【9/10(水)~ 9/23(火)開催】瀬戸内『し・ま・の・音楽祭』~ 瀬戸内の島々で開催される音楽祭に行ってみよう!
芸術の秋。広島県尾道市から愛媛県今治市をつなぐしまなみ海道をはじめ、とびしま海道、ゆめしま海道の島々では、毎年9月に瀬戸内『し・ま・の・音楽祭』(以下、『し・ま・の・音楽祭』と記載)が開催されます。
「島でも本物の生の音楽を!」を合言葉に実行委員会が中心となって開催しており、今回で10回目を迎えます。
『し・ま・の・音楽祭』の特長は、素晴らしい演奏を聴けるだけではありません。
チケット販売や会場設営を手伝うサポーターとして参加したり、公開リハーサルを見てプロの準備を学んだり、演奏や合唱に加わったりするなど、さまざまな形で参加できることです。
第10回 瀬戸内『し・ま・の・音楽祭』とは
『し・ま・の・音楽祭』はプロの演奏家だけでなく、地域の人々、そして音楽を愛するすべての人々が一緒になって織りなす「創る音楽祭」です。
音楽祭の期間中、島々では2種類のコンサートが開催されます。
一つは、企画の趣旨に賛同したプロの演奏家たちによる「し・ま・の・室内楽」で、弦楽四重奏やピアノ三重奏の公演で、本公演(有料)と特別公演(一部を除き無料)があります。
もう一つは、全国から公募で集まったメンバーが島で合宿をおこない、一夜限りのオーケストラを創り上げる「し・ま・の・オーケストラ」。
通称“しまおけ”と呼ばれ、ソリストオーディションで選ばれた若手演奏家をソリストに迎え、本格的なオーケストラの演奏を披露する形式です。
『し・ま・の・オーケストラ』の過去の演奏がこちらで視聴できます。
機会を創る音楽祭
『し・ま・の・音楽祭』では、島に「聴く」「奏でる」「学ぶ」「つながる」という4つの機会を創り出しています。
「聴く」機会を創る
「島でも本物の生の音楽を!」という合言葉のもと、プロの演奏会を公民館や小学校、児童館、図書館など、島の人々にとって身近な場所で開催しています。
その回数は、本公演と特別公演を合わせると、14日間でなんと19回以上です。
特別公演の詳細は記載の連絡先にお問い合わせください
また、小さな子どもづれでも気兼ねなく聴きに行ける「母と子特別公演」も開かれています。
走り回って聴いていないように見えた子が、帰るときには演奏した曲を口ずさむこともある「母と子特別公演」。
大三島や伯方島でおこなう「母と子特別公演」は、子どもがうろうろしたり声を出したりしても大丈夫だそう。
幼いうちからクラシックの生演奏に親しむと、心が豊かに育くまれることでしょう。特別公演は無料というのもありがたいですね。
「奏でる」機会を創る
『し・ま・の・オーケストラ』では、若手演奏家の登竜門となる「ソリストオーディション」を設け、未来の音楽家を応援しています。
今年のソリストオーディションで最優秀賞を受賞したのは、ヴァイオリンの増田七彩(ますだ ないろ)さんです。今年のオーケストラがどのような音色を奏でるのか、期待が高まります。
「学ぶ」機会を創る
「音楽活動をする人の参考にしてほしい」という想いから、ほとんどの公演で公開リハーサルをおこなっています。
プロの演奏家のリハーサルを見られる貴重な機会なので、吹奏楽や管弦楽を学んでいる学生さんや顧問の先生たちなどにも、ぜひ活用してもらいたいですね。
また、『し・ま・の・室内楽』では、学校特別公演として複数の小学校を訪問し、子どもたちが実際に楽器に触れる機会を提供しています。
「触れたことがなければ将来興味を持つこともない。種をまかなければ芽吹くことはない」との想いから、「将来のクラシック音楽界への投資、種まき」としておこなっているそうです。
「つながる」機会を創る
『し・ま・の・音楽祭』は、「聴く」だけでなく、演奏会運営を手伝うサポーターを募集することで、地域住民がつながり、音楽祭をともに「創る」喜びを分かち合える仕組みを築いています。
公演を聴いた人が「感動した!来年は私もチラシを配るからたくさん持ってきて」と、強力なサポーターになってくれた例もあるそうです。
いろいろな形で参加して盛り上げよう!
とはいえ、サポーターへの応募は少なく、奏者が会場設営もおこなっているのが実情です。奏者の大切な手を守るという意味でも、手伝ってくれるサポーターを募集しています。
また、本公演はしまなみ海道20周年を記念して作曲された『しまなみ賛歌』の歌から始まり、その合唱に参加する人も募集しています。
演奏会を聴く、奏でる、歌う、公開リハーサルで学ぶ、サポーターとして手伝うなど、いろいろな形で参加できるのが『し・ま・の・音楽祭』の魅力です。
「私も会場にイスを並べるくらいなら手伝えるかも」と、参加意欲が湧いてきました。
サポーターについての詳しい内容はこちらから
合唱についての詳しい内容はこちらから
『し・ま・の・音楽祭』を始めた経緯や島の変化、今後の展望などについて、実行委員長の豊嶋博満(としま ひろみつ)さんとオーケストラの指揮者である豊嶋和史(としま かずふみ)さんをはじめ、「し・ま・の・室内楽」の皆さんにインタビューしました。
『し・ま・の・室内楽』の皆さんへインタビュー
豊嶋博満さん、豊嶋和史さんをはじめ、「し・ま・の・室内楽」の奏者である東秋幸(ひがし あきゆき)さん、上条真理(かみじょう まり)さん、川村陽華(かわむら はるか)さんに、話を聞きました。
『し・ま・の・音楽祭』を始めた経緯
──『し・ま・の・音楽祭』を始めた経緯を教えてください
豊嶋博満(敬称略)──
私自身は大阪で生まれ育ち、大学からは東京に住んでいるので音楽を聴く環境には恵まれています。
しかし、伯方島に移住した学生時代の友人から、「島では日常的に生の音楽に触れる機会がないのが残念」と聞き、「それなら自分たちで創ってしまおう」と決意しました。
2013年に初めて伯方島で試験的な演奏会を開催したのが始まりです。
──初回の演奏会の感想を教えてください
豊嶋博満──
無料で実施したところ、雨にもかかわらず、館内のイスをすべて使っても立ち見が出るほどの盛況ぶりでした。
「次回も開催してほしい」という要望も多く、その期待に応えるために実行委員会を立ち上げました。
有料公演が開催できる島に変化
──2回目の公演も盛況だったのでしょうか?
豊嶋博満──
2回目は本公演を500円の有料公演にしたところ、来場者は半分以下に減ってしまいました。
それでも「島で生の音楽を聴ける環境を整える」という本来の目的を達成するためには、お金を払ってでも聴きたいという観客を増やすことも大切だと思い、その後はできるだけ有料で演奏会を行うようにしています。少しずつですがお客様の数は増えてきています。
──お金を払ってでも聴きたいと思う人が増えているのですね?
豊嶋博満──
はい。そのような手応えを感じています。
嬉しいことにアンケートに「あまりに安すぎる」という意見を多数いただきましたので、昨年は2,000円(前売券、税込)に値上げしてみましたが、意外にも観客数は増加し、目標に徐々に近づきつつあるのかなと思います
これでも都市部の演奏会よりは安いのですが、継続していくことで、どれくらいの人が聴きに来てくれるようになるのか検証したいと思っています。
──音楽祭を継続するなかで困ったことは何ですか?
豊嶋博満──
いろいろありますが、演奏会を有料化したいと思ったときに、最初はチケットを取り扱ってくれる場所がないことに困惑しました。
島で演奏できるような広い場所は公共のホールや交流館になりますが、こうした場所は演奏はさせてくれてもチケット販売などは引き受けてくれません。
そこで何日もかけてレンタカーで各島を巡り、チケットを置いてくれる店やチラシを配ってくれる人を探しました。
何軒も断られるなかで、引き受けてくださった皆さまには感謝の気持ちでいっぱいです。
せめてものお礼の気持ちで、ささやかながらSNSなどでPRしています。
今後、島で公演をしたいと思う人たちには、この音楽祭の販売網などをまねしてもらってかまわないので、演劇やさまざまなコンサートが増えることを期待しています。
赤字でも活動を継続できる理由
──採算は取れるようになったのでしょうか?
豊嶋博満──
残念ながら赤字です。クラウドファンディングで資金を募るなど、黒字化の方法を模索中です。
──活動を継続できる理由は何ですか?
豊嶋博満──
やはり、目的が目先の利益ではなく、「島々で生の音楽が聴ける環境を作る」という試みだからでしょう。
10回目の今年、どれくらいの観客が来てくれるのか、活動の成果を検証する時期に来ています。
豊嶋和史(敬称略)──
私は室内楽というものをより多くの人に知ってほしいという思いで続けています。特に弦楽四重奏はほかではあまり聴けないものなので、ぜひ、この音楽祭で多くの人に聴いてほしいですね。
川村(敬称略)──
この音楽祭はクラシック音楽に特化しているので、観客からどのような反応があるのか楽しみにしています。
でも、最後はいつも「やって良かった」と思うんですよね。
上条(敬称略)──
演奏家は一人で活動することが多いのですが、この音楽祭では2週間、同じメンバーで一緒に過ごせるのが楽しくて続けています。また、島のおいしいものを食べたり、地元の人と話したりできるのも楽しみです。
東(敬称略)──
島の人たちがとても真剣に聴いてくれることがモチベーションになっています。
また、自然豊かな瀬戸内の島々で演奏できること自体が楽しみです。
「創る音楽祭」を地域文化の活性化に役立てたい
──今後の展望を教えてください
豊嶋博満──
10年以上かけて、しまなみ海道だけでなく、その周りの島々でも公演できるようになりました。
瀬戸内の島々が音楽祭をきっかけに、さらに活気づいてくれることを願っています。
具体的には、島から出なくてもさまざまな文化に触れられ、都会から若い人が移住したくなるような環境を整えることが重要だと考えています。
音楽がその一助となると良いですね。
──広島から島根にかけてやまなみ街道もありますが、そうした方面への展開もありそうですか?
豊嶋博満──
じつは、ほかの地域からの声にも応えていけるように、「創る音楽祭」という団体を立ち上げました。
これまで培ってきた音楽祭の運営ノウハウを、必要としている人々に提供することで、瀬戸内の島々から始まった「創る音楽祭」の輪が、さらに広がっていくことを期待しています。
おわりに
『し・ま・の・音楽祭』は、単に音楽を聴くだけのイベントではありません。プロと地域住民が一体となって、島に「聴く」「奏でる」「学ぶ」「つながる」という豊かな機会を生み出しています。
10年以上かけて育くまれてきたこの活動が、今後さらに「創る音楽祭」として輪を広げていけるように、私自身もできる形で参加したいと思いました。
瀬戸内の文化を豊かにしてくれる『し・ま・の・音楽祭』に、ぜひ足を運んでみませんか。