【お金の知識】知らないと損するかも…!意外と知らない「介護でもらえるお金・使える制度」
家族に介護が必要になったら「どのように介護していくか」といったことの他に、「介護にかかる費用の工面」や「介護をすることによる収入ダウン」などお金の心配もでてきます。今回は、家族を介護したときにもらえるお金や使える制度についてお伝えします。
介護にかかる「お金」と「期間」はどのくらい?
介護が始まると、生活はどのように変わるのでしょうか。介護にかかるお金と期間の平均を見てみましょう。
介護にかかるお金は、介護される人の状態や、在宅介護か施設介護か、介護サービスをどのくらい利用するか、また介護される人や世帯の収入などによって変わってきます。公的介護保険制度では、どの程度の介護を必要とするかを「要介護度」という基準で区分していますが、一時費用も月々の費用も要介護度が上がるにつれて増える傾向にあります。
介護が始まったら、まずは「公的介護保険」を利用しよう。
介護が始まったら、最初に利用を検討するのが公的介護保険です。40歳以上のすべての人が加入し、保険料を負担しています。公的介護保険では、要介護度により決まる限度額までの介護サービスを収入に応じた1~3割の自己負担で受けられます。下表は居宅サービスの1カ月当たりの利用限度額です。
例えば、要介護3の人が1か月に25万円の介護サービスを利用した場合、限度額270800円以内に収まっているので全額保険が適用され、自己負担割合が1割なら25000円を支払います。施設に入居する場合は、施設サービスの自己負担の他に居住費や食費、生活費などが必要になります。また、在宅介護のために手すりをつけたり、段差をなくしたりといった住宅の改修や介護に必要な福祉用具のレンタルや購入にも介護保険が適用されます。
申請すれば介護でかかった「お金が戻ってくる」場合も
公的介護保険を利用してもなお介護費用の負担が大きい時は、以下の制度のように申請すればお金が戻ってくる場合があります。
高額介護サービス
1か月の利用者負担の合計額が所得に応じた上限額を超えた場合、その超えた分が介護保険から支給される制度
・申請先:市区町村
高額医療・高額介護合算制度
同じ健康保険の世帯内で、1年間の医療保険と介護保険の自己負担の合計が収入に応じた限度額を500円以上超えた場合に、負担額が軽減される制度
・申請先:加入している健康保険
特定入居者介護サービス費
介護施設に入所していて所得や資産等が一定以下の場合、負担限度額を超えた居住費と食費が軽減される制度
・申請先:市区町村
“働きながら”介護をするために使える制度
介護が始まると、たとえ在宅で直接介護をしなくても、通院に付き添う、介護サービスを受けるために役所に出向く、ケアマネージャーと面談するなど、やることがいろいろあり仕事を休まなくてはいけないことが多くなります。
とはいえ、将来のことを考えると介護離職はできるだけ避けたいものです。会社員は、介護休業と介護休暇をとることができると法律で決まっています。ただし、働き方により一部の労働者を対象外としている会社もあります。介護が始まったら早めに職場に確認しましょう。
介護休業
2週間以上介護が必要な家族1人につき、通算93日間(※)まで休業できる制度。
※3回までの分割取得可
介護休暇
2週間以上介護が必要な家族が1人の場合は年5日まで、2人以上の場合は年10日までを1日または時間単位で休める制度。
介護休業・介護休暇が有給か無給かは会社によりますが、介護休業が無給の場合は、雇用保険から賃金のおよそ67%の「介護休業給付金」を受給できる場合があります。年次有給休暇も含めて上手に休暇制度を利用し、仕事と介護を両立できる体制を取りましょう。
介護は、体力的、精神的、経済的に負担を伴います。使える制度を理解し、できれば介護が始まる前に、親の希望や経済状態を確認したり、兄弟や家族間で介護が始まった時の役割分担を話し合っておいたりと、早めに準備しておくことをおすすめします。
山根純子/ファイナンシャルプランナー