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【五感】嗅覚で楽しむ絵本3選。においを手がかりに発見を楽しもう!

イロハニアート

「五感で楽しむ絵本」をピックアップし、ひとつの感覚にフォーカスして、アートの視点から解説するシリーズ。 今回は、味覚に注目し、食べ物をテーマにしたユニークな絵本3冊をご紹介します。五感を働かせて味わったり、楽しい食卓の思い出に触れたりと、「食べること」を通して想像力が豊かに広がります。 色々な料理が登場しますので、お子さんと一緒に「どれを食べてみたい?」とワクワクしながら読んでみてくださいね!

①『あげる』—臨場感たっぷりの料理を味わってみよう


はらぺこめがね作絵『あげる』佼成出版社、2022年(画像提供:佼成出版社)

原田しんや氏、関かおり氏による夫婦イラストユニット「はらぺこめがね」の絵本『あげる』。食材を揚げる音が聞こえてきそうな表紙に、思わず目が釘付けになります。おいしそうな香りや揚げ物の熱気まで伝わってくるようで、見ているだけでおなかが空いてくる一冊です。

はらぺこめがね作絵『あげる』佼成出版社、2022年、p.2, 3

最初のページをめくると、その迫力にあっと驚くはず。表紙で揚げられたエビフライが、画面からはみ出しそうなサイズで、大胆に描かれています。衣のサクサクとした質感や、エビのしっぽのツヤ、メインを彩る野菜のみずみずしさなど、細かい部分までリアルに表現されています。

「はらぺこめがね」は、ふたりで絵の担当を分けて制作しているそうです。食べ物は夫の原田氏、キャラクターと背景は妻の関氏が描いています。

はらぺこめがね作絵『あげる』佼成出版社、2022年、p.8, 9

まずできあがった揚げ物が登場し、読者が中身を当てるという構成が、この絵本のユニークなポイントです。「あげた あげた なに あげた?」テンポの良いフレーズに合わせて、クイズ感覚でも楽しめるでしょう。

はらぺこめがね作絵『あげる』佼成出版社、2022年、p.10, 11

次のページには、揚げる前の食材が描かれています。「みっちり ミンチ」「こころはずむ ロースハム」といった絶妙な言い回しが、食感や味わいを想像させます。

「はらぺこめがね」は、絵本のモチーフを自ら料理して作ることが多いそうです。ひとつひとつの野菜も好みの形を選び、細部に至るこだわりが感じられます。

アトリエにキッチンが併設されていることも、臨場感のある表現が生まれる理由のひとつだと言えるでしょう。(※1)

お子さんと一緒に、食べ物の感触や料理の音を体感しながら、おいしい世界を味わってみてくださいね。

(※1)参考:料理を作ることを含めて「はらぺこめがね」という仕事~『みんなのおすし』はらぺこめがね~(ポプラ社 こどもの本編集部 note)

②『おすしのずかん』—食材への関心を楽しく深めよう


大森裕子『おすしのずかん』白泉社、2016年(画像提供:白泉社)

食材のつややかさや食感まで伝わってくる『おすしのずかん』。「ぺんぎんずし」というお店を舞台に、ぺんぎんたちが注文を取ったり、お寿司を握ったりと、ユーモアあふれる世界観が魅力です。

大森裕子『おすしのずかん』白泉社、2016年、p.10, 11

この絵本には、お子さんがお寿司や魚に自然と興味を持てる工夫が、たくさん詰まっています。

最初のページを開くと、「あかいおすし」「ひかるおすし」など、種類ごとにメニューが登場し、実際にお店を訪れたかのような雰囲気を味わえます。「ごちゅうもんは なににしますか?」とぺんぎんが語りかけてくれるので、お子さんが自ら選びたくなるでしょう。

作者の大森裕子氏は、生き物や食べ物の「ずかんシリーズ」を手がけており、どの作品も緻密な描写が特徴です。

幼い頃から、細部まで観察することに喜びを見出していたと話す大森氏。(※2)『おすしのずかん』を制作した時は、お寿司屋さんでほぼすべてのメニューを注文し、実物を観察したそうです。(※3)

大森裕子『おすしのずかん』白泉社、2016年、p.12, 13

『おすしのずかん』は、握ったお寿司だけでなく、食材となる魚についても知ることができます。

メニューのページをめくると、注文を受けたぺんぎんが「いま、つかまえてきますから…。」と水中に飛び込み、魚と格闘する姿が。ぺんぎんたちが奮闘する様子に、「つかまえるところから始めるの!?」と思わず笑みがこぼれます。

まずおいしそうなお寿司を眺めてから、食材について知るという構成が巧みで、「このお寿司は、こんな魚からできているんだ」と、お子さんの興味がより深まるでしょう。

ネタの柔らかさや口に入れた時の味わいまで想像できる『おすしのずかん』。実際に食べる時に、「この魚、知ってる!」とお子さんが発見する楽しみにもつながりますよ。

(※2)参考:絵本作家・大森裕子さんロングインタビュー。『ねこのずかん』や『いぬのずかん』は、子どもの頃の私がほしかった図鑑です【前編】(kodomoe)
(※3)参考:絵本作家・大森裕子さんロングインタビュー。自分で勝手に義務にして、自分で勝手に怒ってた【後編】(kodomoe)

③『ぎょうざのひ』—楽しい食卓の思い出に触れてみよう


かとうまふみ作・絵『ぎょうざのひ』偕成社、2001年(画像提供:偕成社)

作者のかとうまふみ氏が、子ども時代の思い出を描いた『ぎょうざのひ』。子どもたちがぎょうざを作り、家族みんなでおいしく食べるという特別な一日を、丁寧に描き出した作品です。

物語は、女の子が学校から急いで帰宅するシーンから始まります。どれほど楽しみにしているかが表情や仕草から伝わり、一気にストーリーに引き込まれるでしょう。

かとうまふみ作・絵『ぎょうざのひ』偕成社、2001年、p.14, 15

ぎょうざを作る工程が詳しく描かれているだけでなく、日常で交わされる家族のやりとりに親しみを感じられるのが魅力です。

3人のきょうだいが、お母さんに手伝ってもらいながら、料理にチャレンジします。ところが、誰が具材を混ぜるかをめぐって、さっそくけんかが勃発。順番を争うほど、子どもたちが真剣に向き合っている様子が伝わります。

上の画像は、子どもたちが思い思いの形のぎょうざを作る場面です。読者も一緒に作っているような感覚になり、お子さんが「実際にやってみたい」と感じるきっかけになるでしょう。

かとうまふみ作・絵『ぎょうざのひ』偕成社、2001年、p.26, 27

ついにぎょうざが完成し、一斉に食べ始めると、今度はきょうだいで取り合いに。真剣なふたりとは対照的に、周りで見ている家族は大笑い。温かい日常の風景が浮かび上がってきます。

作者のかとう氏は、家族で取り合うようにして食べるのも楽しかったと振り返っています。(※4)「こどもたちの楽しい食卓の記憶が、もっともっと、ふえていきますように」(※5)という思いが込められた作品です。

料理を作って味わう時間のなかで、けんかをしたり、怒られたりしたことさえも、あとから思い返せば大切な思い出に変わっていく——そんな温もりを感じさせてくれる一冊です。ぜひあなただけの「ぎょうざのひ」を楽しんでみてくださいね。

(※4)参考:vol.80 絵本作家 かとうまふみさん(前編)(mi:te[ミーテ])
(※5)参考:かとうまふみ作・絵『ぎょうざのひ』偕成社、2001年、p.33

まとめ:味覚を通してふくらむ想像力


今回は、食べ物が登場する絵本をピックアップし、味覚から想像力が広がる3作品をご紹介しました。

食材への関心が深まったり、家族と囲む食卓の思い出に触れたり——「食べ物」というひとつのテーマから、楽しみ方が広がります。

絵本をきっかけに、いつもの食事の時間が、ほんの少し特別に見えてくるかもしれません。お子さんと一緒に、「どんな味がするかな?」「触ったらどんな感触かな?」とイメージしながら、読み聞かせの時間を楽しんでみてくださいね。

※本記事の画像は、各出版社に許諾を得た上で、提供いただいた画像およびスキャンデータを作成して掲載しています。

《参考文献》
はらぺこめがね作絵『あげる』佼成出版社、2022年
大森裕子『おすしのずかん』白泉社、2023年(初版:2016年)
かとうまふみ作・絵『ぎょうざのひ』偕成社、2016年(初版:2001年)

《参考記事》
料理を作ることを含めて「はらぺこめがね」という仕事~『みんなのおすし』はらぺこめがね~(ポプラ社 こどもの本編集部 note)
絵本作家・大森裕子さんロングインタビュー。『ねこのずかん』や『いぬのずかん』は、子どもの頃の私がほしかった図鑑です【前編】(kodomoe)
絵本作家・大森裕子さんロングインタビュー。自分で勝手に義務にして、自分で勝手に怒ってた【後編】(kodomoe)
vol.80 絵本作家 かとうまふみさん(前編)(mi:te[ミーテ])

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