戦争の悲劇を忘れてはいけないシベリア抑留から生還した台湾出身の元日本兵の物語『零下五十度の抑留者』
国境を越え、世代を越え、戦争の影が遺した真実と向かう『零下五十度の抑留者』が、9月5 日(土)より、シアターイメージフォーラム他全国順次公開となる。日本統治下の台湾で生まれ育ち、日本軍兵士として戦った台湾の人たちがいる。終戦後、彼らはソ連によってシベリアへ送られ、過酷な抑留生活を強いられたという筆舌に尽くしがたい過去を秘めていた。
横浜で暮らす呉正男は、現在確認されている唯一の存命台湾人シベリア(ソ連)抑留者である。1927年、日本統治下の台湾・斗六に生まれた彼は、日本軍兵士として従軍し、終戦後はソ連に連行され、カザフスタンに抑留された。100歳を目前にした今も、自らの体験を語り続けている。しかし、その記憶を受け継ぐべき家族との間には、埋めがたい距離が存在していた。同じく1927年生まれの陳以文は、日本の勝利を信じて戦地へ向かった。しかし戦後、国民党政権下で育った息子との間には、戦争をめぐる認識の隔たりが生まれる。また、台北の名家に生まれた許敏信は、戦後「敵国のために戦った者」と見なされ、家族からも距離を置かれることとなった。彼が生涯抱え続けた沈黙は、娘の世代へと受け継がれていく。彼らそれぞれが抱えた戦争の記憶は、時代や国境を越え、子や孫たちの人生にも影を落としている。
監督・許明淳はシベリア鉄道沿いに彼らの足跡をたどりながら、台湾、日本、ロシアを巡り、彼らが歩んだ帰還の道を追う。そして抑留者本人、その子どもたち、孫世代へと連なる証言を通して、戦争の記憶がどのように家族の中で語り継がれ、あるいは失われていったのかを見つめていく。物語は、戦争が残した傷と向き合いながら、「記憶を継承すること」の意味を問いかける。
『零下五十度の抑留者』
2026 年9月5日(土) シアター・イメージフォーラム、横浜シネマリンほか全国順次公開
出演:呉正男 陳以文 許敏信
監督:コー・ビンスン(許明淳)
配給・宣伝: 太秦
【2025 年/台湾/85 分/DCP/5.1ch/台湾語・日本語・中国語】
©多面向影像工作室
公式サイト│memories-frozen.com