空いていた平日昼もバスが混雑…「思い切った形」札幌市でミャンマー人運転手を育成
札幌のバス会社が外国人運転手を採用する取り組みが始まりました。
将来的な増便や運転手不足解消に期待の声があがっています。
帰宅ラッシュ時のバスの車内をのぞいてみると、大変な混雑!
一方、空いているはずの平日の昼でも混雑しています。これはバスの本数が減り続けているのが原因です。
バス利用者からは困惑する声が。
「仕事でバスに乗るが、行きたい時間より早く着いたり遅く着いたりすることがある」
「混雑してバスの前から降りられなくて、後ろから降りてから前の運転手に定期とかをかざす人をたまに見る」
減少続くバス運転手
主に札幌市の中心部と南区を結ぶ『じょうてつバス』です。
10年前に比べて、運転手は30人から40人ほど減ったといいます。
じょうてつ川沿営業所の石黒寛章所長は「運転手の平均年齢も54歳くらいですから、6年もするともういなくなってしまう。再雇用で働いていただけるかっていうところになるが、減ることはあっても増えていくことはない」と話します。
「お客様にはご不便かけていますけども、減便で対応せざるを得ないという状況になっている」
全国から見ても「思い切った形」ミャンマー人留学生が運転手へ
ミャンマー人留学生、アウンさん(29)とフォンさん(24)。
2人は日本での就労をめざして、4月に日本に来日。将来の運転手候補として、じょうてつに採用されました。
アウンさんは車が大好きでミャンマーでトラックの運転手として活躍。現地の大型免許を所有しています。
フォンさんは大学に通っていたが、クーデターで国内情勢が悪化して退学。その後は飲食店などで働いていたといいます。
「特定技能1号」の制度の対象に、バスなどの自動車運送業が追加されたことを踏まえ、札幌市は3月、じょうてつと北海道アルバイト情報社と連携。
外国人留学生を運転手として採用することにしました。
札幌市はじょうてつを通して生活費の一部と、学費の半額、免許取得費用を補助します。
札幌市都市交通課の岡顕一課長は「今回、思いきった形で外国人の留学生を招き、育成する。全国的にみても行政としてここまで外国人のバスドライバーの育成に携わるという例はあまりないと聞いている」と話します。
「早く運転したいです」
2人は4月に来日して日本語の勉強を開始。今は簡単な日常会話ができるまで上達しています。
「大変ですけど、楽しいです」と話すフォンさん。(24)
授業が終わるとすぐに移動。もちろん、移動はじょうてつバスを使います。
向かったのは札幌市南区にある、じょうてつ川沿営業所です。
いまは「アルバイト」として働く2人。仕事は事務所や休憩スペースの掃除、簡単な事務作業などです。
「毎日、始まりの仕事です」
「毎日やっているので慣れました」
指導する社員からも「掃除はだいぶ慣れてきたっていう感じですね」と高評価。
「カメラの中で私たちかっこいいですか?」と冗談を言うアウンさん(29)はとてもうれしそうです。
別の日には、バスを待つ人に声をかけ、車内での事故防止を呼び掛ける活動をしました。
バス利用者からは「一生懸命ですね。ぜひがんばってほしい」とうれしい声援も。
「一番漢字が難しい」と話すアウンさん。
外国人が日本でバスを運転するには、日本語能力試験に合格する必要があります。
また、日本の交通ルールを理解し、客とコミュニケーションをとるために、2人はアルバイト中も日本語のテキストを開きます。
「早く運転したいです。運転大好きだから」
運転手デビューはいつ?
ミャンマーの運転免許を持っている2人は、2025年度中に日本の免許に切り替え、2026年度を目標に大型二種免許を取得、正社員に採用される予定です。
そして、3年後の春に運転手デビューを目指します。
「仕事はめっちゃ楽しいです」
「人を乗せてバスを運転したい」
じょうてつは、11月にも新たに1人、留学生を採用するということです。外国人が日本でバスを運転することに、困難なことはないのでしょうか。川沿営業所の櫻井省吾さんに聞いてみました。
「確かめる項目がいろいろありすぎて、焦ってしまうとかもあるけど、ゆっくり焦らずやっていくことによって覚えていくという感じですね」
運転に関しても「バックモニターやボタン式シフトなど結構最先端のものを入れております。大型2種免許と車両感覚さえ把握していれば、誰でも運転できるのではないか」ということで、大きな心配はなさそうです。
アルバイトは午後6時まで。一緒にバスで帰ります。
深刻化するバスの運転手不足解消の新たな一手となるのか。今後の2人の活躍に期待が高まります。
道外の自治体の採用例
札幌市が主導する今回の取り組み。
行政が大きく携わるという点で先進的ですが、道外では岡山市のバス会社が外国人を運転手として採用し、現在研修を行っています。
愛知県でも会社採用の例があるということです。
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2025年10月20日)の情報に基づきます。