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【柏市】あけぼの山農業公園で放置されていた「穴窯」を再生 地元の文化芸術を発信する新拠点に

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【柏市】あけぼの山農業公園で放置されていた「穴窯」を再生 地元の文化芸術を発信する新拠点に

柏市のあけぼの山農業公園に、陶器を焼くための窯があるのをご存じですか? しばらく使われていなかったものを、おととしから有志の方々が復活させ、現在は「あけぼの窯」として陶芸ワークショップでの活用もされています。窯焼きの日にお邪魔し、窯の管理や活動を行う「布施陶芸会(仮称)」の皆さんに、窯への思いや今後の展望などについて伺いました。

かわいい見た目&パワフルな火力! 公園の傾斜を利用した大きな窯

「布施陶芸会(仮称)」メンバーとワークショップ参加者の皆さん。左から、寺前好人さん、鈴木有希子さん、宇治知海さん、長妻巧尚さん

あけぼの山農業公園の本館下にある窯は「穴窯」というタイプ。斜面に縦に溝を掘り、そこに天井を被せたシンプルな構造で、燃料をくべる燃焼室と、焼き物を置く焼成室からなり、後部に煙突がついています。丸っこくてかわいいフォルムですが、まきのみを燃料として1300℃もの高温になるパワフルさも持ち合わせています。

あけぼの山農業公園の本館下にある穴窯

ちなみに日本で初めて登場した窯はこの穴窯で、古墳時代に、朝鮮半島から須恵器の技術と共に導入されました。それ以前の土器はろくろを使わず手捻り成形した土を野焼きしていたのに対し、須恵器はろくろを使って成形したものを窯で焼くという、当時としては最先端の焼き物でした。

有志のメンバーであり、あけぼの山農業公園の職員でもある鈴木有希子さんによれば、あけぼの山農業公園の穴窯ができたのは1995年頃だそうです。

「しばらく陶芸教室などで使われていたようなのですが、コストや人員の不足などにより、ここ15年ほど使われずに放置されていたのです」

もともと陶器が好きだという鈴木さんは、個人的にもこの窯が気になっていたそうです。また近所に住む陶芸家、笠原りょうこさんも、公園を散歩しながら窯を見ては「この窯を使えるようにできないか」という想いを抱いており、市役所に問い合わせをしていたそうです。

陶芸家の笠原りょうこさん

また市内の陶芸家である長妻巧尚さん、芸術家の寺前好人さんからも「窯を使いたい」という熱い気持ちが寄せられたことから、あけぼの山農業公園元所長の木本一宏さんと鈴木さんは公園の管理者としてその気持ちを受け取り、北柏楽しいことやっちゃおうプロジェクトの小齋隆宣さん、柏市教育委員会文化課の協力を得て、令和4年に窯の復活を目指し活動をスタートさせました。

有志の手で、ひび割れの修復作業やまき集め、まき割りなどの作業を実施

窯は長年放置され、ひび割れなどの損傷もあったため、復活させるにはそれらを修復するとともに、大量のまきを集めたり、きちんと焼き物が焼けるかどうかの検証も行う必要がありました。

市の予算が設定されていない中でこうした活動を進めるにあたり、まきは市内の森などから間伐材をもらうことにし、メンバーや他の有志も手伝って、みんなで日程を調整しながら集まっては、まき割りや修復、煙突修理などの作業を進めていきました。

そして令和5年2月に試運転を行ったところ、適度なまきの量で順調に陶器が焼き上がるという感触が得られ、同年11月には1300度以上の高温による本焼きも実施し、本格的に陶器の焼成ができることがわかりました。

こうして窯は復活し「あけぼの窯」と名付けられました。

陶芸を楽しみ、窯焼き体験を楽しめるワークショップも実施

今年2月には笠原さん、長妻さん、寺前さんが陶芸を指導し、あけぼの窯で作品を焼き上げるワークショップも開かれました。

3月、ワークショップの作品を焼成するための窯焼きにお邪魔しました。三日三晩火を燃やし続けるため、数人が交代で火の番をし、まきをくべたり、酸素を送ったりして火加減を調整します。

この日の窯の内部の温度は1100〜1250度。家庭のオーブンでピザを焼く際の温度が200〜250℃であるのと比較すると、相当な高温であることがわかります。

笠原さんによれば、このような高温で焼き締めないと、出来上がった陶器は中から水が漏れてしまうこともあるそうです。また高温で焼くことで釉薬(ゆうやく)や陶器に被った灰が溶け、美しい模様になるのだとか。

普段はなかなか見ることができない、力強くボリュームのある炎。数人がかりで火を調整し見守る様子は厳かで、どこか懐かしいような非日常を感じられました。

ワークショップに参加した人も次々と訪れ、窯の周りでおしゃべりをしたり、まきをくべる体験をしました。火を囲むと年齢や性別を問わず、初対面の人とも和やかに話がしやすいので不思議です。

今回の窯焼きはこの前日の夕方からスタートして、焼き上がりは翌日昼過ぎ。その1週間後には作品が取り出されました。

あけぼの窯とそこで焼いた「布施焼」の魅力を発信していきたい

現在、長妻さんと寺前さんが主軸となり、あけぼの窯に関する活動グループを「布施陶芸会(仮称)」として立ち上げ、地元の赤土も使い、あけぼの窯で焼く「布施焼」を製作、広めていこうという目標も掲げました。

寺前さんは、この穴窯は還元焼成という製法ができる貴重なものだと教えてくれました。

「最近、芸大の学生さんがこの窯に来てくれましたが、全国で還元焼成ができる窯を探していたそうで、地元で見つけたことをとても喜んでいました。今後は若い人の力も借りながら布施焼を盛り上げていき、町おこし的な動きにつなげていければと思っています」(寺前さん)

長妻さんは、穴窯主体に教室を常設したいという願いがあるそうです。

「ワークショップでは子どもから中高生、大人まで幅広い世代の方が陶芸を体験してくれました。みんなの力で復活させた窯が、いろいろな人を呼んでくれています。陶芸教室ができれば、さらに多くの人に陶芸を楽しんでいただけるはず。私が陶芸の修行をした益子では陶器を製作し焼成する「炎祭り」を開催していますが、そうしたイベントもあけぼの窯でできたらうれしいですね」

今後はあけぼの窯について、より多くの人に知ってほしい、とメンバーの皆さん。

「これまで窯のために有志で活動してきましたが、ワークショップ参加者の方から参加費をいただくことで、初めてこの窯で利益を得ることができました。土をこねて作品を作る楽しみが味わえ、まきと人の力だけ力強い炎が出る穴窯での窯焚きができるのは貴重な体験。窯の運営にはマンパワーも必要なので、ぜひたくさんの方に来ていただきたいですし、市の協力も得られたらうれしいです」

あけぼの山農業公園
住所/千葉県柏市布施2005-2
電話番号/04-7133-8877

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