Yahoo! JAPAN

Lucky Kilimanjaroツアー『21 Dancers』で味わった、こえられない夜と時代をこえるためのダンスミュージック

SPICE

Lucky Kilimanjaro 撮影=田中聖太郎

Lucky Kilimanjaro presents. TOUR “21 Dancers“


2021.11.24 Zepp DiverCity(TOKYO)

埒のあかない日常の焦りや、もっと大きな漠然とした不安。それをどうにかできるのは結局自分だ。自分の肉体と感情を最大限に駆動させてダンスすることで自分を楽しませる。自分の可能性を感じる。モヤモヤをぶっ飛ばすダンスで最大限、自分を祝福するーーLucky Kilimanjaroのライブが求められている理由が文字通りノンストップで押し寄せてきた、圧巻の約2時間を経験した率直な感想はそれだ。

2021年はパンデミック以降の若者(に、限らないかもしれないが)のライフタイムの変化をビビッドに落とし込んだ2ndアルバム『DAILY BOP』のリリースに続き、「踊りの合図」「楽園」と、バンドで表現するエレクトロダンスミュージックをハイブリッドに変化させた新曲をコンスタントに配信リリース。ライブも、アルバムツアーや4月の日比谷野外大音楽堂での『YAON DANCERS』、そして今回の全国7ヶ所に渡るツアー『21 Dancers』と着実にキャパシティを増やしてきた。ここではソールド・アウトしたツアー本編最終日のZepp DiverCity(TOKYO)をレポートするが、正直、予備知識はなくても存分に楽しめることはこの日十二分に体感した。誘ってみたい友だちがいれば躊躇している暇はない、と言っておこう。

ツアータイトルの『21 Dancers』はライブの現場にいるバンドとファンのみならず、先の見えない2021年を現在進行形で生きている人をLucky Kilimanjaroが形容するワードだと思う。ちなみに本編1時間40分はほぼノンストップ。熊木幸丸(Vo)がMCらしいMCはほぼせず、何度も「自由に踊って」「まだ踊れますか?」と繰り返していたのは煽りというより、楽しみながら一緒に生きるというニュアンスに近いし、ファンの潜在能力を引き出しながら、引き出されるほどにバンドにも還流していくという循環が迸っていた。

選曲は2021年を経た上でのオールタイム・ベスト的な充実度。初期ナンバーである「SuperStar」や「Burning Friday Night」から、最新曲「楽園」まで、約7年の音楽的なスパンがありながら、よりダンスミュージックに特化したライブアレンジを施し、曲間のブリッジにも趣向を凝らし、誰も置き去りにすることなく踊り続けることを可能にしていく。

リリースされた頃とは違う意味を纏いながら、同時に若い社会人リスナーにとっては通奏低音のような「ひとりの夜を抜け」のデフォルトで存在するしんどさと、でも<好きな自分を諦めたくはないな>というリアリティ。どの曲でもなんらかのリリックが心に刺さりながら、ステップを踏み、身体を揺らすことは止められない。ファンのダンスの自由度を上昇させたのは、生演奏のスタイルに拘泥しない演奏スタイルのブラッシュアップが最大の理由だろう。柴田昌輝(Dr)のドラムソロがEDMのドロップのカタルシスのように感じられるフレージングだったり、山浦聖司(Ba)のシンセベースが、より奥行きのあるライブサウンドを下支えしていたり、ラミ(Per)の操るMPCプレーヤーがトリッキーな「Superfine Morning Routine」のリフを堪能させてくれたり、ジャンルは違うが、臨機応変な楽器の抜き差しはまるでジェイムス・ブレイクの初見時の印象、そしてそれ以降のエレクトロバンドの印象に近い。そして放たれる音像はハウシーだったり、ブレイクビート的だったりして、00年代のダンスアクトを彷彿させる。「Drawing!」のシンセの膨張感たるや……。快適に自我が消えていく。

また、タフなファンク感とフワフワした大瀧真央(Syn)のシンセ、フックになる松崎浩二(Gt)のオブリガートに揺れる「雨が降るなら踊ればいいじゃない」では、春の野音を想起した人もいるかも知れない。熊木のタイラー・ザ・クリエーターばりのフロウと<回って回って回って>とリフレインしつつ回転しながら歌うタフさ。持続する構成の中で演奏し続けるプレーヤー陣は何か大きな生き物のようだ。出音の圧は違うけれど、ファンクバンドのような持続するグルーヴがフロアを揺らし続ける。

音数の少ないミディアムチューン「Everything be OK」は、東京で生活しているリスナーには特に情景が浮かぶ。明快に聴こえる熊木のボーカルが感傷と前向きさを鮮明に響かせる。『DAILY BOP』からの「MOONLIGHT」など、アッパーな曲以外のブロックも秀逸だった。新旧のレパートリーを今の演奏で並列するスキルにも感銘を受けたが、『DAILY BOP』から立て続けに披露された「エモめの夏」などのブロックは、刹那的な夏を眼前をぱーっと開かせるようなブライトなシンセで彩ったり、逆に自分の内側に潜るような「KIDS」のような曲もあったり。今年の夏を思い出しながら踊っていたファンも多いはず。ダンスミュージックとして機能しながら、フッと心の深いところに刺さる内省的なリリックとともに揺れる体験はLucky Kilimanjaroならではだ。

日常の中の祝祭を感じる「楽園」、ブラジル音楽に乗せて、日本的なようなヒップホップの声ネタのようにも感じる掛け声も入る、ラッキリならではのハイブリッドナンバー「踊りの合図」など、どこまでも踊れるエレメントの範囲を拡大・発見していくスタンスを新曲で明らかにしてみせた。しかしもう、どんなビートでもファンは自分のダンスを踊るのみ。頼もしい。

アンコールで「今年は辛い時もあったけど、こうしてみんなと踊れて救われました」と、端的に感謝を述べた熊木。バンドはすでに次に向かって進んでいる。3月の3rdアルバムのリリース、そしてアルバムを携え、自己最大キャパとなるパシフィコ横浜でのファイナルを含むアルバムツアーも発表。「デカい会場なんで、ここにいる人はみんな友だちを連れてくるように」と軽く懇願していたが、実際、この楽しみとクオリティを誰かと共有したいと素直に思えるのが、いまのLucky Kilimanjaroのライブだ。この先まだ何があるかわからない日常の中、彼らの音楽とともに歩いて行こうと思う。

取材・文=石角友香 撮影=田中聖太郎

【関連記事】

おすすめの記事