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敷地に降る雨を、地面に貯めてゆっくり浸透させる。新しい水害対策

TBSラジオ

この3連休も記録的な大雨が発生し、能登の被害も心配です。今年は都心でも、マンホールから水が溢れる冠水被害も相次いで雨の降り方が昔と変わってきた印象ですが、こうした水害対策として「自宅の敷地内」でてきる取り組みが注目されています。

水溜まりができないコンクリート「ドライテック」

まずは、自宅の駐車場に敷く特殊なコンクリートを開発した、株式会社フッコーの杉山 成明さんに伺いました。

株式会社フッコー・代表取締役 杉山 成明さん

簡単に言いますと水溜りができないコンクリートです。

商品名は「ドライテック」と申します。路面をドライにするテクノロジーからきてまして、ドライテックですね。

見た目は雷おこしのような形なんですけど、中にはたくさんの隙間がありまして、雨水が隙間を通って地中へと吸い込まれていくっていう。そのままずっと地中に入っていくと、地下水脈ってのは必ず流れてますんでその地下水脈へと還元されていく。

従来のコンクリートは表面を水が流れるようになってるんですね。雨が降りますと、路面、いわゆる地表面を雨水が流れていって、公共下水に流れていく。でこぼこがあったりすると、そこが全部水溜りになります。それが一般的なコンクリートです。

ただ「ドライティック」はすべて水を通しますので、水溜りができることはまずないです。ぜんぶ地面へと、地中へと浸透させることが可能です。

雨水を地中へ浸透させるコンクリート「ドライテック」。

見た目は細かい穴が開いていて、雷おこしのようなコンクリートですが、女性のヒールでも歩けます。

<ドライテック>

このドライテックの下に、水を貯める砂利の層を10センチぐらい敷き詰めることで、ある程度の雨でも、地中にため込みながら、自然の力でゆっくりと地下水に還元されるという仕組みです。

でも、どれぐらいの水を吸収してくれるのかとういと、 ある場所で行ったテストでは、日本の記録的豪雨のおよそ2・5倍の量の雨が降っても、地面に吸収されます。技術自体は10年以上前からあるものですが、この集中豪雨の影響で、問い合わせが増えているようです。

降った雨を染み込ませる空間「雨庭(あめにわ)」

水溜まりにならないのはありがたいですが、一方で、こうした特殊なコンクリートを使わずに、地面に雨を浸透させる方法も模索されています。「自宅の庭」でできる対策、どういうものか?雨水の浸透について研究している、尾崎 昂嗣さんに伺いました。

合同会社アールアンドユー・レゾリューションズ 代表社員
特定非営利活動法人雨水まちづくりサポート 会員
尾崎 昂嗣さん

なるべく敷地の中、下水道とか河川に流れる前に「降った場所で雨を溜めて、なるべく染み込ませられるところは染み込ませていくみたいな形で、「雨庭」=レーンガーデンというものを啓発していこうというような活動をしています。「雨」の「庭」ですね。

見た目はもうそのままの庭というか、植物が植わっている、綺麗な花が咲いているお庭になるんですけれども、その下の構造が、雨水の一時的に溜める空間ができておりまして、今回の活動では軽石を使ったんですけども、その軽石の間、隙間に雨水が一時的に蓄えられる、貯留できるようなスペースを作っているような庭です。なので、ゲリラ豪雨の時みたいなポケットを作ってあげる。

今東京都の武蔵野市でやっている事例でいくと、1時間あたり140ミリメートルの雨は、そこに降ってきてもすべて土の中に染み込んでいく。本当にバケツをひっくり返したどころではない雨ですかね。「雨庭」に一時的に溜まって、土の中に染み込んでいく。

「雨庭(あめにわ)」、英語ではレインガーデンと言うもので、目指しているところは、先ほどのコンクリートと一緒。

<雨庭:武蔵野市の事例(施工中)>

<雨庭:武蔵野市の事例(完成)>

一軒家のお庭の一角に、軽石などで水を貯め込む層を作って、雨が染み込みやすい地面に改造します。広さは、お庭のすみっこの一角や、お庭全体でもいいのですが、基本的に普段は水が溜まっているわけではないのですが、雨が降ると一時的に水を貯め込んで、ゆっくりと浸透させる仕組みです。

東京都は今年度中に、都内にある30カ所の公園などに「雨庭」を整備する計画があったり、都内でも世田谷区や杉並区などの個人のお宅で、水害対策のために「雨庭」を造っている所が増えているようです。

<雨庭:世田谷区の事例(施工中)>

コンクリートは便利だけど、水害の一因になっている

ただ、暮らす上では便利なコンクリートやアスファルトが、水害を増やす要因になっているということも教えてくれました。

合同会社アールアンドユー・レゾリューションズ 代表社員
特定非営利活動法人雨水まちづくりサポート 会員
尾崎 昂嗣さん

「アスファルト舗装」ですとか「コンクリート面」が増えてくることによって、雨が染み込まないところがどんどんどんどん割合としては増えていっていると。それに伴って、どんどん下水道ですとか河川に早く流れていくっていうのが、雨水の流れになっているかと。

それを、雨が増えてしまうと、それこそ下水道の流せる能力でったりだとか、河川の流せる能力は決まっていますので、それがいっぱいいっぱいになってくると流せないと。街の中にそれが溢れてしまってくる。

ここで出来ていることっていうのは、もう本当に誤差の範囲内だとは思いますね。だけどやっぱり、「塵も積もれば」ってことで、やれるとことはやっていこう。

雨の降り方が顕著に変わってきてますよね。そこに対しての対策は急務。

土の地面なら地下に染み込んでいたはずの水のほとんどが、コンクリートの上を流れていって、側溝に流れていって、下水道で処理されています。

しかし、下水管が流せる水の量には限度があるので、大雨で処理しきれなくなった水が、近くの河川に流れ込んだり、町が冠水して水が溢れてしまう状態。

地域によっては、下水道の汚水と一緒になって排出されるので、東京湾などの水質の悪化にも繋がるため、これを、雨を貯めて、ゆっくりと水を地面に浸透させることで、対策を広げていきたいと話していました。

とにかく雨の降り方が変わってきている今こそ、実情に応じた治水の在り方を、ブラッシュアップしていく必要がありそうです。

(TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」取材:田中ひとみ)

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