンスも取得しました」

満を持して、愛車とともにはじめての北海道へ

大学卒業後は東京で就職した塚本さん。自動車販売店のトップセールスマンとして忙しい日々を過ごすなか、ある列車の存在がツーリングライダー魂に火をつけたのです。

「バイクを列車に積んで、夜行列車とともに北海道に渡る『MOTOトレイン』(1986年~1998年/上野函館間で運行)が始まったんです。機械や乗り物が好きだから、果たせていなかった北海道ツーリングへの思いが沸々と募りました。そして1992年、28歳のときに『MOTOトレイン』で憧れの北海道に愛車と一緒に降り立ったんです」

専用車両からオートバイを押して函館駅のホームに降り立つ塚本さん。この時一緒だったライダー仲間とは、今も交流があるそう。(写真は塚本さん提供)

北海道の各地をオートバイで巡ってたどり着いた「聖地」

夢に見た北海道を、愛するオートバイと共に訪れた塚本さん。それから毎年のように北海道に足を運び、オートバイにまたがって北海道の各地を旅しました。そのとき特に気に入ったのが、中標津町の開陽台(かいようだい)という場所です。開陽台は「ライダーの聖地」と呼ばれ、北海道を代表する絶景スポット。塚本さんは毎夏、ここを訪れるようになりました。

「夏になっても気温は20℃を少し超えるくらい。寒いし、居心地はお世辞にもよくなかったです。それなのに僕は何度もここを訪れました。不思議な魅力が開陽台にはあって、『このあたりに住んだら、どんな生活が待っているのだろう……』と想像するようになったんです。すると不思議なもので、人との縁が舞い込んできました。開陽台でできた友人の紹介もあって、中標津町の隣町・別海町に2003年に住居を構えました。実は定番なんですよね。北海道に来たライダーが北海道でお気に入りの場所を見つけて、そこに住み始めるっていうのは」

中標津町にある絶景スポット「開陽台」。1982年に発表された小説『振り返れば地平線』(佐々木譲著)の舞台になって以降、今も昔も北海道を訪れるライダーの「聖地」。

北海道のどこまでも続く直線道路や広大な自然に憧れを抱く人は、今も昔も後を絶えません。実は筆者もその一人で、大阪から移住して今は道東に居をかまえています。

オートバイがきっかけで、中標津町の関係人口になった塚本さん

2004年8月19日。北海道に拠点を構えたころの塚本さん。開陽台にて。(写真は塚本さん提供)

塚本さんは夏から秋にかけて北海道・道東を拠点にし、それ以外は東京で暮らす二拠点居住生活を約20年続けています。道東で暮らす間はオートバイ専門誌の北海道部門の編集者や、各種オートバイのイベントスタッフが彼の生業です。

開陽台で毎年行われる「バイクの日」イベントに協力していた縁もあって、2022年からは「なかしべつ観光協会・モーターサイクルツーリズム推進アドバイザー」として委嘱を受けて観光行政にも関わっています。

2023年8月19日、塚本さんを慕って集まったオールドバイクの愛好者「70’sライダース」のメンバーたち。道内だけでなく全国各地の仲間が「バイクの日」のイベントのため、開陽台に戻ってきました。

「道東と東京に拠点を構えて、両方の視座で北海道を俯瞰的に見られることは大きいですね。長年、その地に住んで地域を知ることで、良い面も悪い面も両方肌で感じることができます。そのあたりを『オートバイ乗りの視点』でアドバイスできるのが、僕の強みだと思っています」

「東京にいる間は、住居管理や仕事を道東で担ってくれる仲間が必要になりますが、それを任せられる人との信頼関係は一朝一夕ではできません。自分という人間を知ってもらったうえでいい関係が続いているからこそ、二拠点での生活ができるのだと思っています。私の場合、オートバイが仲間との信頼関係を取り持ってくれています」

開陽台に向かう道路・町道北19号線(通称・ミルクロード)の風景。

道東で生活するなか、ライダー仲間の輪が広がり交流も増えたという塚本さん。趣味のオートバイを、ゆっくり触れる時間が減ってしまったことも、うれしい悩みだと話します。そんな「ありがたい悩み」を解決すべく、新たな集いの場所をつくりました。

北海道好きとバイク好きが集うカフェを、埼玉県川越市にオープン

北海道ツーリングが縁で知り合ったバイク仲間が集まれる拠点をつくりたかった塚本さんは2023年の春、埼玉県川越市に『トレイン&昭和レトロカフェ みっけ®』をオープンしました。

意匠登録も行われた、列車を模したフォルムが特徴の外観。東武東上線 上福岡駅から徒歩8分の立地にあり、お店では北海道限定の「リボン ナポリン」「ガラナ」なども販売されている。

「東京近郊に住んでいるライダーが、秩父近郊ツーリングの帰りに休憩がてら立ち寄ってくれるロケーションを考えたとき、国道254号線に近いここがいいと思ったんです。列車を使って来てくれる仲間のことも考えたら、駅から近いことも大切な条件でした」

オートバイが縁で知り合った仲間たちが提供してくれたオブジェが並ぶ店内。「昭和レトロな空間を意識した趣味のお店です」話す塚本さん。

「お店にはオートバイで北海道を旅した経験があるライダーが、たくさん来てくれます。今も現役で北海道へ走りに行く人もいれば、年齢を重ねて生活環境も変わって、オートバイを降りてしまった人もいます。関わり方はそれぞれですが、みんな北海道が縁でここに来てくれて、彼らの口コミでカフェや開陽台の評判が広まっていきます。来てくれる人たちに中標津をはじめとした北海道の魅力を伝えて、いつか開陽台で再会できたら素敵ですよね」

趣味で集めた昭和の鉄道備品や、同じく昭和時代のオートバイも展示。時にレア物のオートバイが「商品」として並ぶことも。古物商として認可を受けている塚本さん自身が販売している。

そんな青写真を描く塚本さんは、今日も「トレイン&昭和レトロカフェ みっけ®」で、北海道と中標津町、開陽台の魅力を発信しています。

●『トレイン&昭和レトロカフェ みっけ®』

〒350-1146 埼玉県川越市熊野町22-3

(090)4671-1234

不定休(営業日・営業時間は公式Facebookでご確認ください)

https://www.facebook.com/profile.php?id=100092496918706

●一般社団法人 なかしべつ観光協会

https://kaiyoudai.jp/

文・撮影:なーしぃ 

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