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ハッカソン開催や協定締結で大分県内企業のAI導入が加速~企業連携で地域活性化を推進~

ソトコトオンライン

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AIが地域の企業に浸透しつつある。これまで馴染みのなかった先端技術が、自治体や地域団体の取り組みによって身近な技術として受け入れられるようになったのが要因だ。では、どんな取り組みがAI浸透を支えているのか。大分県津久見市の津久見商工会議所が実施したAI導入支援イベントや、イベントを取り巻く企業や団体の動向を追った。

AIで課題解決を目指すイベント開催

 労働者人口の減少、経済・社会の持続性低下、移住や交流の停滞…。こうした地域固有の問題が顕在化しつつある中、これらをITで解決しようする機運が高まりつつあります。地域の自治体はもとより、地域に根付いた団体などが独自の取り組みを打ち出すケースも目立ちます。

 大分県津久見市の津久見商工会議所もそんな団体の1つ。同会議所は先端技術であるAIを活用し、地元企業の課題解決を模索しています。2021年2月5日には、AIによる課題解決を話し合うオンラインイベント「つくみん産業AIハッカソン」を開催。地元企業などから約30名が参加し、自社の課題とAIによる具体的な解決策などが話し合われました。ハッカソンを開催した狙いについて津久見商工会議所会頭の古手川保正氏は、「津久見市は石灰・セメント産業を中心に海運業や水産業など、さまざまな業種の企業が集積している。AIという先端技術を使って各社の課題解決に乗り出すとともに、産学官連携によってアイデアを共有し、一体となって地域課題に取り組む場を用意したかった」と言います。AIを使って地域が発展し、市内外の交流を深めることで優秀な人材が津久見市に集まるといったビジョンを掲げます。さらには津久見市発のAI活用法をモデル化し、県内各地に波及させることも視野に入れます。

オンラインイベント「つくみん産業AIハッカソン」の様子

 では、ハッカソンでは具体的にどんな課題とAIによる解決策が提起されたのか。例えば、生石灰や消石灰の製造販売、石灰石の採掘などの事業を展開する古手川産業の場合、製造する石灰の高い品質要求を満たす原料管理が求められます。原料である石灰石の表面積や粒度分布などを厳密に計測することが、品質不良の低下につながります。

 そこで、こうした原料の品質管理にAIの活用を模索します。具体的にはAIを使って画像を解析する技術を活用します。ベルトコンベアで運ばれる石灰石をカメラで撮影し、画像から石灰石のサイズや個数を把握できるようにします。これにより、焼成炉に投入する石灰石の粒度分布の変動を捉え、そのデータをフィードバックすることで品質不良の抑制や改善の実現を目指します。

 そのほか、運輸業者や水産業者(養殖会社)がIoTとAIを組み合わせた解決策を、観光業者がAIやVR(仮想現実)、AR(拡張現実)を使った解決策などを提案しました。

 なお、同会議所の取り組みは今回のハッカソンだけでは終わりません。「AIを使った取り組みを根付かせるには、ハッカソンを一度開催しただけでは成し得ない。『ロングランハッカソン』と銘打ち、長期的な取り組みとして課題や解決策を共有していきたい。少しずつでも継続して課題解決に取り組むことが、企業の実行力につながる」(古手川氏)と言います。

津久見商工会議所会頭の古手川保正氏

ハッカソン開催を支援した公益財団法人ハイパーネットワーク社会研究所の渡辺律子副所長も、「新型コロナウイルス感染症の拡大を機に、企業のITを活用しようとする機運が高まっている。AIやIoTを普及・促進する当研究所の役割を果たすことで、大分県下のIT利活用を促進させたい」と意気込みます。

ハイパーネットワーク社会研究所副所長の渡辺律子氏

大分県もGPUによる課題解決を後押し

 一方、大分県もITを活用した課題解決に乗り出しています。「DX OITA」というビジョンを打ち出し、地域課題と新型コロナウイルス感染症における問題をITで解決する取り組みを進めています。ITを使って新規事業の創出を支援するプログラムや、ITの専門家による無料相談窓口を用意するなどし、大分県内の企業の支援に乗り出しています。

 2021年1月にはハイパーネットワーク社会研究所やNTTPCコミュニケーションズと、GPUの活用促進を目的とした三者協定を締結。ディープラーニングに必要な高速演算処理を支える技術としてGPUを活用し、県下企業が抱える課題をAIで解決できる体制を整備しようとしています。

 今回の締結についてNTTPCコミュニケーションズ 営業本部第4営業部の髙島綜太氏は、「大分県は2019年、AIの利活用を推進する『おおいたAIテクノロジーセンター』を設立するなど、地場産業へのAI導入に積極的な姿勢を示している。一方、GPUを使ってシステムなどを開発する環境整備を進められずにいた」と経緯を説明。続けて「当社は、GPUを使って日本を良くしたい、そんな思いを常々持っていた。GPUプラットフォームを用意する当社の『Innovation LAB』を提供し、大分県の取り組みを支援したいと考えた」と理由を話します。

NTTPCコミュニケーションズ 営業本部第4営業部の髙島綜太氏

 今回の締結、さらには「おおいたAIテクノロジーセンター」設立を主導したハイパーネットワーク社会研究所の石松博文氏は、「県下企業の多くが、AIやIoTといった先端技術を活用しなければという危機感を持っている。しかし、具体的な次の一手を打てないのが現状だ。こうした状況を変えたかった。おおいたAIテクノロジーセンターに参加する86社、さらにはGPUの知見があるNTTPCコミュニケーションズ、Innovation LABを利用するAI企業、そして大分県が一体となって取り組めばシナジー効果を見込める。さまざまな視点の意見やノウハウを結集し、強固な支援体制で企業の課題を解消したい」と言います。

ハイパーネットワーク社会研究所の石松博文氏

ITが地域問題解決に寄与

 津久見商工会議所や大分県のように、企業のデジタル化を支援する動きが活発になれば、企業のIT利活用は加速し、地域経済の発展、さらには企業を支援するIT企業が県内に拠点を構える未来も描けます。ハッカソンを開催した古手川氏は、「地元企業がAIを使って課題解決に取り組んでいるという『声』を発信することが大切だ。それに気づいたIT企業が支援に乗り出せば、地元企業とIT企業の関係を深化させられる。こうした好循環が県内、ひいては津久見市へのIT企業誘致のきっかけになるに違いない」と言います。

 これに対し、IT企業であるNTTPCコミュニケーションズの高島氏は、「地元企業がIT企業との交流を求めているように、当社も地元企業と積極的に交流したいという思いがある。今回のハッカソンや協定締結は、大分県下の企業との関係をつくるきっかけになる。当社として何ができるのかを考え、手を取り合って課題解決に取り組んでいきたい」と言います。まずはAIをどう使うのかの活用シーンをイメージしてもらい、さまざまな業種や課題を解決する事例を積み上げていく考えです。

 一方、若い労働者が県外に就職してしまうという問題について古手川氏は、「大分県内の新卒大学生が県内の企業などに就職する割合は30%程度。魅力的な『受け皿』となる企業が少ないのが一因だ」と状況を説明。しかし、「今回の新型コロナウイルス感染症を機に、リモートワークを導入するなどして働き方を見直す企業が増えている。RPAのような自動化ツールに目を向け、業務や事業そのものを変えようとする企業も散見される。ITやAI使ってどんなアイデアを創出できるか。こうした企業の新たな取り組みは、若い世代にとって魅力的なはず。県外に行かずとも自分のアイデアを具現化する仕事ができるということを知ってほしい」(古手川氏)と続けます。

 AIという先端技術が持つ可能性は、分析や予測といった用途に限らない。地域の未来を創造する技術。それがAIの本当の価値なのかもしれません。

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