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「孫に発達障害があるかも」祖父母に伝えたら否定される?不安なカミングアウトの結果は

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「孫に発達障害があるかも」祖父母に伝えたら否定される?不安なカミングアウトの結果は

監修:新美妙美

信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 特任助教

孫に障害があるとは想像していなかった祖父母に、孫の発達障害の可能性をどう話す?

知的障害(知的発達症)を伴うASD(自閉スペクトラム症)の次男Pの障害が分かったのは、Pが2歳から3歳頃でした。私の両親とは離れて暮らしているので、会えるのは年に数回で、両親はPの成長をそばで見ていたわけではありませんでした。そのため、私が話をするまでPの発達が遅いこともとくに心配している様子はなく、孫に障害があるなど夢にも思っていなかったと思います。当時はまだ未診断ではありましたが、私は「Pには障害がある」と確信していたので、私がPへ感じている発達の不安と障害の可能性を両親にも早めに話すことにしました。

まだ未診断…「親が子どもの成長を信じなくてどうするの?」と言われてしまうかも?

Pの言葉が出ないこと、目が合わないこと、その他ASD(自閉スペクトラム症)の特性と見られる行動があることをきちんと説明すると、両親はそれを聞いて「母親であるあなたがそう思うなら、間違いないと思うよ。」と私の話を否定せずに信じてくれました。

私は両親から「まだ診断されていないんだし分からないでしょ?」「親が子どもの成長を信じなくてどうするの?」などと言われるかもしれないと身構えていたのですが、私の考えに寄り添って受け入れてくれたことがうれしかったし、悩んでいたことを話せてホッとしたのを覚えています。

その後、Pに知的障害(知的発達症)を伴うASD(自閉スペクトラム症)という診断が出て、私の両親にとってPは「障害のある孫」となりました。帰省したときには、Pが実家の物を壊したり汚したりしてしまうこともあったので申し訳なかったのですが、そんなときも「Pが怪我をしなくてよかった」「古い物が新しくなるし、買いかえの機会になる」「汚してくれたから掃除ができて前よりも綺麗になったからよかったよ」などと言い、前向きな言葉を使って優しく見守ってくれていました。

孫に障害があることが分かり、少しずつ障害への知識や理解を得ようとする祖父母は…

私の両親の周りには障害者がいない環境だったので、父も母も最初から障害者に対する知識や理解があったわけではありません。でも孫であるPに障害があることが分かり、実際にPと過ごす中で生活の難しさや大変さを目の当たりにしたことで、2人の意識が何となく変わってきたように思います。Pのことを知るために、本やテレビを見たり、インターネットで検索したり、また障害のある人たちと関わっている人たちの話を聞いてみたりなど、自分たちなりに知識を得るようになってくれました。やはり遠い他人の話ではなく、身近な孫の話となると、ASD(自閉スペクトラム症)や障害者のことを理解したいという気持ちが自然と沸いてきたのかもしれません。

そして孫のPを理解しようとする両親の姿勢は、同時に子どもである私にも寄り添い、支えてくれているように感じます。障害児の親となった私にとって、離れて暮らしてはいるけれど、いつも精神的支えになってくれている両親に感謝しています。

執筆/みん

(監修:新美先生より)
ご両親に、お子さんの発達障害の可能性について伝えた時のことについて詳しく聞かせていただきありがとうございます。
発達障害が日本で認知されるようになってきて日が浅いので、祖父母世代が子育てしていた頃(つまり保護者さん世代が子どもの頃)は、まだあまり発達障害の概念が知られていませんでした。このため祖父母世代にはなかなか発達障害のことは理解してもらいづらいことも少なくありません。

みんさんのご両親は「母親であるあなたがそう思うなら、間違いないと思うよ。」とみんさんの言葉をそのまま受け止めてくれたという一節は、読ませていただいて涙が出てしまいました。みんさんとご両親の関係性がとっても素敵です。いつか私もこういう祖父母になりたいと思ってしまいました(これは監修コメントではなく一個人の感想ですね)。

そしてさらに、帰省時にものを壊したり汚したりした際にも、すごくポジティブな声かけをしてくれて本当にありがたいですね。そんなふうに穏やかに受け止めてもらえると、親子とも安心して帰省ができますね。お孫さんの様子を見ながら、障害特性にも関心を持って理解を深めて下さる姿に深い愛情を感じます。

発達障害のことを祖父母に伝えた際の、一番ありがたい対応のお手本のようなエピソードに感動してしまいました。実際にはこんなにうまくはいかなかったということもあるかもしれません。でも、祖父母には孫のことを理解してもらいたいと思ったときに、どんなタイミングで伝えるかを考えたり、伝えたことのメリットを知り、話してみようという勇気につながるエピソードになったかもしれません。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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