「憎しみ」の塩梅で主人公の見え方が変わってくる?【プロの小説家が教える クリエイターのための語彙力図鑑】
NO.08 憎しみ【にくしみ】[英:Hate]
【意味】
あるものを激しく嫌い、反抗心を抱くこと。愛と対立した感情。
【類語】
怨恨 いまいましい 憎悪 怨念 忌避 敵意 反目 倦厭 敵愾心など
体(フィジカル)の反応
虫唾が走る体が重く感じる眉をひそめる棘のある言葉を浴びせる悪寒がする体が熱くなる睨みを利かせる口角が下がる体に力が入る手を固く握りしめるすごみのある様子を見せる腕を組んでだるそうにするむくれる激しい感情から目が血走る表情が硬いムスッとして押し黙る
心(メンタル)の反応
負の感情でいっぱい相手の不幸を願うもやもやが募る不機嫌いまいましいじめじめした気分不愉快恨めしい怒りが湧き上がる殺気立つ気持ちが波立つ胸くそ悪い復讐心を抱く何をいわれても納得できない心に重しが乗った感じネガティブ思考に陥る
行動原理の一因として受け入れられキャラ造成の一端も担うように
描写が難しい「憎しみ」。なぜなら「憎しみ」を抱く人は心に曇りや濁りのあるネガティブな人物として、嫌われる傾向にあるからです。物語でも然り。「憎しみ」をメラメラ燃やす人物を登場させると、読者が敬遠するタイプになりがちです。
とはいえ話の展開上、主人公が誰かを憎む場合もあるでしょう。その際のポイントは、憎まれる相手側の設定にあります。
「憎しみ」の対象を巨大な権力や富を有する途方もない強者として設定すれば、主人公の「憎しみ」は共感を得やすいものとなります。ファンタジーなら、極悪非道で無双の悪魔みたいな、徹底したヒールとして描けば、読者は主人公の「憎しみ」を応援してくれます。
つまり「憎しみ」が行動原理の一因として受け入れられ、かつキャラ造成の一端も担うわけです。そうなればしめたもの。一方で、「憎しみ」の対象が普通に弱い相手だと、冒頭の通りネガティブな嫌われ者に成り下がります。「憎しみ」は対象の描写に注意しましょう。
「憎しみ」の対象は読者も憎む設定にする
【出典】『プロの小説家が教える クリエイターのための語彙力図鑑』著:秀島迅