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横浜市港南区に位置し、京浜急行本線と市営地下鉄ブルーラインのハブステーションである上大岡駅は、市内有数の商業都市。駅に直結する京急百貨店を筆頭に、旧鎌倉街道沿いに面する西口駅前は商業施設や複合ビル、タワーマンションが約500mにわたって立ち並びます。

大型商業施設を主軸に栄える上大岡駅周辺を散策していると、駅ビルの中や住宅街の一角に思いがけず楽しいスポットを発見できます。
元地元民だった私が、横浜市の副都心として発展する上大岡駅周辺でおすすめする散歩スポットと穴場的な場所を紹介していきます。

上大岡の基本情報

まずは、上大岡駅周辺の歴史と特徴を紹介します。事前情報があると、上大岡の散策がより楽しめます。

上大岡の歴史

鎌倉幕府へ通じる旧鎌倉街道と京浜急行が並行して走る上大岡一帯は、古来、山深い農村地帯でした。平安時代末期、1156(保元元)年の保元の乱で敗れた源為朝が隠れ住んだという伝承も伝わっております。為朝が源為義の八男であったことから、「八郎ヶ谷」と呼ばれていたという記録もあります。起伏の激しい土地であったため、戦国時代から江戸時代にかけては宿場町のように栄えることはなく、明治時代を迎えます。

1930(昭和5)年、京浜急行電鉄の前身である湘南電気鉄道により上大岡駅が開業します。その後、太平洋戦争を経て、1950年代に宅地開発がスタート。農村地帯は巨大団地が並ぶ住宅地へと姿を変え、人口が一気に増加します。

もともとは南区の一部であった上大岡一帯は、1961(昭和36)年に行政区再編成により南区から分区。上大岡は新たに誕生した港南区に含まれることになりました。この頃、京浜急行バスの運行が開始され、駅隣接の京急百貨店が開店。高度経済成長期のベッドタウンとして上大岡駅は飛躍的に繁栄していくのです。

1980年代後半、人口が増加する横浜市の副都市の役割を担うため、駅前の再開発プロジェクトが設立され、上大岡の第二成長期が始まります。1990年代にゆめおおおか地区が竣工、2003年にはカミオ、2010年にはミオカが開業し、再開発によって上大岡は横浜市有数の商業都市へと大きな変貌を遂げたのです。

上大岡の特徴

上大岡駅の大きな特徴といえば、まず交通の利便性の高さです。
京浜急行本線と横浜市営地下鉄ブルーラインの2路線が使えます。京浜急行の利便性はとても高く、上大岡駅には、普通、急行、快特、特急とほとんどの列車が停車します。そのため横浜駅まで約8分、品川駅まで乗り換えなしで約30分でアクセスでき、首都圏のベットタウンとしても人気の街なのです。

また、駅ビル1階には、4社のバス会社と高速バスが利用できるバスターミナルが併設され、起伏に富んだ市内を細やかに巡ります。上大岡は、横浜市の中でも坂の多いエリアです。特に東口の上大岡東から磯子区岡村にかけての道は起伏がとても多いのですが、複数のバス路線がその大変さをカバーしてくれます。

上大岡駅のもうひとつの大きな特徴は、駅周辺に広がる大型商業施設の数々。鎌倉街道沿いに複合商業施設、タワーマンションなどが集積している様子は、巨大ターミナル駅並みのにぎわいです。
1990年代からスタートした上大岡駅前の再開発事業は今後も予定されております。2026年には「C北地区」の再開発プロジェクトが着工。2031年に地上39建てのタワーマンションが誕生する予定で、上大岡駅周辺は商業都市としてさらなる飛躍を遂げそうです。

上大岡のおすすめ散歩スポット

ここからは、上大岡駅エリアの住民であった私がおすすめする上大岡駅周辺の散策スポットを紹介いたします。京急百貨店改札口を出て駅の西側、南側を巡ります。最後に東側に回り、上大岡駅から1kmほど東にある久良岐公園まで散策するコースです。

上大岡駅周辺は駅近くからアップダウンの多い街。そのため、散策には歩きやすいフラットな靴と服装でのお出かけがおすすめです。特に駅前から久良岐公園方面にかけては住宅街の中の坂道を徒歩20分ほど歩きますので、晴天の日は帽子や日傘をお忘れなく。それでは、上大岡駅エリアのおすすめ、そして穴場スポットを訪ねていきましょう。

上大岡の散歩スポット（１）京急百貨店

上大岡駅に直結する京急百貨店は、同駅のランドマークともいえる存在です。化粧品やジュエリー、インテリアや書店、衣料品店の老舗ブランドなど従来の百貨店らしい売り場とともに「ロフト」や「GU」など人気店もあり、地域密着型のデパートとして愛されています。高級菓子からお惣菜、多彩な食材を扱う地下1階の食品売り場から10階のレストラン街まで多くの人でにぎわっています。お仕事帰りの買い物や大切な人への贈り物を探すのに、京急百貨店はぴったりな場所なのです。

そんな京急百貨店の穴場スポットは11階と12階にある屋上ひろばです。
11階の「屋上ひろばパティオ」には子ども向けの遊具が並び、親子連れの姿を見かけます。
12階にはフットサルコートがあり、地元のサッカークラブ「横浜F.マリノス」のスクールやフットサル大会などが開催されています。上大岡の街を一望できる屋上では、飲み物を片手にのんびりとした時間を過ごせます。

名称：京急百貨店
住所：神奈川県横浜市港南区上大岡西1-6-1
営業時間：10:00～20:00、10階レストラン街のみ11:00～22:00

上大岡の散歩スポット（２）ウィング上大岡吹き抜けの奈良美智オブジェ

上大岡駅に直結する商業施設「ウィング上大岡」の吹き抜けにあるのが、世界的な現代美術作家である奈良美智さんのオブジェです。かわいらしいフォルムに魅力的で不思議な表情をした4人の子どもたちが、吹き抜けの2階から4階にかけて点在しています。

遊び場に見立てた吹き抜けで子どもたちが星釣りをしたり、ブランコで遊んだり、見ているだけで元気が出てくるようなオブジェです。子どもたちの数は全部で4人。「あんなところに」というような場所に、ほかの2人の子どもたちもいますので、ぜひ現地で探してみてください。

作品名：World is Yours（奈良美智）
住所：神奈川県横浜市港南区上大岡西1-6-1ウィング上大岡センターコート2～4階吹き抜け
営業時間(ウィング上大岡)：10:00～20:00

上大岡の散歩スポット（３）パサージュ上大岡

「パサージュ上大岡」は上大岡駅西口前に延びるアーケードの商店街。再開発が進み大型商業施設が立ち並ぶ上大岡駅周辺の中で、下町の雰囲気を残す希少なスポットです。
100mほどの長さの通りには飲食店やお惣菜屋さんなど、地元の人に長く愛されているお店がたくさん。フリーマーケットなどのイベントが開催されることもあり、いつも多くの人でにぎわっています。パサージュ上大岡の中から特におすすめの2店を紹介いたします。

名称：パサージュ上大岡
住所：神奈川県横浜市港南区上大岡西1
営業時間：営業時間はそれぞれの店舗によって異なります。
　　　　　アーケードの通り抜けは24時間利用可です。惣菜久野屋

「惣菜久野屋」は創業70年の揚げ物専門の老舗のお惣菜屋さんです。おやつによしおかずによしのコロッケやハムカツやトンカツ、イカフライ、アジフライなど、バラエティ豊かな揚げ物はまさに上大岡のソウルフード。男爵コロッケ1個90円、串カツ150円～(2025年9月時点)のリーズナブルなお値段は家計の強い味方です。揚げたてサクサクのコロッケは散策のお供にもおすすめです。

名称：惣菜久野屋
住所：神奈川県横浜市港南区上大岡西1-15-1 camio1階
営業時間：月～金曜日　11:30～19:00
土曜日　11:30～18:00
定休日：日曜日L’ile des Pains（イル・デ・パン）上大岡店

L’ile des Pains（イル・デ・パン）は磯子区に本店があるパン屋さん。スパイシーなカレールーの中にごろっと大きなチキンが入っている「チキンカレーパン」が一押しの商品です。お惣菜パンや果物を使用した菓子パンなど、200～300円程度の手頃な価格帯の商品が並びます(2025年9月現在)。L’ile des Pains（イル・デ・パン）の商品の特徴は、ふんだんに使われた季節の果物や野菜と、パン生地のおいしさです。さくさくのデニッシュや食べ応えのあるハードタイプのパン、ふかふかのクリームパンなど、さまざまな食感のパン生地が楽しめます。こちらも散策のおやつにぴったりです。

名称：L’ile des Pains（イル・デ・パン）上大岡店
住所：神奈川県横浜市港南区上大岡西1-17-30
営業時間：9：30～18：30
定休日：月・火曜日

上大岡の散歩スポット（４）大岡川プロナード

フランス語で散歩道を意味する「プロムナード」。大岡川沿い3.5kmにわたって延びる「大岡川プロムナード」はその名前のとおり散策に適した遊歩道です。

大岡川に沿うように走る市営地下鉄ブルーラインの弘明寺駅から坂東橋駅にかけては桜並木が続き、春には桜の名所として多くの人がこの道を行き交います。

遊歩道から水辺へ下りられるため、暑い夏には涼を取れます。プロムナード沿いには穴場的な飲食店も多いので散策しながらお気に入りの店も見つけられそうです。

上大岡の散歩スポット（５）佛願寺(ぶつがんじ)横浜別院

上大岡西口から徒歩4分、大岡川を越えて街なかのビルの1階にあるのが佛願寺(ぶつがんじ)横浜別院です。佛願寺の見どころは、入り口に入って左手に祀られている7尊の縁結びのお地蔵様。帽子やマフラーでおめかししたお地蔵様のコスチュームは毎月変わります。また、御朱印の台紙のデザインも月ごとにリニューアル。季節感あふれた御朱印はコレクションしても楽しそうです。散歩の始まりに佛願寺で参拝したら、すてきな散策スポットとの出合いがありそうですね。

名称：佛願寺(ぶつがんじ)横浜別院
住所：神奈川県横浜市港南区大久保1-15-36
電話：045-848-3311(8:00～18:00)
開門時間：6:30～17:00(本堂外でのお参り・予約不要)
受付時間：9:00～16:00(本堂でのお参り・要予約)

上大岡の散歩スポット（６）akafoo park(アカフーパーク)

上大岡駅周辺の多彩な商業施設の中でぜひ足を運んでいただきたいのがエンターテインメント施設akafoo park(アカフーパーク)です。上大岡駅前南側に位置する敷地内には本館、北館、南館、東館、西館があり、ボウリングやクレーンゲーム、フィットネスなどのアミューズメントを主軸に、食事や買い物まで楽しめるおもちゃ箱のような施設です。私のおすすめは、本館6階にあるバッティングセンター「アカフースタジアム」と本館1階の「野菜マルシェ」。「アカフースタジアム」は軽く身体を動かしたいときに、「野菜マルシェ」は野菜の卸市場が直接運営しているお店なので、新鮮な野菜がリーズナブルに購入できます。akafoo parkの前身「赤い風船」の創業は1972年。半世紀以上も地元の人々に愛されてきた上大岡のランドマークのひとつなのです。

名称：akafoo park(アカフーパーク)
住所：神奈川県横浜市港南区上大岡西2-1-28
営業時間：各テナントによって異なるため公式サイトをご参照ください

上大岡の散歩スポット（７）和菓子司ますだや

甘いものが好きな方にぜひおすすめしたいのが「和菓子司ますだや」です。創業1916(大正5)年の100年以上の歴史を持つ店舗には豆大福や草餅、きな粉団子、白玉あずきなど、王道の和菓子の品々が並びます。お餅や小豆、きな粉など素材のひとつひとつが丁寧な味わいで、どの和菓子も驚くほどのおいしさです。
豆大福はひとつ120円(2025年9月時点)とお値段もとても手頃です。おみやげにしたり、散歩の途中でひとつだけ買って店先のベンチで老舗の味を堪能することもできます。

名称：和菓子司ますだや
住所：神奈川県横浜市港南区上大岡東2-42-19
営業時間：10：00～17：00
定休日：月・火曜日

上大岡の散歩スポット（８）源為朝之廟社（みなもとのためとものびょうしゃ）

上大岡駅の東口を出て3分、住宅街の小高い丘の途中に小さな社(やしろ)があります。
こちらは平安時代末期の武将である源為朝が祀られている社です。源為朝は、源為義の八男であり、源頼朝・義経兄弟の叔父。1156(保元元)年の「保元の乱」で崇徳上皇に味方し、敗れた為朝が逃れ住んでいたのがこの社のある辺りであったといわれています。
閑静な住宅街の小さな廟社に手を合わせ、とても勇ましい武将であったという為朝に思いを馳せました。中世の日本史に関心が高い方はこの小さな史跡を訪ねてみてください。静謐な空気が流れているスポットです。

名称：源為朝之廟社
住所：神奈川県横浜市港南区上大岡東1-7

上大岡の散歩スポット（９）隠れ家イタリアンTRATTORIA COMPARE(トラットリアコンパーレ)

上大岡で贅沢な食事をリーズナブルに楽しみたいときには、「TRATTORIA COMPARE(トラットリアコンパーレ)」がおすすめです。TRATTORIA COMPAREはイタリア語で「大衆的なレストラン」という意味。三崎漁港の魚介や三浦半島の地野菜など、新鮮な地場の食材を生かした絶品イタリアンが味わえます。
上大岡駅東口から徒歩9分の住宅街の通りに面した隠れ家的なお店のため、予約してからの来店がおすすめです。

名称：TRATTORIA COMPARE(トラットリアコンパーレ)
住所：神奈川県横浜市南区大岡5-17-11 エイポール101
営業時間：ランチ 11:00～15:00
ディナー 17:00～22:00
定休日：火曜日

上大岡の散歩スポット（10）久良岐能舞台

この風格ある門構えは「久良岐能舞台」の正門です。港南区と磯子区にまたがる久良岐公園の一角にある久良岐能舞台は、その名のとおり古典芸能の能の舞台。もともとは1917(大正6)年に日比谷に建てられた舞台が、東京藝術大学邦楽科での使用を経て、1965(昭和40)年この地に移築されたものです。

茶室や和室のある日本家屋の中に、久良岐能舞台があります。大正時代から昭和にかけて数多の人間国宝を育んだ能舞台。鏡板と呼ばれる舞台の正面に描かれた老松の威厳に圧倒されます。
久良岐能舞台は現在も活用されており、荘厳な雰囲気で能楽を鑑賞できます。ほかにコンサートや演劇の舞台としても利用することができ、こちらで結婚式を挙げることも可能です。
100年以上の歴史を持つ久良岐能舞台では、幻想的な古典芸能の世界に触れられます。

名称：久良岐能舞台
住所：神奈川県横浜市磯子区岡村8-21-7
開館時間：9:00～17:00
　　　　　※夜間利用がある場合は9:00～22:00
休館日：12月29日～1月3日(年末年始)

上大岡の散歩スポット（11）久良岐公園

久良岐公園北入り口

自然が大好きな方にぜひ訪れていただきたいスポットがこちらの久良岐公園です。久良岐公園は、港南区と磯子区の区境にかけて広がる約23万m2の公園です。
私が上大岡エリアに住んでいた時には犬の散歩で毎日通っていた公園で、池や梅林、桜林、雑木林など四季折々の豊かな自然を満喫できました。

広大な園内の東西南北に入り口はあり、東入り口には駐車場もありますのでペットを連れて車での来園もおすすめです。久良岐公園大池

久良岐公園の北入り口の近くには、大池と棚田の2ヶ所の水辺があります。この棚田ではホタルの幼虫が生育しており、6月から7月の夜には幻想的なゲンジボタルが舞う光が見られます。
そのため夏の始まりに久良岐公園を訪れる際には、夜間のお出かけがおすすめです。19時から20時過ぎにかけてが最もホタルの活動が活発になる時間帯といわれています。

横浜市電1156号

久良岐公園の中心部近くに、クリーム色と水色のかわいらしい電車が展示されています。こちらは、1904(明治37)年から1972(昭和47)年まで活躍していた横浜市電の実際の車両です。屋外に置かれていたため一時は荒廃していた車両ですが、現在は地域のボランティアの方の手によって現役時代さながらの姿が維持されています。
現存している横浜市電はわずかです。久良岐公園を訪れた際にはノスタルジックな雰囲気を乗せた横浜市電1156号にぜひ会いに行ってください。

名称：久良岐公園
住所：神奈川県横浜市港南区上大岡東3-12-1
利用時間：24時間利用可
休園日：年中無休

今度の休日は、上大岡を散歩してみませんか？

上大岡の散歩スポットはいかがでしたでしょうか。大規模な繁華街が広がる上大岡駅エリアを散策中、穴場的な散歩スポットに出合えると宝物を見つけた時のような気分を味わえます。
いつもより少しアクティブな休日を過ごしたくなったら、上大岡駅での散策をぜひお楽しみください。

この記事では画像に一部PIXTA提供画像を使用しています。