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夫婦喧嘩で徹夜、育児で対立…意見の違いはチャンスになる?【発達凸凹いい夫婦の日エピソード】

LITALICO発達ナビ

夫婦喧嘩で徹夜、育児で対立…意見の違いはチャンスになる?【発達凸凹いい夫婦の日エピソード】

監修:森 しほ

ゆうメンタル・スキンクリニック理事

意見や性格が違うから、分かり合えた時の発見や喜びがひときわ大きい

夫ラクマです。
私から見た妻ワッシーナをひとことで言うと「家庭内時限爆弾」です。結婚したばかりの頃は、ほぼ毎晩のように夫婦ゲンカをしていました。妻ワッシーナの激しい言動がまるで攻撃されているように感じていたからです。ワッシーナは、ふだんは優しくて家庭的な人なのですが、機嫌よく過ごしていたのに急に激しく怒りだすのです。まるで時限爆弾みたいに予告も前兆もなく爆発します。その爆発が朝まで続くことがしばしばあって、私は徹夜で話を聞いて仮眠を取らずに仕事に行くこともありました。

子どもが次々と産まれたので、マタニティブルーなのか? とか、はたまた二重人格なのか? とも疑いましたが、いろいろ調べても納得がいかず思い悩んでいました。結婚前に二人で「ケンカしても、その日のうちに相手を許そう」というルールを決めたせいで、何度も歯を食いしばって妻を許しました。今となっては、仲直りルールを決めておいてよかったと心から思います。

14年前に子どもたちが専門家から発達凸凹ではないかと指摘を受け、療育のトレーニングを受けるようになってから、私たち自身にも発達凸凹があることを自覚しました。それを機に夫婦生活が激変。毎日が発見の連続で、工夫すると効果がすぐ現れたので、おもしろくて楽しくなってきました。

自分の苦しさをうまく表現できず、誤解を与えていることに気づけなかったが、工夫で乗りきれた

妻ワッシーナです。
私から見た夫の役割は「地球人と火星人の通訳者」です。私は、いわゆる発達凸凹タイプの人たちと定型発達タイプの人たちとは、日本人と外国人以上に個性が異なると感じています。なので、発達凸凹タイプを「火星人」、定型発達タイプを「地球人」と表現してきました。夫ラクマには、そんな火星人(発達凸凹タイプ)の言動や個性を分類して整理し、地球人(定型発達タイプ)に分かりやすく表現する能力があるという意味です。

または「ワッシーナ専用ゴーストライター」です。私の書きたいことや表したい映像などをカタチにしてくれます。ラクマは私のことを「家庭内時限爆弾」とか言っていますけど、表現がおもしろくて光栄ですね。

まるで攻撃しているかのように見えるかもしれませんが、爆発しているのは、実は苦しいからなのです。わが家が発達凸凹な火星人タイプだということが分かる前は、とにかく苦しくて困っていました。一番困っていたのは、なぜ私が苦しんでいるのか、その原因は何なのか、解決するにはどうすればいいのかということが、まるで分からなかったことです。それどころか自分が苦しんでいる、パニックになっているということを認めることすらできませんでした。だから夫ラクマにも、とにかく分かってほしいという苦しい感情をぶつけるばかりでした。

発達凸凹だと分かってからは、このつらさの原因は脳神経のはたらきの違いによるものだということがはっきりして、とても楽になりました。今は、夫とも新婚時代に逆戻りした感じで、とてもうれしいです。

とことん調べて妻を説得し、子どもたちそれぞれに社会体験を行う

夫ラクマです。
私は家族全員が発達凸凹と分かり、たくさんの資料を読み、療育センターでトレーニングを受け、定期的に相談を受けてもらううちに、発達凸凹当事者の子どもほど、より早いタイミングで社会体験が必要だと切実に感じるようになりました。

ところが妻はあまり乗り気ではありませんでした。彼女は一般的な考え方から抜け出せず、まずは学校やクラスメイトたちと仲良くさせたい、友だちを増やしたいと考えているようでした。ワッシーナは、あまり納得していませんでしたが、私はやや強引に社会体験を進めました。長女ニャーイにはナレーター研修、長男ウルフーにはコマーシャル撮影の助手、次女リスミーにはファッションモデル体験、次男ウッシーヤは農業体験などです。

体験させる内容は本人が幼い時から興味のある分野に限りました。体験後はワッシーナと一緒に振り返りをして、今後の行動を考えていきました。ある程度、成果が出てくるとワッシーナも子どもたちの社会体験を積極的に応援するように変わってきました。

今現在は、4人の子どもたち全員が社会人になっていますが、子どもの頃の社会体験が活かされているようです。それぞれが子ども時代の社会体験と同じ職業や同じ趣味を持っています。

子どもたちの社会体験には反対。夫に押し切られて進めたが結果は良好!

妻ワッシーナです。
療育センターのアドバイスを受けた夫から、「子どもたちに早いうちから社会体験をさせたい」と聞いた時、つい拒否反応が出てしまいました。それより、学校で友だちを増やす工夫が大切だと感じたからです。まだまだ幼さが残る思春期の子どもたちに無理に社会体験させると、ますます学校やクラスの雰囲気についていけなくなるのでは、と心配したのです。私としてはクラスメイトたちと普通に買い物や映画に行ってほしかったのです。

クリスマスにゴスペルコーラス隊に子どもたちが参加したいと言いだした時も、私は反対でした。というのも、ゴスペルコーラス隊のメンバーは、女性は20代以上、男性は40代以上の方々ばかりで、中学生だった次男と同世代の子どもは一人もいなかったからです。夫は子どもたちの社会活動に大喜びでした。「大人になれば年齢差なんか関係ないから、早くいい仲間をつくったほうがいい」と言うのです。その後、子どもたちが参加するコーラス隊の練習風景を見て、ますます私は拒否反応を見せてしまいました。

ところが子どもたちはコーラスをとても楽しみ、社会人になるまで続けるほどでした。当時のコーラス仲間は20歳以上も年齢が離れていますが、今でもいい関係が続いているようです。

普通が一番という「普通病」に侵されていたが、考え方と行動を変えてハッピーに!

今振り返ると、当時の私は偏った考え方に縛られていたように思います。本来の私は一般的な常識よりも、おもしろいことが好きなタイプです。しかし当時の私は「普通病」に侵されていたため、本心では願っていないのに、なんでも普通がいい、普通が一番、子どもたちも普通の人間関係を築いてほしい……と、子どもたちや夫に理想を押しつけてしまいました。

4人の子どもたちの中で一番友達がいなくて心配したのが次男ウッシーヤです。でも今、彼は社会人になってからフラワーアレンジメントの資格を取って、花を通じたボランティア活動を続けています。花を通してつながった知人や友人は、そのほとんどがかなり年齢の離れた女性たちです。

私は今、人の社会活動は近いところからしか始まらないのではなく、好きな活動であれば年齢・性別は関係ないと分かりました。意見の合わなかった夫の考えも、ひとまず受けいれて実行してみてよかったと思います。私は発達凸凹の特性ゆえに、今現在の子どもたちしか見えておらず、子どもたちの将来像をうまく描ききれませんでした。発達凸凹の理解が進んで、私自身もずいぶん子育てが楽になりました。

夫婦で意見が違うということは、話し合いのいいチャンスだと思います。時間をかけて話し合い、決めたことを実行し、その結果をまた話し合うことで、これまで知らなかった相手の考え方が少しずつ分かってきます。

今では、毎週土曜日の午前中に、夫婦の振り返りを行なっています。私は何年経っても、振り返りがあることをすぐ忘れてしまうのですが、ラクマはしっかり覚えていて、毎週彼から声かけをしてくれます。

執筆/ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ

(監修:森先生より)
お子さんが療育に通われている方の中には、「自分自身の生活がとっても楽になった」とおっしゃる方は多いですね。 発達障害についての理解が進むと、「子供との関わり方」だけでなく、「配偶者との関わり方」や「自分自身の扱い方」も上手にできるようになるためではないかと考えられます。 夫婦はもともとが他人ですし、性格も違えば育った環境も違うので、「お互いに違って当然」ということを念頭に置いていないと、協力し合うことは難しいのです。相手と自分の考え方が違うことを理解していないと、期待し過ぎてしまったり、誤解や争いが生まれてしまいますよね。 ラクマさん・ワッシーナさんご夫婦のように、「話し合いのルール」や「仲直りルール」を決めておくといいですね。

また、社会体験に早いうちから参加していたことも結果的に良い方向に作用したようですね。同世代との付き合い方を学ぶのも必要ではありますが、学校の同級生という狭く閉じたコミュニティの中だけだとコミュニケーションをうまく取れないことにコンプレックスを抱いてしまったりすることもあり得ます。 社会体験をすることで、お子さんは普段接している範囲よりもずっと広い世界があることを知って大人になってからの生活をイメージしやすくなったり、保護者自身もわが子の将来をイメージしやすくなりますよね。

療育はお子さんだけでなく、保護者の方にとっても理解を深める良い機会になるのではないでしょうか。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

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