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KALMA×NEE、ロックの新しい時代を切り拓くバンドたちによる『ビクターロック祭り~アタラシイチカラ~』4日目レポート

SPICE

KALMA

『ビクターロック祭り~アタラシイチカラ~』


KALMA×NEE OA:SPENSR


2022.2.27 Veats SHIBUYA

自分たちが信じる音楽で果たして何を伝えられるか。そういう熱い信念を胸に秘めたアーティストたちの共演だった。Dragon Ashやサンボマスター、サカナクションらが所属するレコード会社、ビクターの若手アーティストが一同に会した3日間にわたる対バンイベント『ビクターロック祭り~アタラシイチカラ~』。その最終公演だ。出演はSPENSR、NEE、KALMAの3組。おそらくジャンルで言えば、まったく異なるグループにわけられるようなメンツによるこの日は、それぞれのやり方で音楽への愛情や思想、遊び心を詰め込んだ、三者三様の個性があふれた一夜になった。

「どうも。SPENSR(スペンサー)です。よろしく」。キーボードに加え、マニュピレーターも擁するという4人のサポートメンバーを引き連れて、オープニングアクト、SPENSRのステージが幕を開けた。2019年に始動したSPENSRは、トラックメイキングはもちろん作詞作曲から楽器の演奏、ボーカルまで、すべてをひとりで手がける気鋭のシンガーソングライター、カズキ_ウツミ(内海一希)によるソロプロジェクトだ。そのステージは「PATIENCE」からスタート。変則的に展開していく多彩なビートと中毒性の高いシンセのうえで、ウツミによるアーバンなボーカルが軽やかに紡がれていく。続けて、エイティーズなダンスナンバーの気分を散りばめた「どうしようもないな」へ。いま世界的なトレンドでもあるエレクトロなネオソウルを中心に、R&Bやファンク、ディスコなど、ブラックミュージックからの影響を落とし込んだ日本語によるメロウなポップスがフロアをアーバンな雰囲気で包み込む。

SPENSR

「自由に、ご自分の方法で踊ってくれたらと思います。じゃあ、ちょっと揺れていきますか」。それまでギターを持ちながら歌っていたウツミがハンドマイクに変わり、ミニマムなサウンドのなかで全身を大きく揺らしながら届けたのは「Navy Slumbers」。曲作りは打ち込みが主体だが、ライブでは生のバンド感にこだわることで、SPENSRの音楽は、レコーディング音源とはまた一味違う熱量と肉体感を帯びる。その生々しい人間の呼吸がより強く感じられたのがラストソング「LOVE THERE」だった。終盤にかけて渦巻くように加速していくエモーショナル。終演後、本人のTwitterで、この曲では、「愛があれば、世の中もっと平和でいられると信じています」という想いが感極まり、ピッチが狂ってしまったと明かしていた。一見、クールにも見えるその若き才能の胸のうちには抑えようのない衝動がある。わずか4曲だったが、そのことを十分感じられるステージだった。

SPENSR

尖っているようで柔らかで、美しい調和のなかに歪な狂気が見える。圧倒的なオリジナリティで本編の先発で登場したのは、昨年ビクターからメジャーデビューを果たした4人組バンド・NEEだ。デビュー作1st Full Album『NEE』のオープニングを飾る「全校朝会」(その名のとおり、学校の朝の朝礼とファンタジックなサウンドが融合された不思議なインスト曲)にのせて、くぅ(Gt/Vo)、夕日(Gt)、かほ(Ba)、大樹(Dr)が登場した。かほが奏でる強靭なスラップベースがリードする「アウトバーン」から、夕日のギターが鋭利に切り込む「九鬼」へ。タイトなビートを刻むドラムの大樹。NEEの音楽は、ヴェイパーウェイブを根底に、ロック、ファンク、ダンスミュージックなど、様々な音楽を持ち前の遊び心で自由に縦断する。まるで音楽という一生かかっても遊び尽くせないオモチャを手にした無邪気な子どものようだ。

NEE

序盤のアッパーな勢いをクールダダウンする横揺れのグルーヴを届けた「本当は泣きそうです。」から、力強く地面を踏みしめて行進するような「第一次世界」、テンポチェンジを繰り返しながら予測不能に突き進む「ボキは最強」へ。昨年、恵比寿リキッドルームの追加公演を含む全国ツアーを完走し、もはや彼らが数百人規模のライブハウスには収まりきらないバンドになったことを確信するスケールの大きなステージが続いた。そんななか、終盤、くぅが見せた気迫のパフォーマンスに息を呑んだ。「今日は言いたいことがあって……」と緊迫した中で彼は一心に思いを言及した。「こんな時代で何が正しいか、正しくないかは自分で決めてください。できることはあると思います」会場が彼らへの視線を一点に集める中で「革命は起こりません!」の一言と共にNEEの存在感を加速させていくような「不革命前夜」「ビリビリのーん」、新曲「月曜日の歌」へとつないだのだ。そこにあるのは、怒り、やるせなさ、それでも捨てられない希望と愛。ジタバタと地団駄を踏むように鍵盤を弾くくぅが帽子を吹っ飛ぶぐらいの激しい歌唱を見せると、それに煽られるようにバンドの演奏にも熱がこもった。最後はピースサインを掲げた姿が全員の目に焼き付いたところで終演。いままでNEEのステージは「遊び場」のようだと思っていたが、実はそこは彼らにとって「戦いの場」なのかもしれない。敵は、私たちの自由を脅かすものすべてだ。

NEE

この日の出演者のなかでは最も楽器の数が少ないスリーピース編成で、KALMAは直球のロックをぶつけた。ヴァンパイア・ウィークエンド「This Life」をSEに、畑山悠月(Vo/Gt)、斉藤陸斗(Ba)、金田竜也(Dr)がステージに現れると、衝動的なロックナンバー「少年から」でライブの口火を切った。「SPENSRがもうすでに今日が特別だって証明してくれて、NEEが心踊る音楽が必要だってことを証明してくれた。僕たちは、みんなが今日ライブハウスに来てくれたことは間違いじゃなかったことを証明します」。気合いのこもった畑山の言葉でこれからはじまるライブへの期待を煽ると、緩急をつけてパンキッシュに駆け抜ける「ねぇミスター」から、加速するビートに人懐こいメロディがはずむ「1分間の君が好き」へと、些細なことで浮き沈みする日々のもやもやを吹っ飛ばすように、序盤からフルスロットルのテンションで想いをステージにぶつけていった。

KALMA

MCでは、楽屋の雰囲気がとても賑やかだったと明かした畑山。特にNEEの4人は仲が良く、「3年6組にいる感じ。(隣の)3年5組うるさいね、みたいな(笑)」と絶妙なたとえでフロアの笑いを誘った。焼肉チェーン店・牛角のCMソングとして、バンドが初めてCMに書き下した爽快なナンバー「ジェットコースター」から、「思っていることはしつこいぐらい、どんな言葉になってもいいから伝えましょう」と言葉を添えたポップソング「恋人」へ。高校時代に音楽シーンで頭角を現し、20代を迎えると同時にメジャーデビューを果たした彼らの楽曲と言えば、若さや青春性が強く打ち出されていたことが印象的だったが、昨年10月にリリースされた最新アルバム『ミレニアム・ヒーロー』では、より幅広いポップスへと表現の裾野を広げている。この日のステージはそんなKALMAの原点と進化の両方が感じられた。「君の背中を押したいとか、そんなんじゃない。君の隣にいたいんだ!」とバンドの在り方を改めて表明するような未発表の新曲「隣」から、火力を一点に集中させて突破するようなショートチューン「モーソー」まで40分で全11曲。登場したときの勢いがまったく衰えることがないまま、全身全霊で駆け抜けた。

KALMA

なお、冒頭に書いたようなビクターのベテラン勢が多数出演する『ビクターロック祭り~2022~』は3月19日に幕張メッセ国際展示場9・10・11にて開催される。その日のアタラシイチカラ枠にも、KALMAの出演が決定している。「俺たちがビクターの新しいちからだ!」。イベントの締めくくりにKALMAの畑山はイベントタイトルを引用して、そんなふうに叫んだ。脈々と受け継がれていくロックシーンの最先端にいる彼らは、きっとここからロックの新しい時代を切り拓いてゆくだろう。

文=秦理絵 撮影=中山優瞳

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